監督・脚本:阪本順治
撮影:笠松則通
出演:伊藤健太郎(渡口淳)、小林薫(渡口義一)、余貴美子(渡口道子)、眞木蔵人(中本裕治)、永山絢斗(美崎輝)、毎熊克哉(君原)、坂東龍汰(中本貴史)、河合優実(智花)、佐久本宝(友利洋之)、和田光沙(澤地多恵)、笠松伴助(近藤次郎)、伊武雅刀(永原健三)、石橋蓮司(沖島達雄)
ある港町。親にねだって入学した専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるんで自堕落に生きる渡口淳。両親の義一と道子は、ガット船と呼ばれる船で埋立て用の土砂を運ぶ海運業を営んでいる。仕事は減っているが、長く勤めてくれた従業員を辞めさせるわけにもいかない。経営に頭を悩ましながらも船から離れず、なんとか日々暮らしていた。それでもリストラにあった道子の兄弟の裕治を受け入れる。従兄弟の貴史と久しぶりにガット船に乗ってみるが、仕事に興味はわかない。
淳は不良の喧嘩に参加しても手助けにならず、逆に負傷してしまう。親の心配をよそに、怪我した足を見せつけてひっかけた女から金をせびってはダラダラ暮らすていたらく。ある晩不良仲間が襲われ、SNSで動画が拡散された。
坂本順治監督が、主演にと見込んだ伊藤健太郎と時間をかけて話して作り上げたオリジナルストーリー。伊藤健太郎が「失うものはなにもない」と内面をさらけ出して挑んだという作品。両親役の小林薫さん余貴美子さんを始め、実力派のベテラン・若手のキャストが揃って、物語をしっかりと支えています。
淳には居心地が良さそうな不良仲間も上の立場の者にいいように使われ、楽なわけではありません。ろくに行かない専門学校も在籍していたいだけ。同期生に拒まれるまで、自分は役立つ友達だと勝手に考えています。自分が彼にしたことも忘れ、何て甘ちゃんな淳でしょう。
初めて見たガット船の内部は、部品も土砂を入れる船倉も大きく、高いところの苦手な私は、危ない~とヒヤヒヤ。乗り物好きな男子には貴重な映像ではないでしょうか。
タイトルの「冬薔薇(ふゆそうび)」は普通花が開かない冬に咲く種類の薔薇のこと。映画の中では、義一が買ってきて、妻の道子が嬉しそうに世話をしています。はぐれ者の淳も花開いてほしい親心にも見えます。それぞれの厳しい人生にもいくばくかの慰めがある、ということかもしれません。(白)
2022年/日本/カラー/109分
配給:キノフィルムズ
(C)2022 「冬薔薇(ふゆそうび)」 FILM PARTNERS
https://www.fuyusoubi.jp/
★2022年6月3日(金)ロードショー
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