2022年03月31日
今はちょっと、ついてないだけ
監督・脚本:柴山健次
原作:伊吹有喜「今はちょっと、ついてないだけ」(光文社文庫刊)
撮影:篠田力
音楽:小川明夏
出演:玉山鉄二(立花浩樹)、深川麻衣(瀬戸寛子)、音尾琢真(宮川良和)、団長安田(会田健)、髙橋和也(牧島雅人)、かとうかず子(母)
かつては秘境を旅する番組で人気だったカメラマンの立花浩樹は、バブル崩壊後に借金を追って表舞台から姿を消した。久しくカメラも持たずに働いていたある日、母から友達の写真を撮ってと頼まれる。テレビマンの宮川の母親だった。スマホで撮影した写真をフォトブックにして贈った後、亡くなってしまう。再会した宮川は仕事も家庭も失っていた。浩樹は泥酔した宮川を自分が住んでいるシェアハウスに連れて帰る。
シェアハウスには、美容師の瀬戸寛子が浩樹より先に住んでいた。お客とのコミュニケーションが苦手で、リストラされて仕事先を探している。宮川が来て賑やかになったシェアハウスで、浩樹はまた写真を撮り始めた。寛子は撮影前の女性にメイクしておおいに喜ばれ、自分のできることがあると気がつく。
上にあげた3人のほか、再起を図る芸人の会田健が加わります。この4人はみな、何かをなくして失意の底にあります。1人だとどっちにも踏み出せない不器用な大人たちですが、シェアハウスという場を得ることでちょっぴり変化が訪れます。1人2人と増えていくにつれ、ゆっくりと良い方向に作用するんですね。丁寧に淹れた珈琲を飲んだ人はみな、険しい表情だったのがほどけてふんわりと優しくなりました。美味しいものはいいですねぇ。私もシェアハウスで珈琲ごちそうになりたい。
浩樹が撮影のために足を運ぶ自然の風景、牧島を訪ねて降りる駅などロケーションが素敵です。調べたらあの駅は実在していました。
タイトルは、浩樹の母が息子に向かってかけた言葉です。責めるのではなく、頑張れでもなく、「今はちょっと、ついてないだけ」と言われたら、どんなに心が軽くなるでしょう。お母さんエライ!(白)
かつては脚光を浴びる仕事をしていたこともあるのに、思うようにいかない人生・・・ 「今はちょっと、ついてないだけ」と思えば、気が楽になりますよね。ほんと、この言葉を放ったお母さん、肝が座っててエライ!
この面白いタイトルの映画が、「地域連携による映画作り」で出来たもので、千葉県茂原市、長野県千曲市、愛知県幸田町、長崎県島原市が共同製作事業体。島原と千曲が特に気になって観てみました。
千曲市というと千曲川がまず思い浮かびますが、本作では、棚田の風景が圧巻でした。
大自然に囲まれた北竜湖で漕ぐカヌーも気持ちよさそうでした。
一番気になっていた島原では、水路のある城下町は残念ながら出てきませんでしたが、タクシーの窓の外に島原城の優雅な姿が映っていました。なにより、(白)さんが実在するのを検索した大三東駅が素敵です。有明海沿いを走る島原鉄道の駅で、ホームのすぐ向こうが海。行ってみたい!と思ったら、実は島原に行った時に通っているのです。覚えていなくて悲しいです。また行かなくちゃ。(咲)
2022年/日本/カラー/シネスコ/128分
配給:ギャガ
(C)2022映画「今はちょっと、ついてないだけ」製作委員会
https://gaga.ne.jp/ima-tsui/
★2022年4月8日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
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