2022年11月26日

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ(原題:The Electrical Life of Louis Wain)

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監督・脚本:ウィル・シャープ
原案・脚本:サイモン・スティーブンソン
撮影:エリック・アレクサンダー・ウィルソン
ナレーション:オリビア・コールマン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ(ルイス・ウェイン)、クレア・フォイ(エミリー・ウェイン)、アンドレア・ライズボロー(キャロライン・ウェイン)、トビー・ジョーンズ(ウィリアム・イングラム卿)

19世紀のロンドン。上流階級の家に長男として生まれたルイス・ウェインは20歳のときに父を亡くし、母と5人の妹たちを彼一人が養うことになった。美術学校を出た後、教師の職につくが薄給で食べて行けずフリーの画家となる。妹の家庭教師だったエミリーと恋に落ち、年の差や階級の違いのため周囲に猛反対されるも結婚にこぎつけた。ようやく穏やかな暮らしを手に入れた二人だったが、エミリーに末期がんが見つかる。エミリーは迷いネコのピーターを可愛がり、ルイスは余命少ない妻のためにピーターの絵を描き続けた。ルイスの猫の絵は評判を呼び、多くの注文が舞い込む。

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世の猫好きな方々は作者を知らなくても、ルイス・ウェインの絵をきっとどこかで目にしたことがあるはずです。絵はがきは800種類もあり、かの夏目漱石もそれを手に入れていたのでは?とか。今回映画を見て初めてこういう人が描いていたんだ!と大発見をした気分でした。
ベネディクト・カンバーバッチは、気弱で経済観念に乏しいのに一家を背負わねばならなかった20代から、最盛期、統合失調症を患って精神病院に入院した晩年までを演じています。必死に働き、あれほど売れながら、絵の権利や契約の知識がなく晩年は貧困にあえいだルイスが気の毒です。上流階級の女性が仕事を持つことなどなかった時代、結婚が重要視されていました。そんな時代にルイスの妹たちは一人が精神を病んだことから、ほかの姉妹に結婚話が来なかったというのもルイスの重荷であったでしょう。
彼の人生の中で一番幸せだったに違いない愛妻エミリーとの3年あまりの生活を中心に、生き生きと描かれた猫の絵もふんだんに登場します。当時猫は犬のようにはペットとして飼われず、悪い印象だったというのが意外です。あんなに可愛いのに。
画家の役では筆持つ手元だけはプロの人に代わることもあるようですが、カンバーバッチ氏自らの筆さばきです。絵やイラスト好きな方、猫好きさん必見の作品。ルイスとエミリーの暮らしの背景となる家のたたずまいや外景が、泰西名画のように美しいです。ウィル・シャープ監督は、俳優・監督として注目されている日系英国人。かつて監督作で共演したオリビア・コールマンが落ち着いた声音でナレーションを務めています。(白)


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ルイス・ウェイン・コレクション展が12月21日から。こちら

犬派か猫派か?と聞かれると、犬は飼ったことはあるけれど、猫は飼ったことのない私。友人には猫好きが多くて、それこそ猫可愛がりしています。ルイス・ウェインの生きたヴィクトリア朝の英国では、猫はあくまで鼠退治要員であって、ペットとして飼うものではなかったそうです。そも、西洋では、猫は魔女や悪魔の使いという位置づけだったのです。ルイス・ウェインは、妻の可愛がった迷い猫にピーターという名前も付けたのですが、友人から「まさか猫をペットにする気か?」と言われています。
1907年10月に、ルイス・ウェインはアメリカの新聞王ハーストから、「ニューヨーク・アメリカン」紙に猫の漫画を描いてくれと依頼を受けて渡米します。「日米協定で日本人は道を自由に歩けるようになったのに、猫は自由に道を歩けない」という言葉が出てきました。ルイスは、「猫の為にニューヨークに行く!」という意気込みだったようです。1910年に母が病気との報を受けて帰国しますが、死に目に会えませんでした。3年間アメリカで暮らしましたが、財産は作れなかったとのこと。帰国後、次々に家族が不幸に見舞われ、ルイス本人も精神に異常を来たしていきます。それでも、生涯、好きなだけ猫の絵を描いて過ごしたと知り、少しほっとさせられました。(咲)


2021年/イギリス/カラー/スタンダード/111分
配給:キノフィルムズ
https://louis-wain.jp/
(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
★2022年12月1日(木)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:40| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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