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製作・監督・主演:ダニーラ・コズロフスキー
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー
出演:オクサナ・アキンシナ、フィリップ・アヴデエフ
1986年4月26日、当時ソ連邦だったウクライナのプリピャチにあるチェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故。未曾有の大惨事は、のちに超大国のソ連が崩壊した一因になったとも言われ、数多くの映画が作られてきました。
本作は、事故発生当時、現地で撮影した経験を持つプロデューサーが、爆発直後に現場に急行した消防士たちの苦闘や避難民たちの混乱ぶりなど、一般市民の視点から描いたフィクション。
若き消防士アレクセイ(ダニーラ・コズロフスキー)は、別れた元恋人オリガ(オクサナ・アキンシナ)と10年ぶりに再会する。美容師として働きながら女手一つで10歳の息子を育てていて、その父親が自分だと知ったアレクセイは、彼女とともに人生を歩もうと決意する。そんな矢先、地元のチェルノブイリ原発で爆発事故が起こる。
事故対策会議で、爆発した4号炉から溶け出した核燃料が、炉の真下にある貯水タンクに達すると大規模な水蒸気爆発が発生し、ヨーロッパ全土が汚染される大量の放射性物質がまきちらされると聞かされる。回避する唯一の手段は、貯水タンクの排水弁を手動で開くこと。命がけの作業に、アレクセイは一度は辞退するが、被爆したわが子にスイスでの治療を受けさせることを条件に、水蒸気爆発を阻止するための決死隊に志願する・・・
アレクセイたち決死隊が、防護服をまとって、地下にある排水バルブをめざしていく姿に、見ている私も息が詰まりそうになりました。
チェルノブイリ原発事故を描いた映画の中では、ミハル・ボガニム監督の『故郷よ』(2013年2月9日に日本公開。2011年の東京国際映画祭では『失われた大地』のタイトルで上映)が特に印象に残っています。
事故の日に結婚式を挙げた若い二人。披露宴の最中、新郎ピョートルは自衛消防団から火災発生で呼び出され、人間原子炉と化して面会もできないままに逝ってしまうという物語でした。
チェルノブイリ原発は、今も危険をはらんだまま、ソ連の負の遺産としてウクライナの地に放置されています。
ソ連崩壊後、ウクライナは独立を果たしたものの、ずっとロシアの脅威にさらされてきました。2014年のクリミア半島併合で表面化し、しばらく世界は忘れていましたが、この2月末に大規模な軍事侵攻が始まり、戦地と化してしまいました。
ロシア制裁の意味から、ロシア映画である本作公開についても様々な意見があるようです。でも、こんな今だからこそ、注目するべき映画だと思います。なにより、プロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキー氏はウクライナ人。製作・監督で、主演も務めたダニーラ・コズロフスキー氏は、ロシア人ですが、インスタグラムで戦争反対を表明しています。
公式サイトにある「本作の公開について」をぜひお読みください。
プロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキー氏の言葉より:
私は、ソ連政府がアフガン戦争の絶対的な必要性をどのように説明したかをよく覚えている。そして、それが悲劇的な間違いであったと認めるまでに、10年の歳月と1万5千人のソ連兵、100万人近いアフガニスタン人の犠牲を要したことも記憶している。
今日、ベトナム、イラク、アフガニスタンでの自国の戦争に言い訳を見いだせるアメリカ人はほとんどいない。
そして、この戦争も悲劇的な間違いである。
ウクライナへの軍事支援や、ロシアへの経済制裁ではなく、もっと平和な解決方法はないのでしょうか・・・ (咲)
2020年/ロシア/ロシア語/136分/シネスコ/5.1ch
字幕翻訳:平井かおり 字幕監修:市谷恵子
配給:ツイン
公式サイト:https://chernobyl1986-movie.com/
★2022年5月6日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー