2022年05月01日

マイスモールランド

my small land 320.jpg
(C)2022「マイスモールランド」製作委員会

監督・脚本:川和田恵真
出演:嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴、アラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズほか

埼玉で暮らす17歳のクルド人の少女サーリャ。家族とともに故国を離れ、幼い頃から日本で学び、今は大学進学を目指している。母は亡くなり、父・マズルム、妹のアーリン、弟のロビンと4人暮らし。家ではクルド料理を食べ、食事前には必ずクルド語の祈りを捧げる。日本語のできないクルド人のために、時折通訳も買ってでる。
学費を貯めるために内緒で始めたバイト先のコンビニで、サーリャは東京の高校に通う聡太と出会う。聡太は、サーリャが初めて自分の生い立ちを話すことができる少年だった。
sub02_MSL_S#18_0168.jpg
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会
そんなある日、一家は出入国在留管理局から難民申請が不認定となり、在留資格取り消しを言い渡される。「仮放免」の状態になり、働くことも、県外に許可なく出ることもできなくなる。やがて、父・マズルムが入管の施設に収容されてしまう・・・

sub03_MSL_S#1_0682.jpg
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会
*イラン人のサヘル・ローズさん(左端)がクルド人役で出演

冒頭、公園で男女が手を繋いで踊り、結婚を祝うクルドの人たち。西イランや東トルコで、よく見かけた戸外で踊るクルドの人たちそのままの姿でした。蕨界隈には、いつしか迫害を逃れてトルコからきたクルドの人が多く住むようになりワラビスタンと呼ばれています。もう20年位前に、初めて蕨で暮らす難民申請中のクルドの人たちと何度かお会いしたことがあります。なかなか難民認定されない上に、県外に行く際には許可をもらわないといけないと聞いて、なんと理不尽なと思ったものです。今も、状況はあまり変わっていないのですが、この度のウクライナの人たちへの対応はちょっと違うことに、なんとなく差別を感じてしまいます。(ウクライナの人たちに難民認定しているわけではありませんが)

_MSL_making_川和田恵真監督.jpg
川和田恵真監督は、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する新鋭。1991年生まれ。2015年、ISISに立ち向かうクルドの女性たちの姿に衝撃を受け、日本にも難民申請中のクルドの人たちがいることを知ったことが本作の出発点。
映画の企画を立ち上げた2017年から2年かけて在日クルドの方たちを取材。リアルな物語を紡いでいます。難民申請中の方に出演していただくわけにいかず、在留資格を持つクルドの一家がサーリャの家族を演じています。
サーリャ役は嵐莉菜さんを抜擢。母は日本とドイツ、父はイラン、イラク、ロシアのミックスというマルチルーツ。クルド語とトルコ語の台詞も流暢にこなしています。2004年5月3日生まれ、埼玉県出身。「ミスiD2020」でグランプリ&ViVi賞のW受賞。2020年よりViViで専属モデルとして活躍中。本作が映画初出演にして初主演。
川和田恵真監督は父がイギリス人で母が日本人。先日、テレビ版が放映された後に登壇した監督自身もおっしゃっていたのですが、クルドの人たちから、よくクルド人と言われたそうです。監督自身が成長過程で感じたアイデンティティへの想いも込められた作品です。(咲)


クルド人はトルコやイラン、イラクなどの山岳地帯にまたがるように居住し、ペルシャ語系のクルド語を母語とする民族で、「国家を持たない世界最大の民族」と呼ばれている。恥ずかしながら、この作品を見るまでは「クルド人ってよく耳にするけれど、どこにある国の人なんだろう?」と何も知らなかった。そして国を追われて日本に来たクルド人が日本の政府からどのような扱いを受けているのかも。
サーリャたちは難民申請が不認定となり、出入国在留管理局から在留資格取り消しを言い渡されます。この状態を「仮放免」といい、働くことも、県外に許可なく出ることもできなくなりました。いったいどうやって食べていけばいいのでしょう。「霞でも食べていろ」とでも言っているかのよう。
サーリャが抱える問題はそれだけではありません。本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことをヤングケアラーといい、問題になっていますが、主人公のサーリャは家族だけでなく、近隣に住むクルド人みんなのヤングケアラーになっています。妹からは「やらなくてもいいのに」と言われますが、サーリャにはそんなことはできない。嵐莉菜が初出演、初出演とは思えない繊細な表情でサーリャが抱える苦悩の大きさを伝え、心が痛みました。嵐莉菜の今後の活躍が楽しみです。
(咲)さんが書いているように、川和田恵真監督は是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する新鋭。子どもには脚本を渡さずにリハーサル時に口伝えで教える是枝裕和監督の演出方法を踏襲したそう。サーリャの妹、弟の反応がリアルだったのも頷けました。(堀)


2022年/日本/114分/5.1ch/アメリカンビスタ/カラー/デジタル
企画:分福  
制作プロダクション:AOI Pro. 共同制作:NHK FILM-IN-EVOLUTION(日仏共同制作)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
製作:「マイスモールランド」製作委員会   
配給:バンダイナムコアーツ   
©︎2022「マイスモールランド」製作委員会
公式サイト:https://mysmallland.jp/
★2022年5月6日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開  


 
posted by sakiko at 19:28| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください