2022年06月19日

ヘイ!ティーチャーズ!(原題:Katya I Vasya idut v shkolu)

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監督:ユリア・ヴェシュネヴェッツ
出演:エカテリーナ、ワシリイ

モスクワの大学を卒業したエカテリーナとワシリイは、大都会から行ったこともない地方都市の学校に赴任した。エカテリーナは文学、ワシリイは地理を担当する。教師1年生の2人は、授業の計画を立て、生徒たちを知って様々なことを教え、一緒に考えたいという情熱と夢を抱いていた。ところがそれは早々に打ち砕かれる。生徒たちは教師の言葉を聞かず、授業中もお喋りを止めない。輪ゴムを飛ばし合い、こっそりスマホでゲームをしている者までいる。怒鳴ったり、脅したりしたくない2人はあれこれと工夫するのだが…。

「教師はツライよ」…そんなシリーズはありませんが、どの国にも共通する「新米教師あるある」が満載です。ロシアの学校は小さな1年生から大きな11年生まで、日本でいう小、中、高校が同じ敷地にあります。都会で育った2人の新米教師が、地方の学校で奮闘努力する姿をとらえたドキュメンタリー。
エカテリーナは冒頭で、ブルーのミックスに染めていた頭髪をおとなしい色に染め変えました。フェミニズム、個人の尊厳など新しめの考えの彼女は、生徒をもっと感じたいと率直に語りますが、ベテランの先生は「そんなことはどうでもいい。生徒に学ぶべきことを教えて導くのが教師の仕事」とピシャリ。自分で考えるより目上の者に従順であれ、結論はすでにあっての議論というわけです。
ワシリイはアウトドア派、陽気でポジティブな男性ですが、保守的な地方のシステムは手ごわく、苦労します。生徒は新米先生の力量を見極めようといろいろ仕掛けてきますが、一度信頼すると屈託なく話すようになっています。生徒たちのやりとりも楽しく、よく撮影させてくれたこと、と思う場面が多いです。スマホで情報が手に入る現代でも、教会の権力は大きいようで、ヤンチャ坊主もみなかしこまっているのがほほえましいです。
せっかくの高い志が空回りしたエカテリーナとワシリイが、これからもめげませんように。今、大きくなった子たちは戦場に行っているのではないでしょうか?2人と、自由にモノが言えていたあの子たちがどうしているのか、そちらが気にかかります。(白)


エカテリーナが子どもたちの作文を読み、学級の半分がナショナリストと嘆き、授業で移民について取り上げました。すると子どもたちから「外国人はルールを守らない」「外国人は好き勝手をする」「虫けらみたいにうじゃうじゃいる」といった意見が次々と出てきます。必死に人権について語っても聞く耳を持たない子どもたち。しかし、校長先生からSNS投稿について釘を刺されると、言論の自由を主張するし(校長先生は民衆扇動と反論しましたが)、ナワリヌイの崇拝者ではないけれど共感すると言い、「プーチンは終わっている」と一刀両断する子も。学校教育の大切さと同時に難しさを感じました。
学内イベントで銃の解体と組み立をするのに驚いていたら、軍の訓練に参加したためテストが受けられず留年する子がいました。ナショナリストの彼らが軍に入って銃を持ったらどうなるのか。不安しかありません。(堀)


2020年/ロシア/カラー/デジタル/90分
配給:豊岡劇場
(C) OkaReka 
http://heyteachersjapan.com/
★2022年6月25日(土)ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開
posted by shiraishi at 15:22| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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