2022年07月24日

アンデス、ふたりぼっち   原題:WIÑAYPACHA  英題:ETERNITY

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©2017 CINE AYMARA STUDIOS.

監督・脚本・撮影:オスカル・カタコラ
編集:イレーネ・カヒアス
出演:ローサ・ニーナ、ビセンテ・カタコラ

ペルー、アンデスの標高5000mを超える高地で暮らす老夫婦パクシ(ローサ・ニーナ)とウィルカ(ビセンテ・カタコラ)。 二人は、都会に出た息子がいつか帰ってくることを待ち望みながら、リャマと羊と共に暮らしている。寒い夜を温めてくれるポンチョを織り、コカの葉を噛み、日々の糧を母なる大地のパチャママに祈る。ある日、飼っていた羊がキツネに襲われてしまう。さらに、火をつけるためのマッチが底をついてしまい、夫ウィルカは町にマッチを買いに行くが、その途中で倒れてしまう・・・

本作は、ペルー映画史上初の全編アイマラ語長編映画で、ペルーのシネ・レヒオナル(地域映画)の傑作。
アンデスの大自然を舞台に、伝統文化を守りながら暮らす夫婦の姿を映像に収めたオスカル・カタコラ監督。2021年、プーノ県エル・コジャオ、山頂コントゥリリ地区で待望の2作目の長編映画『Yana-wara』を撮影中に34歳で亡くなられました。
ウィルカ役は監督の実の祖父ビセンテ・カタコラが、パクシ役は友人から推薦されたローサ・ニーナが演じています。
原題の『WIÑAYPACHA』は、アイマラ語で「永遠」を意味し、時間の経過と終わることのなく何度も戻ってくる循環を表現しているとのことです。
太陽の動きに従った暦で、新年を迎え、作物の植え付けをする太古から続く暮らし。南半球なので、私たちとは逆なのが見てとれて、なるほど!と思いました。
人里離れたアンデスの高地で、お互いを敬いながら寄り添って暮らす老夫婦の物語に、ほっこりさせられるに違いないと見始めたら、思いもかけない展開! 自然の厳しさを突き付けられた思いです。長年培ってきた伝統的なアイマラ文化が消えゆく運命であることも感じさせられました。それは、この地だけでなく、地球全体が抱えている問題でもあると、考えさせられました。 (咲)


★ペルーのシネ・レヒオナル(地域映画)
ペルーの首都リマ以外の地域で、その地域を拠点とする映画作家やプロダクションによって制作される映画を指す。娯楽的なジャンル映画から作家性の強いアート映画までタイプは様々だが、いずれの作品もその地域独自の文化や習慣を織り込んでおり、都市圏一極集中ではない多元的なペルー映画を構成している。

『マタインディオス、聖なる村』(監督:オスカル・サンチェス・サルダニャ、ロベルト・フルカ・モッタ)が、ペルーのシネ・レヒオナルとして初めて、2022年6月18日に日本公開されています。

アンデスの山の上で暮らす高齢者夫婦。2人とも饒舌ではないが、やってほしいことはしっかり伝える。夫は新しいポンチョがほしいといい、機織りのために毛玉を糸に精製するところから始める妻を手伝う。互いに慣れた手つきに夫婦が過ごしてきた時間を感じる。
言葉通り、自給自足の日々に都会に暮らす私たちは心を洗われるようだが、作品は自然のいい面だけでなく、過酷さも見せつける。それも若いときには難なく乗り越えられただろう。しかし老いて体力が衰えた身には辛い。息子が戻ってこないことを妻が何度も嘆く。妻の気持ちはよくわかるが、都会の便利な生活に慣れてしまった者には戻れない。孤立無援の状況でも山を下りることを考えない2人を更なる危機が襲う。辛いラストの中に夫婦の純愛が見えた気がした。(堀)


ペルー、アンデスの高地で暮らす老夫婦の物語。後ろに見える高山には残雪が残り、老夫婦が暮らす場所では草木が生え、緑の絨毯が広がる。そんな自然ではあるけど、草木萌える春でも天気が崩れれば雪が降るような厳しい高地。そして、湿気があるような天気は、もしかしたら5000mを越えるような高地では、下からの蒸気が雲になり湿ったような空気なのだろうか。そんな中、二人は毎朝祈りをささげ、食べていくための生活を続ける。ジャガイモを干すというシーンがあり、春先でジャガイモ?と思ったけど、もしかして、前の年に収穫したものを保存しておいたものだろうか。こんな高地では作れる農作物も限られているだろうし、貴重な食べ物。狐が、飼っていた7,8頭くらいの羊たちや犬まで全頭殺してしまったというシーンにもまたびっくり。狼ならわかるけど、集団で住む狐たちなのだろうか。この羊たちは食料でもあったと思うのに土に埋めていた。殺された羊たちはそのように扱うのかとも思った。それなのに食べるものがないと言ってリャマを殺してしまう。思ってもいないような行動だった。マッチがなくなり、村まで買いに行くとお爺さんは出かけたけど、村までたどりつかずに倒れてしまった。帰らぬ息子のことを思いながら、厳しい自然の中で生きるインディオの姿が描かれる。お爺さんがふいていたケーナの響きが物悲しい(暁)。

2017年/ペルー/アイマラ語/86分
日本語字幕:新谷和輝
アイマラ語監修:藤田護 マリオ・ホセ・アタパウカル 矢島千恵子
後援:在日ペルー大使館    協力:日本ペルー協会
公式サイト:https://www.buenawayka.info/andes-futari
★2022年7月30日(土)より、新宿 K's cinema ほか全国順次公開



posted by sakiko at 16:54| Comment(0) | ペルー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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