友達でも家族でもない、でも孤独ではない、
新しい「つながり」の物語。
原作・監督・脚本:荻上直子
撮影監督:安藤広樹
美術:富田麻友美
衣装:村上利香
編集:普嶋信一
テーマ曲:知久寿焼
音楽:パスカルズ
フードスタイリスト:飯島奈美
原作:荻上直子「川っぺりムコリッタ」(講談社)
出演:松山ケンイチ、ムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆
江口のりこ、黒田大輔、知久寿焼、柄本 佑、田中美佐子、薬師丸ひろ子、笹野高史、緒形直人
『かもめ食堂』の荻上直子が贈る、「おいしい食」と「ささやかなシアワセ」
生と死の間にある時間を、仏教の時間の単位でムコリッタという
大ヒットした映画『かもめ食堂』。日本映画初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞を受賞した『彼らが本気で編むときは、』の荻上直子監督がオリジナル脚本で製作した『川っぺりムコリッタ』は、新しい「つながり」の物語。松山ケンイチ×ムロツヨシ×満島ひかり×吉岡秀隆など、実力派豪華キャストが集結!
人と人のつながりが希薄な社会で、人はどうやって幸せを感じることができるのか。モノや境遇、場所にとらわれない形で生きることの楽しさ。食を通した荻上ワールドが展開される。「おいしい食」と「ささやかなシアワセ」をユーモアいっぱいに描く。
誰も知る人のいないところで、できるだけ人と関わらず静かに暮らしたいと山田(松山ケンイチ)は北陸の小さな街の塩辛工場で働くことに。社長から紹介された築50年の「ハイツムコリッタ」という古い安アパートで暮らし始める。無一文に近い状態でやってきた山田のささやかな楽しみは、風呂上がりの良く冷えた牛乳と、炊き立ての白いごはん。それに会社でもらってきた塩辛を乗せて食べる。
そんな暮らしを始めたばかりのある日、隣の部屋の島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと入り込んできた日から山田の静かな日々は一変してしまう。ひっそりと生きたいと思っていた山田だったが、それ以来、島田は「一緒に食べる人がいると、ご飯はおいしいよ」と、図々しく毎日のようにご飯時に現れるようになり、静かな生活は望むべくもなくなった。さらに、夫を亡くした大家の南(満島ひかり)、息子と二人暮らしで墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)といった、ハイツムコリッタの住人たちとも繋がりができてしまい、時にはみんなでスキヤキなんてことも。ここの住民はみんな貧しいし、それぞれ何かを抱えているようだけど優しい。そんなアパートの住人たちに囲まれて山田の頑なな心は少しづつほぐされていく―。
川っぺりのアパートには、大切な人の死に直面した人や、墓石売りなど、死と向かい合う仕事をしている人も住んでいる。いつ死んでもかまわないと思っていた主人公は、貧しかったり、落ちこぼれだったりするけど、人間らしいアパートの住民たちに囲まれ、少しづつ「ささやかなシアワセ」に気づいてゆく。友達でも家族でもない彼らの中で「孤独ではない」と実感する。
川っぺりにあるアパートムコリッタに引っ越してきた山田は、誰にも知られずひっそりと暮らそうと思っていたのに、おせっかいな隣人たちに囲まれ、いつのまにか、一緒にご飯を食べるようになってしまった。隣に住む島田は何をしている人なのかわからないけど、畑で野菜を作り、漬物を持って、毎日のようにご飯を一緒に食べようとやってきて、おまけに風呂まで入っていく迷惑な存在だったし、最初は煙たがっていた隣人たちだったが、この人たちとの交流も悪くはないと思うようになる。
自分はろくでもない人間だと思っていたけど、職場の塩辛工場も、なんとか働いて行けそうだし、そうでもないかもと、ちょっと自信が持てるようにもなった。家族ではないけど、暮らしを共有できる仲間を得、生きていけるかもと思う。それにしてもおいしそうな白米の炊けた瞬間。スキヤキ。そういえば、もう何年もスキヤキなんて食べてないな。これは一人ではなかなか食べにくい料理。鍋は一人でも大丈夫なのにスキヤキはやっぱり何人かで食べた方がおいしそう。
私は一人暮らし。昔は家族で食事するのが煩わしかったので、一人で食べるのが好き。一人で食べるのに別に孤独を感じたことはない。「ご飯は何人かで食べたほうがおいしい」という言い方を押し付けられるのは嫌だけど、友人と食事したり、たまには家族で食べるのもいいかな。川ぺりの景色と、夏の夕方の景色が、なんか懐かしかった(暁)。
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宣伝協力:シンカ 配給:KADOKAWA
2021年/120分/G/日本
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