監督・撮影:重江良樹
編集:辻井潔
音楽・ナレーション:児玉奈央
出演:川崎市子ども夢パークに集う皆さま/フリースペースえんの子どもたち/認定NPO法人フリースペースたまりばの皆さま/風基建設株式会社の皆さま
神奈川県川崎市高津区にある子どものための遊び場。2000年に制定された「川崎市子どもの権利に関する条例」をもとに官民協同で作られた。工場跡地を利用した約1万㎡の広大な敷地には手作りの遊具があり、泥んこになったり木登りしたり、やってみたいことが好きなだけできる。一角にある「フリースペースえん(以下、えん)」には学校に行っていない子どもたちが通っている。溌剌として笑顔でいるのは、安心してありのままの自分でいられるから。ここでは虫や鳥の観察をする子、木工細工に夢中な子、それぞれ自分の「好き」をゆっくりあたためることもできる。学校や進路のことが気になる子どももいる。悩みながらも自分で考え、歩いていこうとする「子どもの力」がきっとある。ゆめパはそんな力を育てる場所。大人はそっと助言するだけ。
川崎市子どもの権利に関する条例
2000年12月21日に川崎市議会で成立し、2001年4月1日から施行されている条例。子どもの権利や理念をまとめた前半と、子どもの生活の場に応じた権利保障のあり方や具体的な保障の仕組みを定めた後半からできている。前半の子どもの権利については次のように記している。
・安心して生きる権利
・ありのままの自分でいる権利
・自分を守り、守られる権利
・自分を豊かにし、力づけられる権利
・自分で決める権利
・参加する権利
・個別の必要に応じて支援を受ける権利
2020年度、日本の児童生徒の自殺者数は初めて400人を越え、小中学生の不登校児はおよそ20万人となりました。大人でさえ生きづらいと思うとき、子どもに必要なのは安心できる「居場所」。コロナの感染拡大で一斉休校となったときも、ゆめパは子どもを受け入れ続けました。
見守る大人たちは、子どもたちの声を尊重し、「子どもたちがつくり続け、つくりかえていく遊び場」であることを大切にしています。前もって禁止ばかりしていると、子どもは自分で危険を察知したり、判断したりする力を養えません。失敗したら何度でもやり直せばいいと思えなくなります。
『さとにきたらええやん』(2016)で大阪西成区の児童館‟こどもの里”に密着した重江監督最新作。子どもたちが型にはめられず、自由に生きるのに「居場所」は大切で不可欠です。大人からの信頼も目には見えない「居場所」です。大人はそれを肝に銘じないと、とつくづく思いました。(白)
川崎市子ども夢パークと同じようなところが世田谷にもあります。家からはちょっと遠かったので、たまにしかいけませんでしたが、小学校に入る前の娘が楽しそうに遊んでいました。木登りや秘密基地作り、飛び降り、焚火といったことを自由にさせてくれる遊び場は子どもに大きな成長の機会を与えてくれます。ただ、危険も伴う。作品を見ていたら、娘のそばではらはらしながら見ていた自分を思い出しました。
ゆめパにはフリースペースも併設され、学校には行けない子どもが通っているとのこと。居場所のなくて辛いのは子どもだけではありません。子どもが居場所を見つけたことで、その親がどれだけ安心したことか。木工作業好きの女の子が将来を考え、進路を決めていく姿に彼女がゆめパで学んだことの大きさを改めて感じました。彼女はきっと辛いことがあっても夢を諦めずに努力していくに違いないと思えます。(堀)
川崎にこういう場所があるとは全然知らなかった。そして「川崎市子どもの権利に関する条例」というのがあることも。大人はあまり口出ししないで、子供の自主性に任せるという形で、居場所を探している子供たちの解放区のような存在。こういう場所が、もっとあれば、現在20万人にもなるという不登校児の希望になるのでしょうが、なかなかそうはいきません。ここの子供たちはのびのびと、自分のやりたいこと、やり遂げたいことに挑戦しているけど、この輪が全国に広がっていきますように(暁)。
子どもたちのやってみたいを大事にするゆめパ。特に、「フリースペースえん」には、感性の強すぎる子どもたちが集まっていて、皆、個性的。
虫や鳥が大好きで、とても詳しいリクトくん。「将来は虫や鳥に関われる仕事に就けるといいね」と言われ、「好きなことを仕事にするのは、ちょっと・・・」と答えていました。でも、きっと好きを仕事にするはず。ここに出てきた子どもたちが、将来、どんな大人になるのか見てみたいと思いました。自分のやりたいことを見つけることができたのは幸せなこと。ゆめパのような場所がなくても、学校でも家庭でも、大人のちょっとした手助けで、子どもたちは夢を見つけることができるはず。そんなヒントもこの映画からもらえることと思います。(咲)
☆重江良樹監督インタビューはこちら
2022年/日本/カラー/90分
配給:ノンデライコ
(C)ガーラフィルム/ノンデライコ
http://yumepa-no-jikan.com/
★2022年7月9日(土)ロードショー
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