2022年12月03日

MEN 同じ顔の男たち(原題:MEN)

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監督・脚本:アレックス・ガーランド
撮影:ロブ・ハーディ
音楽:ベン・サリスベリー ジェフ・バロウ
出演:ジェシー・バックリー(ハーパー)、ロリー・キニア(ジェフリー)、パーパ・エッシードゥ(ジェームズ)、ゲイル・ランキン(ライリー)

ハーパーはかつては愛し合った夫が、キレやすく暴力的になったことに恐怖を抱いて別れ話を切り出す。変わるからと懇願するのに耳を貸さず、「別れるなら死ぬ」というのも、ただの脅しと思っていた。ところが死にゆく夫を見てしまい、罪の意識に苛まれる。心の傷をいやすために田舎のカントリーハウスに滞在することにした。
オーナーのジェフリーはハーパーを歓迎し、豊かな自然の中の豪華なハウスにハーパーも重荷を下ろす感覚になる。休みを満喫しようと街や森を散策するが、誰かに後をつけられている気がしてならない。忘れたい夫の死もフラッシュバックし、不穏な空気は次第にハーパーを包み込んでくる。

『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』を送り出した制作会社A24の新作。アレックス・ガーランド監督は『エクス・マキナ』で第88回アカデミー賞®で脚本賞にノミネート、視覚効果賞を受賞しています。こちらは同じくスリラーではあるものの、CGを駆使した未来都市と真逆のイギリスの緑豊かな田舎が舞台です。
ポスターのリンゴの木は、ハーパーが最初にカントリーハウスに足を踏み入れたときに、手を伸ばしてもぎ取って齧ったもの。アダムとイブの禁断の木の実や、白雪姫の毒リンゴが浮かびます。想像通り何かが始まるんですね、これが。
慣れない家に一人というのは安らげない気がして、一人旅が好きな私でも御免こうむりたいです。ハーパーにはなんでも打ち明けられるライリーという親友がいるので、彼女が一緒だったら心強いのに。
会う人会う人が、オーナーのジェフリーと同じ顔というのも奇妙というより、怖い。ハーパーを追い詰めていったのは妄想なのか、夫の恨みつらみが招いたものなのか、はたまた事実なのか。
正視できないものも登場しますが、撮影は美しく、ここぞというときに流れる音楽がまた多様。(白)


自宅で夫が死ぬ瞬間を見てしまったハーパーは車で4時間かかる田舎のカントリーハウスに逃れるのですが、(白)さんも書いている通り、こんな広いところにたった一人では、かえって怖くて落ち着けません。逃避したつもりが、周りには変な男ばかり現れるし、夫のことがいろいろ蘇ってきます。イングランドの田舎の美しい風景と裏腹に、凄いものをみてしまったという物語でした。

イギリスには行ったことがないのですが、いつかコッツウォルズのマナーハウスに泊まってみたいと思っていました。本作の撮影地は、Gloucestershire(イングランド南西部にある行政区域)とエンドロールにありました。映画の中で、警察に場所を知らせるのに「cotson」村と、ハーパーが叫んでいるのですが、架空の名前。Withingtonというところで2021年4月から5月にかけて,撮影されたらしいです。
かつての荘園の邸宅がマナーハウスだと思っていたのですが、今回、「カントリーハウス」と言っているので、どう違うの?と検索してみました。
貴族が自分たちの領地である「荘園」の中に作らせていた城が、マナーハウス。その後、15世紀頃から貴族がロンドンに別邸(タウンハウス)を建て、荘園の本邸(マナーハウス)がカントリーハウスと呼ばれるようになったそうです。そして、貴族より持っている土地が少ない「ジェントリー」や「スクワイアー」階級の邸宅が、マナーハウスと称されるようになったのだとか。
また、ハーパーの自宅はロンドンのテムズ川に面しているのですが、見えているのはロンドン橋だと思ったら、「タワーブリッジ」(テムズ川に架かる跳開橋)でした。よく名前を間違えられると書いてありました。
怖い場面もありますが、英国の美しい風景を楽しみたい方はぜひご覧ください。(咲)




2022年/イギリス/カラー/シネスコ/100分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://happinet-phantom.com/men/
★2022年12月9日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

posted by shiraishi at 13:03| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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