2022年03月19日

オートクチュール(原題:Haute couture)

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監督・脚本:シルヴィー・オハヨン
撮影:ジョルジュ・ルシャプトワ
美術:マリー・シュミナル
衣装 :シャルロット・ブタイヨル
ディオール衣裳アドバイザー:ジュスティーヌ・ヴィヴィアン
出演:ナタリー・バイ(エステル)、リナ・クードリ(ジャド)、パスカル・アルビロ(カトリーヌ)、クロード・ペロン(アンドレ)、ソマヤ・ボークム(スアド)、アダム・ベッサ(アデル)、クロチルド・クロ(ミュミュ)

クリスチャン・ディオールのアトリエで責任者として働くエステルは、全てをささげてきたこの職場からもうじき去らねばならない。キャリア最後のコレクションを控えたある朝、弾き語りをする女の子を見ていてハンドバッグをひったくられてしまう。バッグを盗んだのは郊外の団地に住むジャドとスアド。移民2世の彼女たちにはまともな仕事もなく、金目のものを盗んでは小遣い稼ぎをしていた。バッグの中にユダヤの星のネックレスがあったことから、呪われないようにとスアドに勧められて返すことにする。
エステルを待ち伏せしてバッグを返したのが縁で、ジャドはエステルに誘われてアトリエを訪ねる。エステルにはジャドの指が美しいものを作るという直感があった。お針子の見習いになって初めて、ジャドは自分のしたいことを考える。エステルのアトリエはジャドにとって初めての大人社会、エステルに反発しながらも、技術のほか言葉遣いやマナーなどを身につけていく。

冒頭のジャドとスアドの盗みの手際の良さと、罪悪感のなさに驚きました。持ってる者から持たない者がちょっともらうだけ、という感じです。それでいて教会で祈りもすれば、ベッドで食べるかテレビを見るかだけの母親の面倒も見ます。詐病感ありありですが、ジャドの幼いころから親子の立場が逆転しているようです。
誇り高く厳格なエステルをナタリー・バイ。仕事にのめり込みすぎて娘が出ていってしまい孤独です。バスの若者との会話に口あんぐりでした。結構失礼です。自分より下と思った相手に何を言ってもいいわけ?品格はどこに? ジャドも気の強さでは負けていなくて、エステルに遠慮なく文句を言います。どこか似ている2人の周りには、とっても個性的な人たちがいて、きつい空気を和らげています。
窓からの光が美しいディオールのアトリエはセットですが、本物のお針子さんたちも出演しています。ふんだんに登場するデザイン画やドレスなども本物のディオール製。アトリエシーンの俳優さんたちは、撮影前にお裁縫の特訓をしたそうですが、そこは名女優のナタリー・バイ。ベテランの動きは、アドバイザーのジュスティーヌ・ヴィヴィアンお墨付きだったそうです。ジャドに意地悪をする先輩の「大変な人生」が何か気になります。お針子さんが首から下げているお裁縫道具を入れたポシェットが可愛くて便利そうで、作ってみようかな。(白)


普段は見ることがない世界的なブランドの世界。唯一無二のドレスを完成させるため、多くの人々が関わり、みなが細心の注意を払います。こんなに繊細な作業だとは知らず、びっくり。香水係という役割があるのですが、何をする人なのかは作品をご覧になってください。ファストファッションの製造現場との違いに唖然となります。価格の違いと言えばそれまでですが、働く者に対する待遇は意欲にも繋がります。そんな社会格差だけでなく、母と娘の確執、ヤングケアラーなど現代社会が抱えるさまざまな問題がディオールという華やかな世界を舞台にうまく織り込まれています。
ジャドを演じたリナ・クードリは『GAGARINE ガガーリン』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』と今年になって出演作の公開が続きます。今後の成長が楽しみです。(堀)


2021年/フランス/カラー/シネスコ/100分
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
(C)2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR
https://hautecouture-movie.com/
★2022年3月25日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、 Bunkamura ル・シネマほか全国公開

posted by shiraishi at 01:37| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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