2022年10月02日

『七人樂隊』(原題:七人樂隊/英題:Septet:The Story of Hong Kong)

10月7日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
劇場情報
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香港ニューウェーブを担った監督7人が、50年代から未来まで、香港の各時代の“美しい瞬間”を全編35mmフィルムで撮った7つの物語

監督:洪金寶(サモ・ハン)/許鞍華(アン・ホイ)/譚家明(パトリック・タム)/袁和平(ユエン・ウーピン)/杜琪峯(ジョニー・トー)/林嶺東(リンゴ・ラム)/徐克(ツイ・ハーク)
プロデューサー:杜琪峯/朱淑儀(エレイン・チュー)
出演:洪天明(ティミー・ハン)/呉鎭宇(フランシス・ン)/余香凝(ジェニファー・ユー)/元華(ユン・ワー)/伍詠詩(ン・ウィンシー)/任達華(サイモン・ヤム)/張達明(チョン・タッミン)/林雪(ラム・シュ)

『七人樂隊』はジョニー・トー監督プロデュースで、長らく香港映画界を牽引してきた七人の監督が集結。1950年代から未来まで、10年ごとに年代がを分け担当した短編7本から成るオムニバス映画。それぞれ個性あふれる作品で活躍してきた7人の監督たちが自身の特別なノスタルジーをこめ映像化した物語は、デジタルが主流の現代に、あえて35mmフィルムで撮影を行い、過ぎ去りし“フィルムの時代”への敬意を表している。

第73回カンヌ国際映画祭カンヌセレクション2020で上映された本作は、ジョニー・トー監督プロデュースの元、七人の監督が集い、担当する年代をくじで選び製作された。
貧しかった50年代、必死にカンフーの稽古に励んだ幼い自分と仲間の姿、自伝的エピソードを描したサモ・ハン監督の「稽古」。サモ・ハンの息子洪天明がカンフーの先生役を演じている。
教育に生涯を捧げる校長先生(呉鎭宇)と、家族のような日々を過ごした学校の先生たち。そして女性教師の淡い憧れを描いたアン・ホイ監督の「校長先生」。
移住を控えた恋人たちの別れをスタイリッシュな映像で描いたパトリック・タム監督の「別れの夜」
移住する孫と香港に残るおじいさんの、話がかみ合わないながらも温かな交流を描くユエン・ウーピン監督「回帰」。孫娘を愛する祖父役を元華が演じている。
香港特有の喫茶店“茶餐廳”を舞台に、庶民が株価に右往左往する姿を描くジョニー・トー監督の「ぼろ儲け」。お約束の林雪(林雪)が出演。
イギリスから久しぶりに帰って来た主人公が、香港の変わり様に翻弄されるリンゴ・ラム監督「道に迷う」。任達華が道に迷う。
精神科の治療風景を描き、たたみかける台詞が魅力のツイ・ハ―ク監督「深い会話」、かみ合わない論争を続ける張達明のとぼけた演技。徐克と許鞍華もカメオ出演。

2020年の東京フィルメックスで上映され観客賞を受賞した作品。
杜琪峯監督の呼びかけで集まった、香港映画ニューウエイブ全盛期に登場し活躍した同世代の7人の映画監督たちが、それぞれの持ち味を生かし、1950年代から近未来までの歴史をたどりつつ香港の人々を描いたオムニバス映画。林嶺東監督にとっては本作が遺作になった。こちらの7人の楽隊は、変わりゆく時代に寄り添う香港愛に満ちたSeptet(七重奏)を奏でた。
洪金寶の「練功」は、『七小福』を思わせるカンフー訓練風景を描く。訓練をサボったらみつかってしまい、さらに厳しくしごかれる。子供達のお茶目な姿に思わずにっこり。でもすごいカンフー技を見せてくれた。許鞍華の「校長」はノスタルジック感あふれる、彼女らしい情感にあふれた作品だった。呉鎭宇を校長先生役に持ってくるなんてユニーク。彼のこんな姿、これまで観たことがない! 袁和平の「回帰」は1997年の香港返還前後の話で、香港に残ったカンフー好き爺さんとカナダへ渡った孫娘との交流を描いていたけど、好々爺的な元華の姿が‌微笑ましかった。杜琪峯の「ぼろ儲け(遍地黄金)」は『奪命金』を彷彿とさせるような一攫千金を狙って金儲けに励む香港人が出てくる。株の売買で、間違って食堂メニューの番号を頼んだら、値上がりするという行き違いの妙が描かれた杜琪峯らしい作品。林嶺東の「道に迷う(迷路)」の最後には「香港より良い所はたくさんあるが、故郷に対する愛は香港にしかない」と出てくる。徐克の「深い会話(深度対話)」は、近未来の精神病院が舞台。医者と患者が入り乱れ、最後はどちらがどちらかわからなくなるような混乱を描いた。これも徐克ならではの作品で、香港映画にハマった人にとっては出演陣の口角泡を飛ばす会話が爆笑もの。しかし、今の香港の状況を考えると、かつての香港を取り戻せないかもしれないと思い、香港の未来を思うと絶望感もある。この『七人楽隊』が、変わりつつある香港へのレクイエムにならないことを祈りたい(暁)。


長年の香港映画ファンにとって、感慨深く、愛おしくてたまらない映画。
7人の監督が、与えられた年代を舞台に描いた物語は、それぞれがその監督らしいテイストで、出演者も違うのに、見終わって、1950年代から近未来に至る香港の市井の人々を描いた一つの絵巻物のように感じました。
香港返還を見据えて国外に移住する人と香港に残る人との別れ、空港が町中の啓徳にあった頃のビルの真上を飛んでいく飛行機、一つのカード(オクトパス)で交通機関だけでなく様々なものが決済できるようになるのを予想する人、中環(セントラル)のスターフェリー乗り場が移動した跡にできた大きな観覧車・・・ ちょっとしたことから感じる、香港の変遷に胸がいっぱいになりました。
そして、フラさま(呉鎭宇=フランシス・ン)が落ち着いた校長先生を演じ、サイモン・ヤム(任達華)が海外から里帰りし、昔馴染みの建物が見つからなくて戸惑う中年男を演じるという、彼らがぎらぎらしていた頃を思うと、時が流れたことをずっしり感じました。
これからの香港がどうなるのだろうとの思いもよぎりますが、香港が香港らしく歩んできた時代を映し出した情感たっぷりの映画に乾杯です。(咲)



公式サイトはこちら
2021年/香港/広東語/111分/ビスタ/5.1ch/
日本語字幕:鈴木真理子
配給:武蔵野エンタテインメント

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posted by akemi at 05:59| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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