2022年08月14日

失われた時の中で Long Time Passing 英題「Long Time Passing」

2022年8月20日より ポレポレ東中野ほか全国順次公開
上映情報 
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(C)2022 Masako Sakata

写真家だった夫の死をきっかけにカメラを持ち、ベトナムに向かった妻
それから20年。枯葉剤被害者の現実の中に見出したものは

監督・撮影:坂田雅子
編集・構成:大重裕二
サウンドデザイン:小川武
音楽:難波正司
写真提供:グレッグ・デイビス フィリップ・ジョンズ・グリフィス ジョエル・サケット
コーディネーター・仏語翻訳:飛幡祐規

夫の死により、思いがけず映画監督として人生を歩むことになった坂田雅子さん。『花はどこへいった』(2007)『沈黙の春を生きて』(2011)など、ベトナムの枯葉剤被害をテーマにした作品を20年にわたって撮り続けてきた坂田雅子監督の最新作。
ベトナム帰還兵で、写真家だった夫のグレッグ・デイビスが2003年4月19日、胃の不調、足の腫れを訴え入院。5月4日、肝臓がんにより逝去。突然の死を遂げた原因が、ベトナム戦争時の枯葉剤にあるのではないかと聞かされ、夫の身に起きたことを知りたいと思い、ベトナムで取材を始めた。そこで見たのは、戦後30年を過ぎてもなお枯葉剤の影響で重い障害を持って生まれてくる子どもたち。そして、その子たちを愛しみ育てる家族の姿だった。
それからおよそ20年。ベトナムはめざましい経済発展を遂げたが、枯葉剤被害者とその家族は取り残されている。今なお、枯葉剤の影響で重い障害を持って生まれてくる子どもたち。そのケアを担い、家計を支えるために進学を断念せざる得ない兄弟、姉妹たち。無医村を周り、支援活動を続ける医師。アメリカ政府と枯葉剤を製造した企業に対する裁判を起こした元解放戦線の兵士だったジャーナリスト。時間の経過とともに明らかになる、戦争が奪ったものと奪えなかったもの。カメラは癒えることのない戦争の傷痕に向き合い続ける⼈々の姿を記録する。

坂田雅子さんは夫の死後、映像制作を⼀から学び、これまでに枯葉剤や核をテーマにしたドキュメンタリーを作ってきた。世界をめぐり坂田監督が描いてきたのは、戦争や原発事故などに翻弄されながらも、現実を受け止め、時に抗って、その中で生きる人々の姿。それらの人々との出会いの中で、坂田監督は 2010 年にベトナムの枯葉剤被害者支援のために「希望の種」という奨学金制度を設立、子どもたちの教育を支えてきた。「希望の種」の詳細についてはこちらで。

坂田雅子監督がこの作品を作ったいきさつを公式HPに載せています。大きな力がない私たちにもできることはあると語っています。ぜひ、皆さんもこの作品を観て、自分にできることから始めましょう。
<夫の死が枯葉剤のせいかもしれないと聞き、まさに藁にもすがるような気持ちで、枯葉剤について調べ、ドキュメンタリー映画を作ろうと思い立った時、私は55歳でした。何の経験もないところから始まった映画作りでした。
今回の『失われた時の中で』は枯葉剤をテーマにした3作目になります。続編を作ろうと意図していたわけではないのですが、ベトナムを訪れるたびに出会う被害者たちの声がこの映画を作らせたのです。
グレッグは彼の死によって、私に新しい生を与えてくれたのかもしれません。いくつかの小さなドキュメンタリーを作ってわかったことは、小さな私にもできることがある。いや、組織に頼らない小さな私だからこそできることがある、ということです。
ベトナム帰還米兵の「戦争はいつまでも終わらない。だから始めてはいけないのだ」という言葉が響き続けます。戦争や、国際政治など世界の大きな出来事の前につい立ちすくんでしまいますが、諦めずに一人一人がもち堪えるところに希望はあるのだと思います>

高校時代の1968~70年頃、日本でもベトナム反戦運動が盛んになり、私もデモに何度も参加した。そのことが、今の私の生き方に大きく影響している。そして、今もベトナムとベトナムの人々のことが気になる。
枯葉剤の影響については、中村悟郎さんがずっと写真で伝えてきたが、この作品の中でも、グレッグさんが中村さんの枯葉剤の影響を伝える写真展に行き、展覧会の後、中村さんに自身のベトナムでの枯葉剤体験について相談するシーンが出てきた。グレッグさんは、中村さんの写真展を見て、何らかの影響が自分にも出てくると予想していたのかもしれない。

*中村 梧郎 オフィシャルサイト
去年(2021)、日本公開されたイギル・ボラ監督の『記憶の戦争』という作品では、韓国軍がベトナムに参戦し、民間人を虐殺した話を扱っていたが、この作品を作るきっかけになったのが、監督の祖父がベトナム戦争に参戦し、枯葉剤の後遺症で亡くなったということもひとつのきっかけと語っている。監督にインタビューした時に、韓国軍は30万人近く参戦し、枯葉剤の被害者同盟の会員が14万人もいることを知った。これにも驚き。約半分の兵士が枯葉剤の影響を受けている。アメリカ軍は約55万人が参戦しているけど、いったいどのくらいの被害者がいるのだろう。アメリカ軍は友軍にも情報を流していなかったのだろうか。アメリカ、ベトナムだけでなく、ベトナムに参戦した他の国にも被害者はきっといるに違いない。ベトナム戦争が終了して47年、枯葉剤の被害はまだまだ続いている(暁)。
『記憶の戦争』イギル・ボラ監督インタビュー記事

2022年製作/60分/日本
配給:リガード
公式HP

シネマジャーナルHP 特別記事
『失われた時の中で Long Time Passing』坂田雅子監督インタビュー

『失われた時の中で Long Time Passing』上映、イベント情報

●あいち国際女性映画祭
9月9日(金)10:00 ウィルあいち大会議室

劇場イベント情報
●ポレポレ東中野
8月20日(土)10:00と11:50の回上映後、坂田雅子監督による初日舞台挨拶
8月21日(日)10:00の回上映後、坂田雅子監督・中村梧郎さん(フォトジャーナリスト)によるトーク
8月26日(金)10:00の回上映後、坂田雅子監督・小室等さん(フォークシンガー)によるトーク
8月27日(土)10:00の回上映後、坂田雅子監督・加藤登紀子さん(歌手)によるトーク
8月28日(日)10:00の回上映後、坂田雅子監督・渡辺一枝さん(作家)によるトーク
9月1日(木)10:00の回上映後、坂田雅子監督・大石芳野さん(写真家)によるトーク

●第七藝術劇場
9月3日(土)時間調整中|坂田雅子監督による初日舞台挨拶
9月4日(日)時間調整中|坂田雅子監督・桂良太郎さん(日越大学(ハノイ国家大学)客員研究員)によるトーク

●シネマテークたかさき
9月17日(土)、18日(日)時間調整中|坂田雅子監督による舞台挨拶

●京都シネマ
9月19日(月・祝)時間調整中|坂田雅子監督・アイリーン・美緒子・スミスさん(環境ジャーナリスト)によるトーク
9月28日(水)時間調整中|坂田雅子監督・山極壽一さん(総合地球環境学研究所 所長/人類学者)によるトーク

●シネマスコーレ
9月24日(土)時間調整中|坂田雅子監督による初日舞台挨拶

●前橋シネマハウス
10月1日(土)、2(日)時間調整中|坂田雅子監督による舞台挨拶
posted by akemi at 19:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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