2022年06月25日

リコリス・ピザ(原題:Licorice Pizza)

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監督・脚本・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:マイケル・バウマン
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:アラナ・ハイム(アラナ・ケイン)、クーパー・ホフマン(ゲイリー・バレンタイン)、ショーン・ペン(ジャック・ホールデン)、トム・ウェイツ(レックス・ブロウ)、ブラッドリー・クーパー(ジョン・ピーターズ)、ベニー・サフディ(ジョエル・ワックス)

1970年代、ハリウッド近郊、サンフェルナンド・バレー。子役として活躍してきたゲイリー・バレンタインは、写真撮影の助手で高校に来ていたアラナに一目惚れする。連絡先を聞こうとつきまとうゲイリーに、アラナは年が違い過ぎるとそっけない。「君と出逢うのは運命なんだ」というゲイリーにほだされたアラナはついに食事を行くことを承諾する。将来を迷うことなく、自信満々なゲイリーに「何がしたいの?」と聞かれ、わからないとしか答えられないアラナ。ゲイリーに勧められ、女優のオーディションを受けてベテラン俳優のジャック・ホールデンやレックス・ブロウ監督と知り合った。次々と思いつきを実行するゲイリーは、ウォーターベッドの販売を始める。

年下ながら芸能界で大きくなってきたゲイリー、初めはガキ扱いしていたアラナでしたが、だんだんと年の差を感じなくなります。ゲイリーの大人顔負けの実行力と、たまに見せる幼さのギャップにやられたんでしょうか。このカップルは、悪さをして逃げたり、お互いを探したり、とにかくよく走っています。若いなぁ。ガス欠車が「走る」シーンにはあっけにとられました。
丁寧に再現された70年代のファッションと音楽、大物俳優が実際にいた人物役で登場する意外さ、当時を知る人はもちろん知らない人も、新人とベテラン俳優をアレンジする監督の手腕に喝采するはず。
三姉妹バンド、”ハイム”の三女であるアラナ・ハイム、フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマンが本作で映画デビュー。撮影時アラナは29歳、クーパーは17歳と映画の設定より離れています。アラナ・ハイムはどこか東洋の雰囲気があり、香川京子さんの若いころを思い出させます。アラナの実の両親と姉“ハイム一家”も家族役で総出演。
クーパー・ホフマンには、どうしても父親の面影をさがしてしまいます。やっぱり似ていますよね。父を越える名優になってほしいものです。
原題“Licorice Pizza”は、ジョニー・グリーンウッドの楽曲名ですが、1969年から1980年代後半にかけてカリフォルニア州南部で店舗を展開していたレコードチェーンの名前なのだと、観終わった大分後に記述を見つけました。画面には登場しなかったようです。(白)


15歳の高校生男子と25歳の年上女性との恋。日本だったら“禁断の恋”として端正な顔立ちの若手俳優と清純な雰囲気の中にも色気のある美しい女優を組み合わせて、情感たっぷりに背徳的な甘美さを描いた作品になっていたに違いない。
しかし、本作はそういった雰囲気とは無縁だ。アラナはなんとすっぴんで出演している。ニキビの跡やそばかすなどを隠そうとはしない。とにかくよく走り、全編通じて躍動感がある。年下のゲイリーに魅かれつつ、それを恋と認識していいのかがアラナ自身でもわからない。自分探し真っ最中な状況が手に取るように伝わってきた。
一方のゲイリーは15歳とは思えない実行力を見せる。子役として大人社会に早くから関わってきたからなのだろう。そうかと思えば、初心なところもあったりして、そのギャップがアラナには魅力的に見えたのかもしれない。
主演の2人以外では、ブラッドリークーパーの濃い感じが強烈な印象を落とし、ショーン・ペンとトム・ウェイツは物語にアクセントと深みを与えている。
さてさて、2人の恋はいったいどこへ向かっていくのだろう。(堀)


2021年/アメリカ/カラー/シネスコ/134分
配給:ビターズ・エンド、パルコ
(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
https://www.licorice-pizza.jp/#
★2022年7月1日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー


posted by shiraishi at 18:06| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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