2022年12月18日

ベイウォーク

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ⒸUzo Muzo Production

監督・撮影・編集:粂田剛 (『なれのはて』)
音楽:高岡大祐
調音:宮崎花菜
調音監修:浦田和治

『なれのはて』で描けなかったマニラの日本人二人の末路

日本から海外に飛び出した人たちの“その後”に興味を持ち、2012 年から 2019 年の間、カメラを持って 20 回ほどフィリピンを訪れ、多くの日本人を追った粂田剛監督。前作『なれのはて』で、4人の男性がマニラで困窮の中で人生の終焉を迎えようとする姿を描いた。継続的に取材させてくれたのは7人。前作で登場させることができなかった方たちに申し訳ない思いを抱えていた粂田剛監督が放つ第二弾。

「世界三大夕日の名所」の一つと言われるマニラ。そんなマニラ市民の憩いの場が、海沿いに整備された遊歩道ベイウォーク。ここは、夜になるとホームレスたちの寝場所になる。その中にひとりの日本人がいた。赤塚崇(タカシ)さん 58 歳。裏稼業で幅を利かせた生活をしていたもののフィリピンで騙されて一文無しに。日中は露店のタバコ売りの手伝い、夜はベイウォークで路上生活をしている。フィリピン人に助けられてばかりの毎日で、フィリピンの人に足を向けて寝られないという。
一方、ベイウォークにほど近い高層アパートメントに入居した関谷正美さん 62 歳。日本で年金生活を送るよりも、物価が安く、「呑む・打つ・買う」が歩いてできるマニラに移住を決めた。死ぬまでここで暮らそうと、ベランダから海を望む部屋に、お金をかけてリフォームもした。だが、フィリピン人をなかなか信用できない彼は、何をやってもうまくいかない。そのうちに、部屋に閉じこもってしまうようになる・・・

「ベッドでゆっくり寝たい」とつぶやくタカシさん。ベイオークのコンクリの上に薄いアルミシートを敷いて寝るのは、老体にはかなりこたえそうです。そんなタカシさんの隣で寝るフィリピンの島から出てきたドミニクさん。まだ40歳前位。土地を売ったお金で事業を始めるつもりだったのに、マニラに来て2日間で約200万円をカジノで失ってしまったのです。堅実に使えばいいのに、こうした一獲千金を夢見る男性はどこの国にもいるのですねぇ。島に帰る交通費を無心され、4000円を渡す粂田監督。
一方、年金生活で一応お金はある関谷さんですが、「日本にいた方がよかった気がする。フィリピンはストレスがたまる」と、マニラに来てしまったことを後悔しています。何度か旅行で来たことがあって、ここならと決めたようですが、旅で数日過ごすのと、腰を据えて暮らすのとでは違うことを、もっと熟考するべきだったでしょう。
さて、私はどこで人生の最後を過ごそうかしら・・・ 映画を観終わって、そんなことを考えてしまいました。(咲)


前作『なれのはて』を観た時、「ああ、こうして異国で生涯を送った人たちがいるのだなあ」と思ったけど、粂田剛監督は、もっとたくさんの人を取材していた。一時期、日本での年金生活はお金がかかるからアジアで晩年をというのがブームとまでいかなくても、そういう生き方もあるという風に言われたこともあったけど、やはり、日本から離れて、あるいは逃れてフィリピンで暮らしたとしても、そううまくはいかないものだなあと思った。もっとも最初の映画のタイトルが『なれのはて』となっているように、流れ流れてフィリピンにたどり着いた人たちかもしれないけど。それにしても男の人ばかり。私自身も、今住んでいるアパートが老朽化し、引っ越ししなくてはならなくなり、今、引っ越し先を探しているのだけど、70歳以上での住むところ探しはなかなか厳しい。私自身のなれのはてはどうなるだろうという思いで観ていた。他人事ではない(暁)。

2022 年/日本/DCP/カラー/90分
製作:有象無象プロダクション
配給・宣伝:ブライトホース・フィルム
公式サイト https://atbaywalk.com/
★2022年12 月24 日(土)新宿 K’s cinema ほかにて全国順次公開
posted by sakiko at 00:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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