2022年07月01日
初仕事
監督:脚本:小山駿助
撮影:高階匠
音楽:中村太紀
出演:澤田栄一(山下)、小山駿助(安斎)、橋口勇輝(和夫)、竹田知久(北館)、白石花子(真知子)
写真館でアシスタントとして働く山下は、赤ん坊の遺体の撮影を人づてに依頼され、良い経験になるかもしれないと依頼を受ける。赤ん坊の父親であり依頼主でもある安斎は、初め、若い山下に戸惑うも、正直で実直な山下に心を許し、撮影が始まる。 山下はほんの少しでも利己的になっていた自身を恥じ、誠心誠意彼ら家族のために撮影に取り組もうとする。遺体の状態を考えると時間がないという状況も、山下の使命感に拍車をかける。
珍しい題材の作品です。小山監督が「カメラが発明された時代に遺体を写して残すことが行われた」と聞いて思いついたそうです。肖像画として残せたのは、一部の裕福な人たち、ほかの人にはカメラは時間もかからず良いツールであったのでしょう。『ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス』にもスペイン風邪で愛する家族を亡くした人たちが、生前と同じように服を着せ家族で囲んで撮影する場面がありました。元気なときに撮れていたなら不要でしょうが、これが最初で最後の1枚だったかもしれません。
この作品での、依頼主・安斎は先に妻を亡くしていて、残された一人娘も失ってしまいました。娘の身体がここにあるうちに撮影しておきたいという気持ちもわかる気がします。そんな安斎の気持ちを受け取った山下は撮影に本気になり、逆に落ち着いた安斎がもう止めようと言い出します。未練があって何が悪いんでしょう。お葬式や四十九日が終わっても未練は残ります。送った人とどう生きてきたかで違いますが。
監督・脚本・出演の小山駿助さんの心ここにあらず、の雰囲気とぼそぼそとした台詞、逆に真っすぐ見つめてはっきりものを言う山下役の澤田栄一さんの対比が面白いなと思いました。山下には、とても大きな意味のあった「初仕事」だったはず。(白)
亡くなった子どもの写真を遺したい。悲しみに突き動かされて友人のカメラマンに撮影を依頼した安斎。初めは戸惑っていたものの、安斎と接しているうちに安斎の娘が生きていたころが思い浮かんでくるほど撮影に意義を感じ始めた山下。2人の気持ちが近づいていけばいくほど、撮影に対する熱意が反比例のように変化していく。
子どもへの未練だったと気づいた安斎と、「もっと技術があれば」「もっと経験値があれば」と悔しがる山下。気持ちの終着点は違うものだったが、この邂逅はそれぞれにとって必要なものだったに違いない。
それにしても山下がアシスタントをしているカメラマンのクズっぷりには驚いた。友人の依頼を事もなげにアシスタントに振ってしまっただけでなく、依頼主の怒りを買って撮影が中止になったことを自分からアシスタントに連絡をしない。陣中見舞いにくれば余計なことをしゃべる。こんなカメラマンは絶対に大成しないだろう。ぜひ早く、別のカメラマンに従事してほしい。(堀)
第33回東京国際映画祭プレミア上映
第21回 TAMA NEW WAVE コンペティションにてグランプリ
澤田栄一:男優賞受賞
2021年/日本/カラー/94分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)2020 水ポン
https://www.hatsu-shigoto.com/
★2022年7月2日(土)ロードショー
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