2022年07月31日

長崎の郵便配達

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監督・撮影:川瀬美香 
構成・編集:大重裕二 
音楽:明星/Akeboshi
出演:イザベル・タウンゼンド、谷口稜曄、ピーター・タウンゼンド

英国マーガレット王女との世紀の悲恋で知られ、『ローマの休日』のモチーフになったと言われる元英空軍大佐で作家のピーター・タウンゼンド氏。後に、世界を回ってジャーナリストとなり、16歳のときに長崎で郵便配達中に被爆し、生涯をかけて核廃絶を世界に訴えた谷口稜曄(スミテル)さんに出会い、1984年に1冊のノンフィクション小説を出版する。本作は、娘のイザベルさんが、父の著書とボイスメモを頼りに2018年の長崎をめぐり、2人の想いを紐解く珠玉のドキュメンタリー。

日本人ならば原爆のことはある程度知っている。それが思い込みであることにこの作品を見れば気づくだろう。日本にいれば、原爆ドームや原爆で真っ黒な焦土と化した広島の写真を見る機会は何度もある。途轍もなく悲しい、酷いことが起こったのだと思う。しかし、それはあくまでも知らない人が受けた悲劇で、自分の身に置き換えては考えにくい。
本作では谷口さんがその瞬間に見た風景や熱風が体をどう変化させていったのかを語る。そこには真実の重みがあり、知らない人のことと見過ごすことができない。
時間が流れ、第二次世界大戦が遠い昔のことになりつつある。本作のもとになったピーター・タウンゼンド氏の著作「ナガサキの郵便配達」は日本では絶版になっているが、谷口さんは復刊を望んでいたという。監督から谷口さんの思いを聞いた方が再出版のために活動されている。谷口さんの思いが引き継がれていることがうれしい。また本だけでなく、娘のイザベルさんが父の思いを引き継ぎ、フランスで次世代に繋げていく活動を始めた。私たちも戦争がもたらす悲劇を伝えていかなくてはと思う。(堀)


忘れ去られていく原爆の記憶が、こうした形で映像に残ったことに、まず深い感動を覚えました。背中全面に真っ赤な火傷を負った少年の写真ははっきりと記憶にありました。その少年が郵便配達員で、その後、ずっと核廃絶を訴えてきた谷口稜曄さんだということ、そして、英国マーガレット王女との恋に破れたピーター・タウンゼンドさんが、傷心の旅の途中で谷口さんに出会い、ノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を書かれたことは、この映画を通じて初めて知りました。谷口さんも、ピーター・タウンゼンドさんも亡くなり、ピーターさんの娘であるイザベルさんが小説と、父のボイスメモを頼りに、谷口さんの足跡を辿る旅・・・  語り継ぐことの大切さを思いました。
ピーターさんのボイスメモには、「戦争に行って人を殺した」という告白が残っていたそうです。戦争とは、まさに人と人が殺しあうこと。勝っても負けても、どちらの側にも心の傷はあとあとまでのこるものだと実感します。
ところで、長崎は、大好きな町で、何度か訪れたことがあります。風光明媚な町をグラバー邸のある丘の上から眺めるたびに、この美しい町に原爆が落とされたことに思いを馳せたものです。爆心地のあたりは、一度だけ歩いたことがあります。そこかしこに痕跡が残されていて、一瞬の原爆の威力におののいたものです。
被爆国として、日本はもっともっと強く核廃絶を訴え続ける必要があると思います。
残念ながら、今も各地で戦火は絶えません。お互いを思いやり、共存する世界はいつ実現するのでしょう・・・ (咲)



2021年/日本/日本語・英語・仏語/97分/4K/カラー/2.0ch/日本語字幕:小川政弘 フランス語翻訳:松本卓也
配給:ロングライド
©️The Postman from Nagasaki Film Partners
公式サイト:https://longride.jp/nagasaki-postman/
★2022年8月5日(金)シネスイッチ銀座ほか全国公開

posted by ほりきみき at 19:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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