2022年06月19日
母へ捧げる僕たちのアリア 原題:La Traviata Mes frères et moi
監督・脚本:ヨアン・マンカ
出演:マエル・ルーアン=ブランドゥ、ジュディット・シュムラ、ダリ・ベンサーラ、ソフィアン・カーメ、モンセフ・ファルファー
南仏の海辺の町。14 歳の少年ヌールは、砂浜でサッカーに興じる兄3人を眺めながら、明日からの夏休みを、どう過ごすか思い巡らしている。古ぼけた団地に帰り、昏睡状態の母に大音量で母が大好きなオペラを聴かせる。兄たちは「消せ」「音量をさげろ」とつれない。
翌日から、教育矯正の一環で自分の中学校の修繕の仕事に就く。教室からオペラが聴こえてきて覗き込むと、講師のサラから歌ってみてと言われる。歌える曲は、「人知れぬ涙」しかない。亡くなった父がパヴァロッティと同じ町の出身で、父はこの歌でお母さんを落としたと説明するヌール。サラはヌールの才能を感じて、「椿姫」の楽譜を渡し、教室に通うよう勧める。
ヌールは声楽クラスに通いたいと思うのに、修繕作業もあるし、家では3男エディが母の薬代を持ち出し一騒動に。さらに、伯父が母を入院させてしまう。兄弟4人で病院に潜り込み、何とか母を家に連れ帰る。そんなある日、サラがレッスンに来なくなったヌールを心配して訪ねてくる。「才能があるから続けてほしい」というサラ。そこへ、警察がエディがドラッグを隠していると疑って家宅捜査にやってくる。ピアノに隠したのではと壊そうとするのを制止したサラが連行されてしまう・・・
ヌールが、声楽の先生と出会って、目覚めていく姿がとても爽やかでした。14歳という年齢で自分のしたいことに出会えたのは幸せだなと思いました。実は、ヨアン・マンカ監督自身が、サラを演じたジュディット・シュムラの歌う「椿姫」に魅了され音楽芸術の虜になったことが本作の原点。二人は公私ともにパートナー。
(C)2021 Single Man Productions Ad Vitam JM Films
舞台が南仏で、主人公の名前がヌール(アラビア語で「光」)なので、移民の人たちを描いた私好みの作品かなと観始めたのですが、ことさら移民社会を強調したものではありませんでした。父親はイタリア人、母親はマグレブ(北アフリカ)出身らしく、兄の一人が「どうせ顔をみれば、出自はわかる」という場面もあるのですが、少年の目覚め、親の介護などを描いた普遍的な物語。
母親が昏睡状態でも自宅で最期まで一緒に過ごしたいと、兄弟たちが一致団結して病院から連れ出す姿に拍手を送りたくなりました。
ヌールがいつもオペラを大きな音で母親に聴かせている場面には、小学校の同級生M子さんがクモ膜下出血で意識不明になり、息子さんが人工呼吸器につながれた彼女に、好きだったオペラを聴かせていたのを思い出して涙でした。
ヨアン・マンカ監督がプロデューサーに企画の相談をした際、「オペラは低所得者層のものではないよ」と言われたとのこと。本作は、オペラが決してエリート層だけのものでなく、好きな人のものだと証明しています♪ (咲)
舞台は、南仏のリゾート地? 夏にはいろいろな所からやってくる人たちが滞在するような街。主人公の家族はイタリアからの移民? 海沿いの町の古ぼけた集合住宅で暮らす4人兄弟と昏睡状態の母親。14歳のヌールと3人の兄たち。兄たちはすでに社会人? でも、3人ともなんだか危なげな仕事をしている。昏睡状態の母を3人の兄たちと自宅介護しているが、介護費用も滞ったりしている。ヌールも夏休みはバイトをしないといけない状態。諍いは絶えないし不器用だけど、兄弟それぞれ思い合っていることは伝わってくる。母のために聴かせていたオペラだったけど、不安定な生活の中で歌う喜びを見つけたヌール。パヴァロッティやマリア・カラスの力強い歌声。オペラは自分にとって遠い存在でほとんど聴かないけど、そんな私でも知っている曲がかかり、オペラがちょっと身近になったかも(暁)。
2021年/フランス/フランス語/108分/カラー/ビスタサイズ/5.1chデジタル
字幕翻訳:手束紀子
配給:ハーク 配給協力:FLIKK 後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:https://hark3.com/aria/
★2022年6月24日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
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