2022年06月17日
鬼が笑う
監督:三野龍一
脚本:三野和比古
撮影:金山翔太郎
出演:半田周平(石川一馬)、梅田誠弘(劉煒 リュウ・ウェイ)、赤間麻里子(石川由紀子)、坂田聡(石川修三)、大谷麻衣(大友まどか)、中藤契(石川一馬 青年期)、大里菜桜(石川まどか 少女期)
一馬は両親と妹の4人家族。父親は酒を飲むとひどい暴力をふるった。ある日、母親と妹を守るために父を殺めてしまった一馬。刑期を終えて出所すると母は酒浸りで家は荒れ放題。妹は家庭を持っていたが一馬を拒絶する。社会復帰を目指してスクラップ工場で働くが、そこでは外国人労働者のイジメが横行していた。見ないフリをする同僚ばかりの中、中国人のリュウが止めに入る。リュウは率直で過去も問わず、初めて友人ができた思いの一馬だった。
一馬は父親を死なせてしまったので、母や妹への献身はマイナスになってしまいました。法律上は罪を償いましたが、烙印は押されたままです。残った母や妹は、言葉にできない苦労をしたとしても、せめて母親がしっかりしてよ、という思いがぬぐえません。再起のための就職先はブラック企業で、弱い立場の人へのパワハラが噴飯ものです。すさんでしまいそうな一馬が留まれたのは、リュウとの出逢いが大きく、彼の前でだけは笑顔になれます。
一馬役の半田周平さんは、このきつい役柄を心身を削って演じたのではないでしょうか?リュウ役の梅田誠弘さんは、知らなければほんとに中国から来た人?と思うほど。『かぞくへ』(2016)のときから注目、『由宇子の天秤』(2021)での好演も記憶に新しいです。今回も拍手。
罪を犯したものへの非難や差別は紀元前から。聖書の中に姦淫の罪を犯した女(律法の刑罰では石で打たれる。男はどうなの?)に、イエスが「罪なきものが石を投げなさい」というくだりがあります。誰もが自分の罪を思い浮かべ、一人も石を投げるものはいなかった、のです。が、現代は、自分が特定されない(見えたら違うはず)のをいいことに「われこそは正しい」とばかりに責め、石礫がわりにSNSで攻撃するんですね。
スタッフに同じ名前が並んでいるのは、兄弟の制作ユニット「MINO Bros.」だからでした。兄・三野龍一監督、弟・三野和比古脚本の長編第2作。前作『老人ファーム』(2019)は未見ですが、いつか見られる機会がありますように。
不幸の連鎖に気が重くなる作品ですが、目を開いて世の中の理不尽を知りましょう。鬼はどこにでも誰の中にも巣食っています。(白)
2021年/日本/124分/PG12
配給:ラビットハウス、ALPHA Entertainment、MINO Bros.
(C)2021 ALPHA Entertainment LLP 「鬼が笑う」
https://onigawarau.minobros.net/
★2022年6月17日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
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