2022年06月02日
ロイヤル・オペラ『椿姫』
演出:リチャード・エアー
再演 演出:バーバラ・ルック
原作:アレクサンドル・デュマ・フィス
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
美術:ボブ・クローリー
出演:プリティ・イェンデ(ヴィオレッタ・ヴァレリー)、アンジェラ・シムキン(フローラ・ベルヴォア)、ジェレミー・ホワイト(ドビニー侯爵)、ジェルマン・E. アルカンタラ(ドゥフォール男爵)、デイヴィッド・シップリー(医師グランヴィル)、クセニア・ニコライエワ(アンニーナ)
パリの高級娼婦ヴィオレッタは肺の病におかされているが、パトロンの男爵の庇護を受けて、贅沢な暮らしで気を紛らわしていた。しかしヴィオレッタを真剣に愛しているアルフレードに出逢い、初めて愛する喜びを知る。病気の療養のためにヴィオレッタは華やかな生活を捨てて田舎に移り、アルフレードと充実した日々を送る。アルフレードは家族と疎遠となっていたが、ある日父親がヴィオレッタを訪ねてくる。家族のために身を引いてくれるよう頼まれ、悩んだ末に承諾する。そんな事情を知らないアルフレードは、自分を捨てたヴィオレッタをパーティの席で罵倒する。アルフレードは男爵と決闘して外国に旅立ち、ヴィオレッタは一人粗末な部屋で死の訪れを待っていた…。
原題の「La traviata(ラ・トラヴィアータ)」は「道を踏み外した女」の意味。娼婦のことを指しています。日本では「椿姫」のほうをタイトルにすることが多いようです。髪に椿の花を飾ったことからそう呼ばれたとか。原作のデュマの体験が反映されているそうです。
ヴィオレッタはアルフレードに愛されて田舎で療養しますが、アルフレードは、生活費がかかることにもヴィオレッタの真心にも少しも気づきません。そこのところが世間知らずの貴族の坊ちゃま。デュマの小説では2人は再会することなく、ヒロインのマルグリットは孤独のうちに亡くなりますが、オペラは少し違います。
ヴァイオレット役のプリティ・イェンデは、1985年南アフリカ出身のソプラノ歌手です。アパルトヘイト中に生まれ、撤廃された1994年にはまだ少女でした。白人優先の空気が残る中でどうやって才能を磨いてきたのでしょう。この作品では堂々の貫禄で、身体そのものが楽器というのがわかる美声です。結核ならもう少しほっそり…という感想はどこかへ消えて、死を前にしたヴィオレッタの嘆きの歌に思わず涙。
『月の輝く夜に』(1983)の中でオペラを観る場面があり、ヒロイン(シェール)が舞台を見つめて涙するのがこの第3章だった気がします。
シネマ歌舞伎と同様、こちらの映像もオペラを特等席から観ている気分になれます。ぜひ大きな画面で豪奢な舞台をご覧下さい。(白)
2022年/イギリス/カラー/シネスコ/208
原題:Royal Opera House Live Cinema Season 2021/22: La traviata
配給:東宝東和
(C)2022 ROH. Photograph by Tristram Kenton
http://tohotowa.co.jp/roh/
★2022年6月10日(金)よりTOHOシネマズ 日本橋 ほか全国公開
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