監督・脚本・撮影・編集:伊藤徳裕
出演:岡部莉子(橘さやか)、松谷鷹也(堤和也)、石本径代(関佳子)、佐伯日菜子(天野裕子)、鈴木博之(大上刑事)
2020~2021年の東京。橘さやかは上京して看護師長の叔母・関佳子の家から看護学校に通っていた。世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるい、日本も例外ではなかった。叔母の勤務先の病院でクラスターが発生し、最前線にいた叔母が感染して急逝した。さやかは残された高校生の従妹と暮らし、検査は陰性だったがコロナウイルスの「限局性恐怖症」になってしまった。看護学校を続けられるか不安に陥っていたとき、公園でテニスをしていた堤和也に出逢う。少し言葉を交わしただけだったが、気になる存在になった。和也は劇団で活動しながらコンビニでバイトをしている。家に押し入ってきた見知らぬ男が、和也の父親が自分の妻に手を出したと騒ぎだす。(92分)
掟の門(続編)
2021年4月。さやかは看護師一年生になった。コロナの先行は見えず2020年のオリンピックは1年延期され、2021年夏に開催されることになった。斎藤美紀(大塚奈々穂)はアーチェリー選手として最有力視されていたが、選考会前にコロナ陽性とわかってホテルで隔離療養していた。出場は辞退せざるを得なかった。ホテルで悶々と日々を送るうち、壁のカレンダーに前の患者が残したメモを見つける。「私は孤独 この監獄から出られたら連絡を」美紀は連絡をとって会いに行く。メモを書いたのは古関まゆみ(伊神沙恵)、和也の父親を誘惑した女性だった。2人は初対面にもかかわらず、同じ部屋で療養体験をした者同士、心のうちを話していく。(93分)
コロナ以前をカラー、コロナ禍中の現在をモノクロで撮影。スタッフは伊藤徳裕監督一人、今撮らなければという意識につき動かされていたそうです。正・続編ともにヒロインのさやかと、その叔母の佳子が看護師なのが肝になっています。神経質になったり迷ったりもしながら、さやかは一人前の看護師になりたいと頑張っています。だんだん笑顔が出るのにホッとしました。
続編のほうが娯楽性は高く、ドラマチック。登場する誰もがコロナに翻弄され、いくつかの事件がおきます。微妙に絡まり関わっていて「コロナが悪い」「この世は理不尽だ」と嘆きますが、みんなが犯罪に走るわけではありませんからね。
さやかが和也に会ったときに手にしていて、和也が目を止めたのが、カフカの著作「審判」。後に和也も同じ本を読んでいます。その中に「掟の門」の逸話があり、タイトルはそこから。法と罪と罰についての話のようで、読んでみると監督の思いがもっと判りそう。
伊藤監督は新聞記者を経て映画制作を学び、短編を発表したのちこの2本の長編を作りました。コロナが蔓延してからあれあれと言う間に2年余り、ニュース映像もはさんでこれまでの経過がわかる作りです。
大上刑事が続編で活躍、伊藤監督の映画愛を一番背負っているのがこの人、という気がしました。(白)
2021年/日本/モノクロ一部カラー/
配給:N・I FILM
(C)N・I FILM
https://okitenomon-1.jimdosite.com/
正編★2022年7月9日(金)より
続編★2022年7月10日(土)より15日(金)まで池袋シネマ・ロサにて緊急ロードショー
舞台挨拶のお知らせ
7月15日(金)会場は池袋シネマロサ地下
18時の回終了後 19時40分より
登壇者:大塚奈々穂さん、井神沙恵さん、松谷鷹也さん、伊藤徳裕監督、坂本梨紗さん(司会)
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