2022年07月08日

WANDA/ワンダ(原題:Wanda)

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監督:脚本:バーバラ・ローデン
撮影・編集:ニコラス T・プロフェレス
制作協力:エリア・カザン
出演:バーバラ・ローデン(ワンダ)、マイケル・ヒギンズ(Mr.デニス)

ペンシルべニアの炭鉱町に住むワンダは、夫に離別をつきつけられ離婚審問に出なければならない。近所の老人にお金を無心しバス代を手に入れた。出廷したワンダの髪にはカーラーがついたまま。夫の痛罵にも表情を変えず離婚も子どもを手放すことも認めて町に出ていった。ビールをおごってくれるならどんな男とでもベッドを共にする。捕まえたり逃げられたりした後、寂れたバーでMr.デニスという小悪党に出逢った。ワンダはビールとベッドのため、彼の言うままに犯罪の片棒をかつぐ羽目になる。

バーバラ・ローデンをこの映画で初めて知りました。撮影監督兼編集者のニコラス T・プロフェレスと共同で、11万5千ドルというわずかな予算で監督・脚本・主演で制作したロードムービー。自信も行く当てもなくふわふわしたワンダはバーバラ自身であったのかもしれません。
そのころは23歳年上のエリア・カザンと結婚 (1967年 - 1980年)していたそうで、この映画の男優の衣裳はエリア・カザンのものだったとか。この1本を作っただけで、やめてしまったというのが惜しいです。1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞していますが、アメリカ本国ではウーマンリブの全盛期で、ヒロインの受動的な生き方が受け入れられなかったのか、ほぼ黙殺されたそうです。こうとしか生きられなかったワンダ、彼女を利用する男を描くことがバーバラなりの告発であり、闘いではなかったかと思うのですが。その後次作をつくることなく、癌を患い48歳で永眠。この映画は遺作となりました。(白)


冒頭、泣いている赤ちゃんをあやしている女性。男が出ていくと、ソファで寝そべっていた女性が、「私がいると不機嫌ね」と起き上がる。この寝ていた方の女性がヒロインのワンダ。髪にカーラーをつけたまま離婚調停の場に遅れていき、「育児も家事もしないひどい妻」と夫に指摘されるまま、離婚を承諾し、二人の子の親権も放棄。二日勤務した縫製工場に給金を貰いがてら、雇ってもらおうと思うも、作業が遅いと断られる。浮遊するように入った酒場で知り合った男についていき・・・と、同情の余地なしのダメダメ女ぶりを演じているのが、なんと、監督したバーバラ・ローデンご本人。しかも、『エデンの東』のエリア・カザン監督の妻! そんなバーバラ・ローデンが、従順な女性像に疑問を持って作ったのが、『WANDA/ワンダ』という次第。そう思って観ると、ワンダは実に自由人に見えてきます。それにしても、この物語、どこに向かうのか、どう着地するのか・・・と、目が離せなくなりました。もちろんハリウッド的な着地などしません。50年も前に、まだアメリカで女性監督があまりいなかった時代に、こんなとんでもない映画をよくぞ作ったと思います。
1970年ヴェネツィア国際映画祭最優秀外国映画賞を受賞し、71年カンヌ国際映画祭で上映された唯一のアメリカ映画でありながら、アメリカではほぼ黙殺。
フランスの小説家・ 監督のマルグリット・デュラスに「奇跡」と称賛された本作。閉鎖前のハリウッド・フィルム&ビデオ・ラボに放置されていたオリジナルのフィルムが運よく廃棄処分から救い出され、修復を施されて蘇った経緯は、ぜひ公式サイトでお読みください。粒子の粗い16mmフィルムの質感を残した修復もまた、作った当時のバーバラ・ローデンの思いを伝えてくれます。(咲)



1970年/アメリカ/カラー/シネスコ/102分
配給:クレプスキュールフィルム
(C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS
https://wanda.crepuscule-films.com/
★2022年7月9日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
posted by shiraishi at 11:47| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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