監督:⻫加尚代
語り:井浦 新
プロデューサー:澤⽥隆三、奥⽥信幸
撮影:北川哲也
編集:新⼦博⾏
録⾳・照明:⼩宮かづき
朗読:河本光正、関岡 ⾹、古川圭⼦
軍国主義へと流れた戦前への反省から、戦後の教育は常に政治とは一線を画してきたが、昨今変わりつつある。2006年第一次安倍政権下で教育基本法は改変され、「愛国心」が戦後初めて盛り込まれた。以降、改革・教育の名の元に政治の教育への介入がじわじわと進んでいる。
2014年、大手教科書出版社が戦争加害の記述をきっかけに倒産に追い込まれた。その元編集者や、教科書の執筆者、歴史研究者たちへ取材、毎日放送(MBS)で「映像ʼ17 教育と愛国〜教科書でいま何が起きているのか」として放送され、反響を呼ぶ。2017年ギャラクシー賞受賞。追加取材、再構成して映画化された。
小学校の「どうとく」の授業の様子を紹介した次には、大戦中アメリカが「汝の敵日本を知れ」と作った映像が続きます。「同じように考える子どもの大量生産」をする日本の義務教育は、軍国少年少女を作りました。先生や大人を信じた子どもたちは、お国のために働き、たくさんがまんしました。大きくなったら兵隊に志願し、銃後を守り、敵艦に体当たりし、捕虜とならず散ることを誉れとしました。これで子どもは幸せだったでしょうか? 敗戦後の大きな反省から教育は変った、はずでした。
教育は誰のものでしょう? 教科書で子どもに伝えてほしいことは何ですか? あなたの子どもたちの未来がどんなものになると思いますか?
戦争の加害や被害を体験し、記憶している人たちが次第に減っていきます。みんないなくなってしまったら、また国民を駒に戦争をしたがる人たちが出てくるでしょう。「愛国」や「日本人の誇り」という言葉を都合良く使うはずです。そうならないように‟知ること”をこの映画から始めてみませんか。教科書は各地の教科書センターで閲覧することができます。(白)
ひとりの記者が見続けた“教育現場”に迫る危機
軍国主義へと向かった戦前教育の反省から、戦後教育では政治と常に一線を画してきたが、この流れが大きく変わってきた。2014年以降、「教育改革」「教育再生」の名のもと、力を増していく教科書検定制度。あからさまな政治介入ともいえる状況下で繰り広げられる出版社と執筆者の攻防が続く。じわじわと教育の現場に政治が介入し、教科書の書き換え、自己規制や自己検閲が行われ、政治圧力の結果であることが描かれる。慰安婦や沖縄戦を記述する教科書を採択した学校に押し寄せる大量の抗議ハガキ。これはどういう人たちが出しているのか、誰が出させているのか探る場面もある。慰安婦問題など加害の歴史を教える教師、研究する大学教授へのバッシング、さらには日本学術会議任命拒否問題など、健全な民主主義とは思えない状況が示される。
20年以上にわたって教育現場を取材してきた斉加尚代ディレクターが、教育はいったい誰のものなのか、「教育と政治」の関係を見つめながら最新の教育事情を取材した。こういう映画でもない限り、一般的には知らないでいる。いつの間にか、戦前のような状況が作られていることが明らかになる。そしてあったことをなかったことにしようとたくらんでいる人たちが教科書にも迫っている(暁)。
☆⻫加監督インタビューはこちら
2022年/⽇本/カラー/DCP/107分
配給・宣伝:きろくびと
©2022 映画「教育と愛国」製作委員会
公式サイト:mbs.jp/kyoiku-aikoku
★2022年5⽉13⽇(⾦)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、アップリンク吉祥寺ほかにて公開
5⽉14⽇(⼟)より⼤阪・第七劇術劇場 他全国順次公開
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