2022年12月17日~ポレポレ東中野ほか全国ロードショー 他の上映劇場
映画への検閲、規制が厳しくなり、言論と表現の自由が一段と狭まっている香港での上映禁止作品『少年たちの時代革命』(12/10)『理大囲城』(12/17)が続けて日本公開!!
監督:香港ドキュメンタリー映画工作者
2019年6月からはじまった香港民主化デモだが、香港国家安全維持法施行により封じ込められてしまった。映画への検閲、規制も厳しくなり、香港の言論と表現の自由が一段と狭まり、香港で上映禁止となったが海外映画祭で上映され、大きな話題となっている。
2021年カンヌ国際映画祭、東京フィルメックス2021にてサプライズ上映された『時代革命』(監督:キウィ・チョウ)、山形国際ドキュメンタリー映画祭2021で最高賞となるロバート&フランシス・フラハティ賞を受賞した『理大囲城』(監督:香港ドキュメンタリー映画工作者)、2022年ロッテルダム国際映画祭にて『Blue Island 憂鬱之島』(監督:チャン・ジーウン監督)が上映されるなど、現在の香港を描いた映画が国際的に注目を集めた。
そうした中、フィクション映画では、『少年たちの時代革命』が台湾アカデミー賞を席捲したのを皮切りに、台湾で劇場公開され、同年6月に日本でも2日限定の上映会が催されたのをきっかけに、12月10日からポレポレ東中野で日本公開されている。そして、ポレポレ東中野で連続して12月17日からは、この『理大囲城』が公開される。
2019年の香港民主化デモの中でもスキャンダラスな事件と言われる香港理工大学包囲事件を記録
アジア屈指の名門校・香港理工大学が警察に封鎖され、要塞と化した緊迫の13日間。至近距離のカメラが捉えた、衝撃の籠城戦の記録! 圧倒的な武力を持つ警察に包囲された構内には、中高生を含むデモ参加者と学生が取り残され、逃亡犯条例改正反対デモで最多となる1377名の逮捕者をだした。
警察は兵糧攻めを決行、支援者が救援物資を運ぶことも、記者や救護班が入ることもできなかった。その中で、匿名の監督「香港ドキュメンタリー映画工作者」たちは、デモ参加者として大学構内でカメラをまわし続けた。
武器を持ち戦い続けるか、命がけで脱出するか…
戦場と化した大学構内で究極の選択を迫られていく学生たち!
キャンパスに留まっても圧倒的な武力を持つ警察に潰される恐怖、脱出しても逮捕されるかもしれない恐怖は、デモ参加者の心をかき乱す。四面楚歌のキャンパスの中の人間模様を映し出す。圧倒的な武力で封じ込めようとする警察を前になすすべもないデモ隊の姿は、今、香港が置かれている状況を映し出す。
監督は全員匿名、出演者の顔はモザイク処理し、閉じ込められ追い詰められた学生たちの姿を映し出し、表情は見えなくても、心情は伝わってくる。警棒でたたかれ、催涙弾や水を浴び、粗暴な警官隊に力ずくでねじ伏せられる若者たちの憔悴や不安。どういう方法で突破するか、救援隊を待つのか。退路を絶たれた学生たちが日ごとに憔悴してゆく姿を克明に捉えている。衝撃の籠城戦の記録!
2017年に山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』(2016年、陳梓桓チャン・ジーウン監督)から数年しかたっていないし、2015年製作の『十年』から10年たたずに香港の自治が踏みにじられてしまった。香港はどうなっていくのだろう。監督たちは「これからも撮影を継続しアクションを起こし続ける」と語っているが、その言葉は心強いけど、香港ではデモや、民主化を求める行動自体が制限され、その機会自体がなくなってしまうのではないかと心配。この作品は山形国際ドキュメンタリー映画祭2021でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)を受賞したが、映画祭の東琢磨審査員長は「最も大事なことは、世界が彼らのことから目を離さずにいることだ」と述べている。山形の受賞記事はこちら。
このドキュメンタリーを観て、1969年の「東大安田講堂攻防戦」を思いだした。1960年代後半、日本ではベトナム反戦・反安保闘争、学園民主化などを求め、大学紛争(大学闘争)が起こった。その中で1969年、東大全共闘や新左翼の学生たちが安田講堂にたてこもった。その時、大学から依頼を受けた警視庁が1969年(昭和44年)1月18日~1月19日に封鎖解除を行った。私は当時高校2年で、飯田橋にある病院に入院していて、窓から東大方向を見ると、報道関係?のヘリコプターが飛び交い、学生たちと警官たちの攻防の喚声や怒号が聞こえ、かなりの緊張感でその状況を見ながら、TVのニュースから流れる報道とのニュアンスの違いを感じていた。この学生たちが、安田講堂を何日くらい占拠していたかは忘れてしまったが、相当長い間占拠していた記憶はある。一番多い時期、東京都内だけで55の大学でバリケード封鎖が行われていたという。その頂点として、この「東大安田講堂攻防戦」があったと思う。今、思えばきっと、この安田講堂にたてこもった学生たちも、この理工大の学生たちのような葛藤もあっただろう。当時はそのようなことは考えたこともなかったけど、このドキュメンタリーを観て、そのことに思いを馳せた。
私は劉徳華(アンディ・ラウ)の紅磡(ホンハム)のコロシアム(香港体育館)でのコンサートに行ったことがあり、その時、理工大横の歩道橋を通って行ったので、理工大を見たことがある。その大学で起こったことなので観ていてとても心が重かった。私が通っていた歩道橋が何度も映し出され、香港コロシアムも映像の中に出てきた。現在、理工大はどのような状況になっているのかとても気になる(暁)。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2021の折にオンラインで観て、圧倒された作品。最高賞であるロバート&フランシス・フラハティ賞受賞も納得でした。警察に封鎖され、中高校生も含む若い人たちが、決死の思いで飛び降りたり、下水道を通ったりして、なんとか逃げようとするのですが、そんな彼らさえ、警察が捕まえようとすることに胸が痛みました。
封鎖された理工大にサミュエル・ホイやイーソン・チャンの歌が流れてきたのですが、警察が流したらしく、え?どういうつもり?と思いました。
理工大といえば、(暁)さんと同じく、アンディ・ラウやレスリー・チャンのコンサートが紅館(香港コロシアム)で開かれたときには、必ず目にしていたところ。とはいえ、大学の構内は外からは見えませんでした。2013年のアジアフォーカス福岡国際映画祭で上映され、福岡観客賞を受賞した香港映画『狂舞派』は理工大のキャンパスで撮影した作品で、中はこんな風になっているのかと知ることができたのでした。ヒップホップダンスが大好きなのに足を怪我して踊れなくなった豆腐屋の娘ファーを、理工大の太極拳部の男子が励ますという物語(だったと思います)。 『狂舞派』で観た理工大は、勉学に励みキャンパスライフを楽しむ若者たちが大勢集う場でした。それが本来の大学の姿のはず。大勢の警官に取り囲まれた大学はあまりに悲しい姿でした。 それでも、あの頃には、「声」をあげることができた香港の人たち・・・。今は押し黙っているしかないのは、さらに悲しい。(咲)
『理大囲城』公式サイト
配給:Cinema Drifters・大福
宣伝:大福
2021/香港/カラー/DCP/ステレオ/88分
『理大囲城』
アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭最優秀編集賞
香港映画評論学会最優秀映画賞
台湾国際ドキュメンタリー映画祭オープニング作品
山形国際ドキュメンタリー映画祭大賞
*『少年たちの時代革命』の作品紹介はこちら
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494357506.html
*参照 シネマジャーナル これまでの香港民主化運動関係の記事
●『時代革命』 キウィ・チョウ監督インタビュー 2022年7月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/490683730.html
●香港返還25年 大雨だった1997年7月1日を思う
http://cinemajournal.seesaa.net/article/489403875.html
特別記事
●『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017にて 2017年10月11日
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html
●『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(日本公開時)2018年07月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html
●『革命まで』2015年 香港
郭達俊(クォック・タッチュン)監督&江瓊珠(コン・キンチュー)監督インタビュー(山形国際ドキュメンタリー映画祭2015にて)
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html
2022年12月11日
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