2022年02月22日
牛久
監督・撮影・編集:アッシュ・トーマス
茨城県牛久市にある“東日本入国管理センター”、通称「牛久」。
全国に17カ所ある“不法滞在者”を強制的に収容している施設の一つ。在留資格のない人、更新が認められず国外退去を命じられた外国人が“不法滞在者”として収容されている。紛争などにより出身国に帰れず、難民申請をしている人も多くいる。
本作は、トーマス・アッシュ監督が当事者達の了解を得て、面会室で彼らの訴える言葉を“隠し撮り”で記録したものである。
トルコのクルド人デニズ。国に帰れば殺されると難民申請しているが認められない。
カメルーン出身のルイス。中央アフリカでのクーデターで家族を失い、2002年に日本へ。難民申請が認められないまま月日が経った。
LGBTQのナオミ。男性しか収容されない牛久で居心地が悪い。ハンガーストライキして仮放免。
そのほか、クラウディオ、C(シー)、ニコラス、アリー、ピーター。
それぞれの語る日本の入管の厳しい現実・・・
監督のアッシュ・トーマスは、もともとボランティアとして牛久の東日本入国管理センターを訪れ、収容されている人たちの話を聞いていて、彼らの言葉を映画の力で、日本の市民や世界に伝えることができないだろうかと考えるようになったとのことです。
隠し撮りの動画は、見ていて、ちょっと息苦しくもなります。でも、それが収容されている人たちの現実そのものなのだと感じました。
アッシュ・トーマス監督が、仮放免されたアリーを食事に誘う場面がありました。大宮のシュルーというペルシャ料理のお店で、2020年5月に残念ながらコロナに負けて閉店してしまったイラン人のカミさんが経営していたお店でした。彼はお店を辞めても奥様が日本人だし、すでに在留資格を持っているのかなぁ~と、ふと思いました。
外国籍の人が婚姻により在留資格を得たものの、日本人や日本の在留資格を持つ配偶者と死別や離別すると、在留資格を失うという現実があります。私の知人で、離婚して在留資格を失い、入管に相談に行ったところ、「またいい子見つけて結婚すれば」と言われ、悔しいので起業して在留資格を得た人がいます。日本で暮らしたいという人に、どうして、こうも冷たいのでしょう。しかも、国に帰れば身の危険があると申告している人のことを、どうして信じてあげないのでしょう。スリランカ出身女性・ウィシュマさんが入管に収容中に亡くなられたことは、日本国家として恥ずべきこと。二度とこんな不祥事を起こさないようにしてほしいものです。そして、在留希望者にもっと柔軟な対応をしてくれることを願うばかりです。(咲)
国内外から批判が出ているのに、入管はなぜこうも変わらないのでしょう。刑務所のほうがましでは?と思えてきます。外国から命からがら逃げてきた人たちや、夢や希望を持ってやって来た人たちが、人として尊重されていません。収容所で長い間閉じ込められるのはなぜ?一定期間外に出られても、働くことはできずその間どうやって生きていけと?人手がほしい人と働きたい人を結ぶことができないのは、どこが滞っているのでしょう?収容所で無為に過ごすより、日本語や生活習慣をレクチャーするとか、出てからの暮らしが成り立つように援助することはできないのでしょうか。制服姿の職員が羽交い絞めにして、押さえつける姿に愕然としました。
久しぶりに試写室で観られた作品がこの『牛久』で、これはたまたま日の目があたっただけで、お役所だから全国似たような状況なのだろう、と、どんよりして家路に着きました。映像で知らせてくださったアッシュ・トーマス監督には感謝。(白)
試写後にトーマス・アッシュ監督とクルド人デニズさんが登壇して、話をされました。デニズさんはとりあえず牛久の東日本入国管理センターを出ることができたよう。作品のときよりも日本語が格段にうまくなっていて、今の状況や思いを語っていました。
そこで知ったのが、センターを出ることはできても働くことは許されていないということ。かといって、生活費が支給されているわけではありません。いったいどうやって生活しろというのでしょうか。「霞を食べて生きていけるって本気で思っている?」と入管の方に聞いてみたくなりました。(堀)
2021年/日本/87分/DCP/16:9
配給:太秦
公式サイト:https://www.ushikufilm.com/
★2022年2月26日(土)より、東京:シアター・イメージフォーラム、茨城:MOVIXつくば他、全国順次公開
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