2022年05月01日

死刑にいたる病

sikei pos.jpg

監督:白石和彌
原作:櫛木理宇「死刑にいたる病」(ハヤカワ文庫刊)
脚本:高田亮
撮影:池田直矢
音楽:大間々昂
出演:阿部サダヲ(榛村大和)、岡田健史(筧井雅也)、岩田剛典(金山一輝)、中山美穂(筧井衿子)

希望通りの大学に進めず、鬱屈した日々を送る大学生・雅也のもとに届いた一通の手紙。
それは世間を震撼させた稀代の連続殺人鬼・榛村(はいむら)からだった。24件もの殺人容疑で逮捕され、すでに死刑判決が出ている。雅也が中学生の頃通っていたパン屋の店主だった榛村の頼みは「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人が他にいることを証明してほしい」。榛村に面会した雅也は願いを聞き入れ、 事件を独自に調べ始める。次第に想像を超える残酷な事件が明らかになっていく。その真相とは―。

感じのいい、にっこり笑う人の裏側がこれだったら、そのギャップがとてつもなく恐ろしいです。内側の深い闇は外ににじみ出て来ないものでしょうか。私もあっさり騙されそう(おばちゃん・おばーちゃんはターゲットじゃありませんが)。
原作を読んで震えた方、脚本と監督の腕前をご覧あれ。阿部サダヲさん演じる榛村が獲物の中学生たちの心にするりと入っていくところ、雅也の心の隙間を読み取って翻弄し核心をついてみせるところ。岡田健史さん演じていて怖くなかったでしょうか?その雅也も榛村に会い、自分なりの調査を始めてから、気持ちが充実するとともに自分の中にある暴力性に気づきます。目に見えるものはほんのわずかなんですね。
自分で自分がわからないのが、考えてみれば一番怖いことかもしれません。
雅也の強権的な父、何も決められない母、この両親に育てられた雅也が榛村に認められ励まされたなら…わー。(白)


岩田剛典や中山美穂がこんなに自信なさげにおどおどした役を演じたことがこれまでにあったでしょうか。白石和彌監督はキャストからイメージとは全く別の側面を引き出す手腕が魅力ですが、本作でもそれを遺憾なく発揮。特に岩田剛典は最初に出てきたときは岩田剛典と気が付かないくらいに見た目も別人でした。そして、何といっても主演の阿部サダヲ。とんでもないシリアルキラーを力むことなくさらりと演じることで、リアルに存在しそうな怖さを観るものに感じさせます。
白石和彌監督作品の魅力はキャストだけではありません。技術スタッフのこだわりが随所に光ります。美術を担当する今村力はこれまですべての作品に関わり、作品のクオリティ管理の役割を担っていると以前、白石監督がインタビューで語ってくれましたが、本作では榛村大和の家にそれが表れています。ロケーションハンティングだけでなく、そこに建てた拷問部屋は大きさから内装までこだわりぬいたものが作られました。ここで撮影することによって榛村大和の不気味さが際立ちました。細部までこだわった作りをじっくりとご覧ください。ますます怖さが増してくることでしょう。(堀)


2021年/日本/カラー/シネスコ/128分
配給:クロックワークス
(C)2022映画「死刑にいたる病」製作委員会
https://siy-movie.com/
★2022年5月6日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 17:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください