2022年03月19日

ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~

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(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん」製作委員会

監督・撮影・語り:信友直子
プロデューサー:濱潤 大島新 堀治樹
制作プロデューサー:稲葉友紀子>
撮影:南幸男 河合輝久
音響効果:金田智子
ライン編集:池田聡
整音:富永憲一

前作『ぼけますから、よろしくお願いします。』(2018年)で、認知症になり家事のできなくなっていく母と、慣れない家事を引き受け母を支える父の姿を追った、一人娘である信友監督。その後も、折に触れ、呉の実家に帰り両親の姿を撮り続けた。
父は家事全般を取り仕切れるまでになり日々奮闘しているが、母の認知症はさらに進み、脳梗塞を発症し入院する。父は手押し車を押して、毎日1時間かけて病院に面会に行き母を励まし続けた。いつか母が家に帰ってくる日のためにと、父は98歳にして筋トレを始める。だが、母の症状は悪化。2020年春、新型コロナ感染拡大で、病院の面会すら困難な中、ついに母の最期の日々を見守るときがくる・・・

認知症にかかり始めたころ、「ぼけますから、よろしくお願いします」の名言を残したお母さん。症状が進み、だんだん人格が変わっていく様に、やはり認知症にかかった私の母の姿を重ねました。そして、ついに迎える最期の瞬間。涙が止まりませんでした。お父さんが放った感謝の言葉にも涙でした。誰しもが経験する肉親の死。その前には、介護や自分自身の老いとも向き合わなければいけないことを、ずっしり感じさせてくれました。うらやましいのは、ご両親の日々の何気なく暮らす姿が映像として残っていること。でも、お蔭様で記憶の中の母の姿が蘇りました。
コロナ禍にもかかわらず、お母様の最期の日々の面会と撮影を許されたのは、1作目で呉の町では信友一家の存在が知れ渡っていたからと信友監督がインタビューの折に語ってくださいました。私も母に先立たれ、現在99歳の父と暮らしているという同じような境遇に、ついつい話が脱線したインタビューを(白)さんが雑談を綺麗にはぶいてまとめてくれました。ぜひお読みください。(咲)

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続編を心待ちにしていました。今回は肉親だからこそ撮れたご両親の映像に加えて、プロのカメラマンが撮った映像があります。どちらもかけがえのないもので、(咲)さんと同じく自分の両親を重ねて観てしまいました。冒頭のお2人が並んだ姿にもう目がうるみます。
しっかり者のお母さんは認知症になって、これまでになくお父さんに甘えられたんじゃないでしょうか。お父さんはお母さんの不安を受け止めつつ、前向きに過ごします。慣れない家事を始めたお父さんが、お母さんの手順をそのまま再現しているのにびっくりしました。飾らない映像に、ご両親が一人娘の監督を撮影者としても信頼していること、信友監督もご両親を大切に大切に想っていることが端々から伝わります。帰宅して久しぶりに実家の母へハガキを書きました。もう高齢なのにしばらく会えていません。
信友監督に取材して、その明るくめげない率直なお人柄に触れることもできました。(咲)さんと2人のどんな質問にも丁寧に答えてくださって、長くなりましたがほぼそのまま書き起こしています。おばちゃんのお喋りの常で、話があちこちへと飛びますがどうぞその輪の中にお入りくださいませ。(白)

介護を経験したことがある方はきっとご自身の経験を思い出し、ぐっとくるものがあるのでしょう。(咲)さん、(白)さんのコメントを読んでいるとそれを感じます。
幸いなことに介護の経験のない私は監督に共感するよりも、お母さんの姿に何年か先の自分の姿を想像して重ねてしまいます。「ボケますから、よろしくお願いします」と自分を受け入れることができるとは思えず、正直、とっても不安。
しかし、認知症をテーマにした作品によくあるような修羅場はこの作品にはほとんど出てきません。ありのままのお母さんを受け止め、前向きに支えるお父さんの優しさを娘が愛情深く映し出します。認知症が進行していくお母さんのドキュメンタリー作品ではなく、妻がどんな状況になってもひたすらに慈しむ夫の愛情物語に思えてきました。私もこんな風に愛されたい。それには私も夫を労わらないといけないですね。(堀)


信友監督インタビューの時に私も一緒に行きたかったのですが、その時はまだ映画を観ていなくて、監督にインタビューする日に試写を観る予定でした。でもそれもかなわず、もっとあとになってこの作品を観ました。
私の母も80歳の頃、脳梗塞で倒れ、さらにその症状も監督のお母さんと同じで左側麻痺ということもあり、映画を観ながら、そうそうとうなずいていました。そして、私の母は文子さんとは逆に脳梗塞のあと認知症になりました。そして約6年の介護、入院生活。一人1人の経験はそれぞれだけど、同じような経験、症状があるのだと、他の人の姿を見てわかりました。そういう意味では映像で残っているというのはわかりやすいと思いました。そして、この映像を観て、こういう風にもできた、ああいう風にもできたと後悔しました。でも、親が病気になったり、自分が病気になったり、そんなに数多くなるわけではないから、どういう判断で病院にかかるか、医者からの提案にどのように対応したらいいのか、そう何度もあることではないので、やはりその場にならないとわからないですよね。そういう意味では、このところ、年を取ることによる状況がわかるドキュメンタリーがけっこうあって、自分の時はどうするのが一番いいのだろうという参考になりました。それにしても信友監督のお母さんとお父さんのキャラクター、観ていてとても気持ちが明るくなります。私もこういう風に生きていけたらいいな(暁)。


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◆信友直子監督インタビューはこちらです。


◆ポレポレ東中野でのイベント情報◆
3/19(土)
10:00の回上映後&12:30の回上映後
初日舞台挨拶<登壇> 信友直子監督

3/20(日)
10:00の回上映後&12:30の回上映後
舞台挨拶<登壇> 信友直子監督

3/23(水)
12:30の回上映後
トークベント<登壇> 信友直子監督 × 大島新(本作プロデューサー/『香川1区』監督)

3/27(日)
13:30の回上映後
舞台挨拶<登壇> 信友直子監督


☆『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』先行公開に合わせて、スペシャルトークイベント開催

トーク約60分+参考上映「ザ・ノンフィクション おっぱいと東京タワー ~私の乳がん日記~」(2009年/45分)

3/19(土)15:00より
信友直子 × 西村陽次郎(フジテレビ「ザ・ノンフィクション」現CP) × 濱潤(「ぼけますから」シリーズプロデューサー)

3/20(日)17:10より
信友直子 × 味谷和哉(フジテレビ「ザ・ノンフィクション」元CP)

【参考上映作品】
「ザ・ノンフィクション おっぱいと東京タワー ~私の乳がん日記~」(2009年/45分)
<ディレクター>信友直子 <語り>石田ひかり <CP>味谷和哉
40代の独身テレビディレクターを襲った、3年連続の不幸。43歳で子宮筋腫のため子宮摘出。44歳で列車事故に遭い骨盤骨折。そして45歳で告知された乳がん。死すら覚悟したこれらの経験は、彼女の心に想像もしなかった変化をもたらした…。

2022年/日本/ドキュメンタリー/101分/2.0ch
製作プロダクション:スタッフラビ

製作:フジテレビ、ネツゲン、関西テレビ、信友家
配給:アンプラグド
公式サイト:https://bokemasu.com/
★2022年3月25日(金)より全国順次公開
☆2022年3月19日(土)よりポレポレ東中野にて先行公開

posted by sakiko at 03:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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