2022年06月11日
三姉妹(原題:Three Sisters)
監督:脚本:イ・スンウォン
製作:キム・サンス、ムン・ソリ
音楽:パク・キホン
出演:ムン・ソリ(ミヨン)、キム・ソニョン(ヒスク)、チャン・ユンジュ(ミオク)、チョ・ハンチョル(ミヨンの夫)、ヒョン・ボンソク(ミオクの夫)
ソウルに住む三姉妹。長女ヒスクは花屋を営んでいるが、別れた夫が金の無心に現れ、一人娘は反抗期真っ盛り。気弱で主張もできないけれど”大丈夫なフリ”をしている。
次女ミヨンは教会の聖歌隊の指揮者を務めている模範的な信者。大学教授の夫、息子、娘と高級マンションに引っ越したばかり。一点の曇りもないはずだったが夫の不倫が発覚、”完璧なフリ”にも限界がきた。
三女のミオクは、劇作家だがスランプで1文字も書けない。酒浸りになって、年上の夫に当たり散らす。夫の連れ子は懐きもせず、実母を保護者面談に呼ぶ。それを知ったミオクは”酔っていないフリ”をして学校に乗り込む。
そんな3人が父親の誕生日会に実家に集まることになった。
三姉妹が蓋をしていた子どもの頃の記憶が随所に挟まれます。厳しい家父長制が残っていて、父親のいうことは絶対、家を継ぐ男子は女子より優遇された時代。躾けと称して子どもが親に折檻されても、隣近所も助けずとがめられないとは。日本でもかつては同じようなことが散見されたでしょうし、今もその種や芽が残っています。暮らしが閉鎖的になって外には見えにくくなっているだけかもしれません。
三姉妹は過去の傷をかかえて大人になり、三者三様の苦しみから逃れられずにいます。一番問題なさそうな次女のミヨンも、これまで必死に築き上げてきたものが壊れる寸前のところです。妻のミヨンがあまりにしっかりしているので、夫が息苦しかったのかもと男性は同情しそう。三姉妹には弟がいて、両親と暮らしていますが登場するのはずっと後。辛いエピソードの中にも、クスっと笑える場面もあり、全てと向き合ったラストの笑顔に、先の希望が見えました。
主演とプロデューサーをつとめたムン・ソリからのメッセージです。
「三姉妹を演じたわたしたちには、それぞれ娘がいます。彼女たちが暴力や嫌悪の時代を越えて、明るく、堂々と笑いながら生きていけるような社会になって欲しい、という願いを込めた作品です」
自分がされてイヤなことを人にするなと、言われましたし、言ってきました。幸せな人は他に悪意を向けたり、暴力をふるったりしません。まず自分が幸せであるために、何をすればいいのか?は各自の宿題。(白)
別れた妻に借金を背負わせたのに、まだお金の無心をするのかと怒りしか感じない男性にお金を渡してしまう長女。完璧主義者で夫や子どもをぎゅうぎゅうに締め付ける次女。脚本が書けないスランプからお酒に逃げる自分の弱さに嫌気がさして、さらに飲んでしまう三女。三者三様の三姉妹の日常が交互に描かれます。どの家庭も強烈すぎて、初めのうちは引いてしまいますが、それぞれの思いが少しずつわかってくると、ダメな部分があるからこそ、人間臭くてリアルだし、他人事には思えなくなってきます。
やがて彼女たちが幼いころに父親から受けた心と体の痛みも明らかに。今、抱えている生き難さも違って見えてきます。しかし、「大変だったのね。それじゃあ仕方ないわね」と慰められることを彼女たちはよしとはしないでしょう。トラウマに決着をつけた先に今の現実が続いてはいます。それでも逃げずに向かい合う強さが彼女たちにはあると感じるラストに韓国映画と日本映画の違いを見せつけられた気がします。(堀)
2020年/韓国/カラー(一部モノクロ)/2.00:1/115分
配給:ザジフィルムズ
(C)2020 Studio Up. All rights reserved.
http://www.zaziefilms.com/threesisters/
★2022年6月17日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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