監督:狩山俊輔
原作:鶴谷香央理
脚本:岡田惠和
撮影:谷康生
出演:芦田愛菜(佐山うらら)、宮本信子(市野井雪)、髙橋恭平<なにわ男子>(河村紡)、古川琴音(コメダ優)、汐谷友希(橋本英莉)、伊東妙子(佐山美香)、生田智子(花江)、光石研(沼田)
佐山うらら17歳。クラスメートとキラキラの青春…でなくBL漫画をこっそり読むのが唯一の楽しみといういたって目立たない女子高生。
市野井雪75歳。夫に先立たれて一人暮らし、これといった趣味もない。ある日うららのアルバイト先の本屋に雪が現れ、1冊の本をレジに出す。思わず見つめるうらら。雪は綺麗な表紙にひかれてBL漫画と知らずに買ったのだったが、初めて見た男子の恋物語に魅了されてしまう。雪は続きが読みたいと、再び本屋に向かった。嬉しくなったうららは、雪とBL漫画の世界について語り合う。雪の贔屓の漫画家はコメダ優、うららの知識を吸収し、2人は共通の好きなものですっかり親しくなる。年の差58歳の新しい友情が生まれた。
年の差も、それまでの人生や暮らしも関係なく”好きなものを好き”と語り合える喜びは、どんなジャンルでも存在します。地味な高校生活を送っていたけれど”同好の士”に出逢って、周りとは別の”キラキラ”に包まれてくるうららを愛菜さんが。なんの楽しみがなかった老後に”別世界”を見出した雪を宮本信子さんが演じて、共感を呼びます。好きなもので繋がった友達って年齢も経歴も関係ないんですよね。それまでと、そのほかが違うほど、別のフィールドが拡がってとても面白いです。それも「メタモルフォーゼ(変身)」の始まりかも。
同名の原作は「このマンガがすごい!2019オンナ編」「文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 新人賞」など数々の漫画賞を受賞しました。原作と映画は別物とは思いますが、原作があれば読んでみることにしています。公式サイトから1,2話をお試し読みもできますので、ちょっと覗いてみると雰囲気がわかります。(白)
BLコミックを通じて世代を超えた友情を結ぶ話ですが、うららと雪、2人の華やぎぶりを見ていると、好きなものについて語るのに年齢なんて関係ないということが伝わってきます。お気に入りの連載モノの新しい号を書店で買ったときのワクワクする気持ち。自分にもそんな頃があったと懐かしく思い出されました。
人生を積み重ねてきた雪はうららにはない強さを持っていて、あるチャレンジを後押しします。それは周りの人を巻き込むだけでなく、思いがけず、ある人の悩みにも寄り添うことになりました。世の中って知らないところでこんな風に支え合っているのかもしれないと思うとうれしくなりますね。
メタモルフォーゼは雪にも訪れます。この物語は雪にとって助走期間だったよう。見事に羽ばたいていった雪。人はいくつになっても変われるものだと勇気がもらえました。
ロケーションも作品に一役買っています。昭和な感じの雪の自宅がすごく心に馴染むのです。私もおばあちゃんの家に行ったときは玄関からではなく、縁側から家に上がっていったなぁ。残念ですが、今はこういうオープンな感じは危険を伴うのでしょう。それでもせめて人間関係だけでもオープンになると生きやすいのかもしれません。(堀)
2021年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:日活
(C)2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会
公式サイト:metamor-movie.jp
公式Twitter:@metamor_movie
★2022年6月17日(金)ロードショー
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