2022年05月29日
歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡 原題:Nomad : In the Footsteps of Bruce Chatwin
監督・脚本・ナレーション:ヴェルナー・ヘルツォーク
出演:ヴェルナー・ヘルツォーク、ブルース・チャトウィン、エリザベス・チャトウィン、ニコラス・シェイクスピア
イギリスの伝説の紀行作家ブルース・チャトウィン(1940-1989)。
本作は、チャトウィンの没後30年、彼と親交のあったドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォークが、チャトウィンの歩いた世界を辿るドキュメンタリー。
チャトウィンとゆかりのあった人々へのインタビューを交えながら、8章にわたって、ヘルツォーク監督自身のナレーションで綴られる。
第1章 ブロントサウルスの皮
第2章 魂の風景
第3章 歌とソングライン
第4章 放浪者という選択
第5章 世界の果てへの
第6章 チャトウィンのリュックサック
第7章 「コブラ・ヴェルデ」
第8章 本は閉じられた
幼い頃、祖母の家に飾られていた“ブロントサウルス”の毛皮に魅せられ先史時代や人類史に関心を抱いたチャトウィン。サザビーズの美術鑑定士や、サンディタイムズ紙でジャーナリストとして成功を収めても飽き足りず、最終的に選んだのは、旅をしながら小説を書く人生。南米を旅し、1978年に「パタゴニア」で作家デビュー。 その後、アボリジニの神話に魅せられ、中央オーストラリアへ。当時は不治の病だったHIVに感染し、死が近づいたアボリジニが生を受けた地に帰還するように、自らの死に方を探りながら「ソングライン」を書きあげました。
ヴェルナー・ヘルツォークは、1983年にメルボルンでチャトウィンと出会い、神話を心の旅とする彼を同志と感じ、親交が始まったのだそうです。
そのヘルツォークが自ら歩いて誘ってくれるチャトウィンの世界。人は大自然の中で、ほんとに小さな存在。だからこそ、いつかは迎える死にどう向き合って、自分らしく生きるかを模索することの大切さを教えてくれたような気がします。
本作は、54年の歴史に幕を下ろす岩波ホールで上映される最後の映画となります。
ジョージア映画祭の折に、何度も予告編を観て、これは大きな画面で観なければとそそられました。チャトウィンの観た、圧倒的な光景を岩波ホールで味わっていただければと思います。(咲)
『歩いて見た世界ブルース・チャトウィンの足跡』は、まさに私のツボの映画でした。
子供の頃から南米やアフリカ、動植物などに興味があったのですが、1970年に登山を始めた私にとって、ブルース・チャトウィンが初めて書いた『パタゴニア』(78)の頃は、一番山に行っていた時期なので、この本の情報を全然知らないということはないはずなのに、ブルース・チャトウィンという名前に記憶がありません。しかも世界のあちこちを放浪して本を書いた方で、パタゴニア、 アボリジニなど、興味の対象が似通っているのに、この映画で初めて彼のことを知りました。
冒頭にパタゴニア氷河が出てきましたが、私も2019年に行ってきました。氷河はたくさんあったので、どの氷河かはわかりませんでしたが、ドローンで上から氷河を撮った映像を初めてみました。氷河の上はあんな風に見えるのだなと、最初から映像に引き込まれました。私はピースボートの世界一周ツアーで2018年末~2019年4月初めまでの日程で行き南米を回ったのですが、2019年2月20日に訪ねたその時は、世界で一番南端の都市はアルゼンチンのウシュアイアでした。この映画を見て調べてみたら、2019年3月にチリのナバリノ島の都市プエルト・ウィリアムズが町から市になり、最南端の都市になったようなので、ヴェルナー・ヘツツォーク監督はその後に行ったのだなと思いました(笑)。
私自身はチャールズ・ダーウィンの「ビーグル号航海記」を中学校の頃に読んだのもひとつのきっかけで、世界を旅してみたいという夢を持ちました。このウシュアイアとナバリノ島の間を通っているのがビーグル水道で、かつてダーウィンはビーグル号でここを通ったのです。それでここにもぜひ行ってみたかったのです。この映画で、ここのことも出てきました。そして、ウシュアイアの博物館で原住民の写真を見ましたが、ヘツツォーク監督はプエルト・ウィリアムズの博物館で見たようなので、こちらにも博物館があるのだと思いました。
また、「歌とソングライン」では、アボリジニに始まるソングラインのことが語られていましたが、オーストラリアの先住民に受け継がれる“ソングライン”という思想/信仰に基づいたドキュメンタリー『大海原のソングライン』で、かつて同じ言葉や音楽で繋がっていた島々の歌を もう一度集結させる壮大な音楽プロジェクトが描かれていました。と、語りたいことがいっぱいあるので、あとはスタッフ日記の方に書こうと思います(暁)。
◆特集上映「ヴェルナー・ヘルツォーク・レトロスペクティブー極地への旅」
岩波ホールで6月4日より上映されているヴェルナー・ヘルツォーク監督作品『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』に関連して、異郷・辺境を旅してきた巨匠ヘルツォーク監督の日本未公開作品を含む計6作品の特集上映が行われます。
開催日時:7月13日(水)~7月18日(月・祝)
連日16:30から 岩波ホールにて
上映作品:
『ウォダベ 太陽の牧夫たち』
『彫刻家シュタイナーの大いなる陶酔』
『ガッシャーブルーム 輝ける山』
『生の証明』
『闇と沈黙の国』
『スフリエール』(30分)
詳細:https://www.iwanami-hall.com/topics/news/5253
2019年/イギリス=スコットランド=フランス/85分/ドキュメンタリー
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/brucechatwin
★2022年6月4日(土)~2022年7月29日(金)岩波ホールほか全国にて順次公開
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