2022年10月05日
愛する人に伝える言葉 原題:De son vivant
監督・脚本:エマニュエル・ベルコ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ブノワ・マジメル、セシル・ドゥ・フランス、ガブリエル・サラ
40代の自称「無名の俳優」のバンジャマン。膵臓がんステージ4で切除不能と宣告され、一縷の望みをかけて、母クリスタルとともに、名医の誉れ高いドクター・エデを訪ねる。エデは率直に既に治せない状況だと告げる。ショックのあまり自暴自棄になるバンジャマンにエデは、「命が絶える時までの道のりが大事」と、生活の質を維持するために化学療法を提案し、「一緒に進みましょう」と励ます。
一方、母クリスタルは、病に倒れた息子を見ながら、かつて息子が若くして恋人アンナとの間に子供を作ったとき、息子の将来を思い認知させず、結果、二人が別れることになったことを思い出して悔いる。ドクター・エデにその思いを明かし、エデの勧めで、クリスタルはオーストラリアにいるアンナに連絡する・・・
誰しもに訪れる死。それでも、余命宣告を受け、親より先に逝くことを知った人の思い、さらに我が子が自分より先に逝ってしまうことを覚悟しなければいけない親の思いは計り知れません。
ドクター・エデの患者や患者の肉親に寄り添った治療や言葉に、病に罹ったら、こんなお医者さまに出会いたいと思いました。
実は、このドクター・エデを演じているガブリエル・サラは、本物のがん専門医。
『太陽のめざめ』(2015年)のニューヨークでの上映とエマニュエル・ベルコ監督のトークが終わった後、「映画とアフタートークから感じましたが、あなたは私の仕事に興味を持たれるはずだ」と監督に声をかけてきたのが、ガブリエル・サラ医師。その後、サラ医師の病院を訪れ、仕事ぶりを目の当たりにしたことが、この映画に繋がりました。しかも、彼をモデルにしたドクター・エデは、本人にしか演じられないと依頼。
映画のなかの彼の患者に対する姿勢や、言葉は、彼自身の哲学から生み出されているところが大きいとのこと。家族が患者本人の旅立ちを受け入れることも平穏に旅立てる条件。
また、患者たちのためのタンゴの公演会や音楽によるセラピー、看護師たちの精神的負担を和らげるような明るいミーティング風景も、実際に彼が病院で企画していること。一部の例外を除いて、病院のスタッフも本物の方たちに演じてもらったそうです。
セシル・ドゥ・フランスも、静かに、かつ、明るく患者を見守る看護師を体現していて素敵です。
さて、自分が余命宣告されたら覚悟はできるだろうか、旅立つ準備はちゃんとできるだろうか・・・と考えさせられました。(咲)
(白)
2021年/フランス/フランス語・英語/122分/カラー/スコープサイズ/5.1chデジタル
字幕翻訳:手束紀子
配給:ハーク/TMC/SDP
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:https://hark3.com/aisuruhito/
★2022年10月7日(金) 全国ロードショー
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