2022年11月26日

あのこと  原題:L'evenement  英題:Happening

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© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – WILD BUNCH – SRAB FILM

監督:オードレイ・ディヴァン
原作:アニー・エルノー「事件」
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ(『ヴィオレッタ』)、サンドリーヌ・ボネール(『仕立て屋の恋』)

1960年代のフランス。アンヌは大学で文学を学び、作家になるのを夢見ている。教授からも詩の解釈が素晴らしいと目をかけてもらっている。そんなある日、なかなか生理が来ないので、医者に行くと妊娠だと告げられる。学位を取るための試験を目前にして、今は産めない。医師からは中絶は違法だから加担できないといわれる。なんとかしなければと、アンヌは解決策を模索するが、ついに12週目を迎える・・・

中絶が違法な時代。医師は中絶に加担したくないどころか、「医師の大半は女性に選択肢はないと考えている。妊娠を受け入れて」と告げるのです。必ずしも快楽の結果だけでない妊娠。いえ、快楽の結果だったとしても、女性に選択肢がないというのは理不尽です。
自分でなんとか処置しようとする姿が痛々しいです。
処置できたとしても、その後、医師に診てもらって診断書に「流産」と書かれれば問題にならないけれど、「中絶」と書かれれば刑務所行きの時代でした。
中絶が違法な中で、少女が奔走する話で思い出すのは、『4ヶ月、3週と2日』『17歳の瞳に映る世界』です。
予期せぬ妊娠で辛い思いをするのは女性だけ。男性は妊娠させないことに、もっと気を使うよう、これらの映画を心して観てほしいと願います。

なお、フランスで中絶が合法化されたのは、1975年。
1974年、ジスカール・デスタン大統領時代に保健相になったユダヤ系の女性政治家、シモーヌ・ヴェイユの奔走によって合法化したもの。カトリック信者の多いフランスで大反対を受けながらの合法化。日本では、1948年に合法化されています。

原作は、2022年ノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの短編「事件」。
エルノー自身が体験した壮絶な違法中絶をもとに描いた小説を映画化するにあたって、ディヴァン監督は、エルノーと1日一緒に過ごし詳しく話を聞いたとのこと。80歳を超えたエルノーが、まさに中絶を行う瞬間の話を始めた時、目に涙を浮かべていて、今なお癒えていない悲しみを感じたディヴァン監督。「政治的な背景をより正確に理解した上で、女性たちが決意の瞬間に抱いた恐怖に触れることができました」と振り返っています。
本作の原作「事件」は、「嫉妬」(早川書房)に併録されています。
また、アニー・エルノーが自身の年下男性との愛と性の体験を元に綴った原作を映画化した『シンプルな情熱』も記憶に新しいです。
『あのこと』でも、性への欲望を自然なものとして描いていることに注目いただければと思います。(咲)


☆フランス映画祭2022 横浜 オープニングセレモニーに登壇しました!
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オードレイ・ディヴァン 監督

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アナマリア・ヴァルトロメイさん
撮影:景山咲子


第78回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞

2021年/フランス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/100分
字幕:丸山垂穂
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/anokoto/
★2022年12月2日(金)Bunkamuraル・シネマ他 全国順次ロードショー.

posted by sakiko at 20:18| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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