2022年03月19日
吟ずる者たち
監督・脚本:油谷誠至
脚本:仁瀬由深、安井国穂
音楽:南方裕里衣
出演:比嘉愛未、戸田菜穂、渋谷天外、ひろみどり、大森ヒロシ、山口良一、今井れん、中尾暢樹、中村久美、奥村知史、川上麻衣子/ 丘みつ子/大和田 獏 中村俊介
永峯明日香(比嘉愛未)は東京で仕事と恋人に別れ、故郷広島へ戻った。実家は三浦仙三郎(中村俊介)の杜氏の末裔が継いだ酒蔵。養女である明日香は、幼き頃から酒造りに興味を持っていたものの、実家を継ぐことはそぐわないと避けて生きてきた。目標を見失っていた明日香は父・亮治(大和田 獏)が「家宝」とする三浦仙三郎の手記を目にする。
明治初期、新米酒造家の三浦仙三郎は、醸造中に中の酒が腐る「腐造」に何度も見舞われる。資金不足、両親、愛する養女の死。逆境の中、腐造を起こさない、安定した日本酒醸造技術の確立に研鑽を重ね、ついに軟水による低温醸造法を導き出す。明日香は仙三郎の百回試して、千回改める〔百試千改〕の想いに強く惹かれる。
三浦仙三郎の手記を読んだ明日香は、自分の進む道をやっと見つけます。道に迷った人は原点に立ち返って見たら、という見本のような展開でした。本作では、現代と明治初期の酒造りのようすが交互に描かれ、今があるのは先人の苦労の賜というのがよくわかるうえ、明治時代の酒蔵や、働く杜氏たちや蔵元の暮らしなどが見比べられて興味深いです。どうしても明治のパートの印象が強くなりますが、現代パートでは女性が研究や杜氏の仲間入りをしています。
仙三郎が酒造りを始めた明治初期は、今と違って情報収集も簡単ではなく、成功している酒蔵や研究者に教えを乞うくらいしかありません。新しいことを始めると莫大な資金が必要でおまけに反発はつきもの。杜氏たちにそっぽを向かれながらもコツコツと研究していきます。酒どころの灘(なだ)へ行き、杜氏に交じって働くこともしています。〔百試千改〕の覚悟のもと、多くの人の努力と協力で美味しい吟醸酒の完成させ、しかも方法を公開し杜氏の養成にも力を尽くしたというのが立派です。
なんだか似たような話が…『めんたいぴりり』(2019)でした。辛子明太子を作った「ふくや」さんもやはり製法を公開して博多の名物にしたのでした。
広島発の映画を全国の映画館へ届けるために、製作の方々はコロナ禍もあって大変だったようすです。祝!公開!(白)
2021年/日本/カラー/115分
配給:ヴァンブック
(C)2021ヴァンブック
https://ginzuru.com/
★2022年3月25日(金)ロードショー
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