2022年11月13日

マスター 先生が来る!  原題:Master

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©️B4U Motion Pictures, ©️Seven Screen Studio, ©️X.B. Film Creators

監督:ローケーシュ・カナガラージ(『囚人ディリ』)
音楽:アニルド・ラヴィチャンダル
出演:ヴィジャイ、ヴィジャイ・セードゥパティ、マーラヴィカ・モーハナン、アルジュン・ダース/ ナーサル(特別出演)

JD(ヴィジャイ)は、タミルナードゥ州の州都チェンナイにある名門大学で心理学(人格形成学)を教える名物教授。アルコール依存症気味で大学の運営本部や教授会からは何かと批判されているが、ユニークな教授法や自由な発想で学生たちには大人気。彼が実施を強く主張した学生会長選挙で暴動が起きてしまい、責任をとって休職し、700キロ離れた地方の少年院に90日の期間限定で赴く。
その少年院は、ギャングのバワーニ(ヴィジャイ・セードゥパティ)の影の支配のもと、少年たちが薬物漬けにされて犯罪行為を無理強いされていた。明日少年院を出所というときに殺人の罪を着せられそうになった2人の兄弟が、新任教師のJDに少年院の実態を訴え助けを求めようとするが、バワーニに知られて殺されてしまう。これにショックを受けたJDは、アルコールを断ち、バワーニの支配を終わらせ少年たちを更生させようと立ち上がる・・・

本作は、“大将”という愛称で親しまれ、インド:タミル語映画界の寵児となったヴィジャイの2年ぶり、64作目となるアクション大作。
超人的なカリスマ性と身体能力を誇り、満を持して登場すると無数の敵をなぎ倒す。キレキレのダンスや歌唱を劇中に何度もこなし、ヒロインも周りの人々も夢中にさせる漢っぷりを振りまく伊達男の主人公。様式美ともいえるお約束で観客を熱狂させてきたインドの娯楽アクション映画界。その中で、『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ロボット』等で日本でも知られるラジニカーントの次を担うスーパースターとして、いま最も頂点を極めているのが、本作の主演ヴィジャイ。いきなり顔を出さず、まず足元やシルエットが映され、散々に観客を焦らしての初登場シーン。決め台詞を口にして悠然と歩み去るシーンで多用される仰角のスローモーション。本作はそんなお約束をしっかり押さえながらも、完全無欠のヒーローに対抗しうる強烈な悪役、バワーニに、スター映画とは距離を置く演技派として“タミル民の宝”の愛称で人気を集めるヴィジャイ・セードゥパティを配した対極的なWスターキャストとなっている。


本作では、二人のヴィジャイが互角の主役。オープニング、「大将(Thalapathy)ヴィジャイ」に続いて、「タミル民の宝(Makkal Selvan)ヴィジャイ・セードゥパティ」の名前が掲げられます。オープニング・クレジットで主役と悪役がこれだけ対等に扱われるのは、タミル語映画では実は珍しいことなのだそうです。ヒーローが最終的に勝利するのは大衆映画の決まり事ですが、その枠組みの中で悪役を最大限に力強く造形することに心を砕いたと、ローケーシュ監督は語っています。
その証拠に冒頭で語られるのは、バワーニの物語。17歳の時に両親を3人組のギャングに殺された上に、少年院に送られ、そこで散々辛酸を舐めさせられます。自分を痛めつけた者たちを見返そうと、トラック運送業という表向きの商売の裏で、密造酒の流通や麻薬取り引き、政治家の資金洗浄などを行い、ギャングの元締めにのし上がったのです。純真な少年が、敵や裏切り者を容赦なく殺す冷酷な男になった背景がしっかり描かれています。

JDが着任した少年院は、少年たちが皆、悪事に手を染めさせられていて、管理人たちもグル。指導すべき教師が居つかないのです。
意気揚々と着任し、「♪人生は短い、幸せでいよう♪」「♪教育は必要、やる気が必要♪」と歌いながら踊って鼓舞するのですが、勉強などする気のない少年たち。部屋も荒れ放題です。
JDを見込んで、少年院の教師として送り込むよう仕組んだのは、大学の新任講師の女性チャールー(マーラヴィカ・モーハナン)でした。チャールーは以前、NGOのメンバーとして少年院を調査し実態を聞かされていて、JDが改善してくれることを期待していたのでした。着任初日、いつものように酒浸りで、殺人の罪を着せられそうになっている兄弟の訴えが届かなかったのです。

少年院では、18歳を過ぎても出所しないでいる者たちが、バワーニの指令で動いているのですが、少年たちはバワーニの存在を知りません。少年院を仕切っているのは、ダースという青年。演じているアルジュン・ダースは、タミル映画の俳優には珍しく細身。顔立ちはヴィジャイたちと同様に濃いのですが、眼光鋭く、声が低音なのも魅力で、注目株ではないでしょうか。
JDを見込んだ女性教師チャールー役のマーラヴィカ・モーハナンも、知的でチャーミング。男たちの激しい抗争が続く中、清涼剤になっています。(咲)


★インディアンムービーウィーク2021 パート2で上映された人気作品

2021年/インド/タミル語/179分/ PG12(暴力シーンあり)
字幕:大西美保/監修:小尾 淳/協力:安宅直子
配給:SPACEBOX
宣伝:シネブリッジ
公式サイト: https://spaceboxjapan.jp/master
★2022年11月18日(金)新宿ピカデリーほか全国公開



posted by sakiko at 14:42| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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