2022年03月19日
ベルファスト 原題:Belfast.
製作・監督・脚本:ケネス・ブラナー
出演:カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル、ルイス・マカスキー
イギリス・北アイルランドの首府ベルファスト。
9歳の少年バディは、生まれ育ったこの町で、家族や友人たちと映画や音楽を楽しみ、充実した毎日をおくっていた。唯一寂しいのは、建具工の父がロンドンに出稼ぎに行っていて、2週間に1度しか帰ってこないことだった。
1969年8月15日の午後、通りで遊んでいたバディは、突然暴徒たちの一団に巻き込まれる。プロテスタントの暴徒が、街のカトリックの住民たちを攻撃し始めたのだ。これまで、街区の住民たちは、宗派の区別なく一つの家族のように暮らしていたのに、この日を境に分断し、暴力が横行する。折しも、父が帰宅し、ロンドンで良い仕事を見つけ、家も用意してくれるという。バディは住み慣れたベルファストを離れたくない。何より、大好きなお祖母ちゃんを置いてはいけない・・・
ベルファスト出身のケネス・ブラナー(製作・監督・脚本)の幼少期の経験をもとにした自伝的作品。子ども心に、それまで仲良く暮らしていた人たちが、突然、対立して暴力まで振るうようになったのを目の当たりにした記憶は忘れられないものでしょう。でも、それ以上に感じるのは、故郷への愛。
監督自身を投影した少年バディを演じたジュード・ヒル君は、本作が映画初出演。自然体の演技に唸りました。暴徒に巻き込まれ、雑貨店で何か盗めと言われるまま、「環境にやさしい」と書かれた洗剤を手に家に帰り、母親に怒られてべそをかくバディの可愛いこと!
暴動が激しくなり、ついに一家がロンドンに引っ越す日、パパが花を用意してくれて、バディは大好きな女の子に別れを告げにいきます。パパに、「将来、彼女と結婚できるかな? あの子はカトリックだけど」と聞くと、パパは「カトリックでもヒンドゥーでも結婚できるよ」と答えます。なんて素敵なパパでしょう!
ケネス・ブラナーが生まれ故郷ベルファストへの思いを込めて作り上げた物語。
役者の出身地にもこだわってキャスティングしています。少年バディ役のジュード・ヒルは北アイルランド出身。父さん役ジェイミー・ドーナンとじいちゃん役キアラン・ハインズはベルファスト出身。母さん役カトリーナ・バルフはアイルランド、ダブリン出身。ばあちゃん役のジュディ・デンチも、母親がダブリン出身でアイルランドの血が流れています。
冒頭と最後にカラーで現在のベルファストの町が映し出されます。造船所のある大きな港町。少年時代の物語は、モノクロで描かれていて郷愁を誘います。
父親の仕事の都合で、故郷を離れざるをえなかったのは、私も同じ。15歳の時に生まれ育った神戸から東京に移り、もう東京での年数が圧倒的に長いのに、今なお神戸への思いが強いです。ケネス・ブラナーが、いつか故郷ベルファストを舞台に映画を作りたかったという気持ちが、しみじみと伝わってきました。(咲)
2021年/イギリス/英語/98分/ビスタサイズ/モノクロ・カラー/5.1ch
日本語字幕:牧野琴子、字幕監修:佐藤泰人(東洋大学・日本アイルランド協会)
配給:パルコ ユニバーサル映画
公式サイト:https://belfast-movie.com/
★2022年3月25日(金)全国ロードショー
☆3月18日(金)よりTOHOシネマズシャンテ・TOHOシネマズ梅田にて先行公開
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