2022年07月30日
アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台(原題:Un triomphe)
監督・脚本: エマニュエル・クールコル (アルゴンヌ戦の落としもの)
共同脚本: ティエリー・カルポニエ (パリ特捜刑事)
撮影: イアン・マリトー (アルゴンヌ戦の落としもの)
⾳楽: フレッド・アブリル (サウンド・オブ・ノイズ)
主題歌: “I Wish Knew How It Would Feel to Be Free” ニーナ・シモン
出演:カド・メラッド ([コーラス][オーケストラ・クラス])
タヴィッド・アラヤ / ラミネ・シソコ / ソフィアン・カーム / ピエール・ロッタン / ワビレ・ナビエ
アレクサンドル・メドヴェージェフ / サイド・ベンシナファ /マリナ・ハンズ(世界にひとつの⾦メダル)
ロラン・ストッカー(セザンヌと過ごした時間)
売れない役者のエチエンヌは、刑務所の囚人たちのためのワークショップに講師として招かれる。初めて足を踏み入れた刑務所で、訳あり曲者だらけの囚人たちに囲まれることになった。エチエンヌは素人の彼らに、不条理劇の「ゴドーを待ちながら」の役を振り、少しずつかみ砕くようにして演出する。興味を持つもの、全く無関心なもの、共通しているのは早くここから出たいという気持ちだけだ。順調とは言えない過程をへて、理解者も少しずつ増え、ついに舞台公演の機会がやってくる。
エチエンヌ役のカド・メラッドはフランスの国民的スターで、あちこちで顔を見る人です。助演の俳優たちが演じるのは一癖も二癖もある囚人で「素人の俳優」。これは演じ甲斐がありそう。撮影場所は本物の刑務所で、900人の受刑者が収容されています。そこにロケ隊が8日間入って撮影。これは初めてのことだったそうですが、本物の持つ力が映画に与えたものは計り知れません。最も驚くのはこれが実話を元にしていて、あのラストのその後も実際に続いていたということです。全く「事実は小説よりも奇なり」ですね。
サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」は、1954年に発表された戯曲で、私も高校生のとき一度友人と観に行って(日本の演劇)、途中で寝落ちした恥ずかしい記憶あり、私はつくづくエンタメ体質で不条理劇苦手だと知りました。それを演劇初挑戦の囚人たちにやらせたエチエンヌとやってみた彼らは凄い!と別の角度から感心したのでした。フランス語の原題”Un triomphe”は「勝利」、”applause”は「拍手・喝采」。(白)
いかにもフィクションという設定ですが、歯の浮くようなハッピーエンドで終わらない。スウェーデンで実際にあったことをベースにしていますが、展開にひねりを感じます。
それにしても刑務所内の発表会に留まらず、受刑者が外部の劇場で上演するというのは日本ではありえない発想でしょう。上演後、受刑者が刑務所に戻って来たときに刑務官から屈辱的な対応を受けます。見ていて気の毒になってきますが、仕方のないことなのかもしれません。
受刑者たちの変化や心情の揺れがこの作品のメインテーマですが、エチエンヌの人生への向き合い方の変化も浮かび上がってきます。思いやプライドに凝り固まって孤立していたエチエンヌが受刑者たちと接するうちに周りの人の気持ちを受け入れるようになっていくもちろん裏切られることもありますが、それさえ前向きに捉えて受け入れるラストに「人っていくつになってもやり直せる」と勇気がもらえます。
ところで、900人の受刑者が収容されている本物の刑務所で撮影されたことを(白)さんが書いたのを読んで知りました。日本との違いにびっくり。映画『すばらしき世界』(2021年)も刑務所が出てきますが、撮影が許されたのはほんの一部だけだったと聞いています。お国柄の違いでしょうか。(堀)
2020 年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション
2020 年ヨーロッパ映画賞ヨーロピアンコメディ作品賞受賞
2021 年アートフィルムフェスティバル最優秀観客賞受賞
2021 年ラボール映画と映画⾳楽祭⾦のイビス(映画⾳楽)賞受賞
2021 年カナダ・ヴィクトリア映画祭観客賞受賞
フランス映画祭横浜 2021 オフィシャルセレクション
2022年/フランス/カラー/シネスコ/105分
配給:リアリーライクフィルムズ
(C)2020 - AGAT Films & Cie - Les Productions du Ch’timi / ReallyLikeFilms
http://applause.reallylikefilms.com/
★2022 年 7 月 29 日(金)より 感動のロードショー
ヒューマントラストシネマ有楽町/新宿ピカデリー他にて全国縦断公開
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