2022年02月12日

リング・ワンダリング

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監督:金子雅和
脚本:金子雅和 吉村元希
撮影:古屋幸一
音楽:富山優子
美術:部谷 京子
劇中漫画:森泉岳土
出演:笠松将(間草介)、阿部純子(川内ミドリ/梢)、安田顕(川内青一)、片岡礼子(川内藍子)、品川徹(川内黄太)、田中要次(塩屋)、長谷川初範(銀三)

東京の下町。猟師とニホンオオカミを題材に漫画を描いている草介、なかなか思うように描けず筆が止まっている。絶滅してしまった種のため、モデルを見ることも叶わない。スケッチに出かけた山で出逢った少年は「オオカミはまだいる」と不思議なことを言う。バイト先の工事現場で、古びた動物の骨を見つけて、こっそり持って帰った。夜になってまた出かけた現場で、飼い犬のシロを探している娘・ミドリと出逢う。足を痛めて歩けない彼女をおぶって家まで送ることになった。鳥居をくぐって進み、着いたのは家族で営んでいるという古い写真館。ミドリや家族との会話は草介とどこかかみ合わないが、暖かいひと時を過ごした。

現代の草介の生活と、ミドリと家族が住むいつかの東京の物語を繋ぐのは、草介が描いたシロの絵と古いカメラを持った少年。もうひとつは草介が製作中の漫画の猟師銀三が住む世界。森泉岳士さんの絵と、その実写版が、うまく配されています。
オオカミの絵に苦労する草介は笠松将さん。漫画は遅々として進まず、ぼんやりしてバイト先の工事現場ではベテラン作業員によく邪険にされています。ミドリは阿部純子さん。中原淳一の抒情画に住んでいる女の子はこんな雰囲気です。
ミドリの家族と草介が囲む丸いちゃぶ台、お父さんがまず箸をとってつつく鍋。草介を送るミドリを見る両親、小さな積み重ねがかつてあった世界を優しく、忘れられないものにしています。ラストの画面に、あっ!となりますよ。お楽しみに。(白)


★タイトルの「リング・ワンダリング」とは登山用語で、人が方向感覚を失って無意識の内に円を描くように同一地点を彷徨い歩く現象のこと。
ドイツ語(独: Ringwanderung)で「環形循環」という意味がある。

◆第52回インド国際映画祭(ゴア)金孔雀賞グランプリ受賞
◆第37回ワルシャワ国際映画祭 エキュメニカル賞スペシャルメンション受賞
◆第22回東京フィルメックス メイドインジャパン部門 正式上映

2021年/日本/カラー/1:185/DCP/103分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)2021 リング・ワンダリング製作委員会
https://ringwandering.com/
★2022年2月19日(土)よりイメージフォーラムを皮切りに全国順次公開!

初日舞台挨拶
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阿部純子、笠松将、金子雅和監督

金子監督「東京生まれの東京育ちなので、一度は東京を舞台にした映画を作りたいと思っていました。ちょうど東京オリンピックに向かって東京が新しく開発され、変わっていく時期で、その地面の下に埋もれた記憶や命があるんじゃないか? と着想しました」

笠松「草介という役は、基本的に僕でした。漫画を描いてるけどうまくいかないし、探し物も見つからない――結構、自分と近くて、無理なく等身大でやれました。当時僕は仕事(俳優)が自分には向いてないと思って、この作品を最後にやめようと思っていました。だからこの作品を一生懸命やりたかった。がむしゃらにやっていたころの作品です」

阿部「笠松さんはチームを引っ張ってくれる存在でした。私を背負って石段を何度も上り下りしても弱音を吐かず、この映画も、私も背負ってくれました」

笠松「2年前僕自身も、もしかしたら、すごく大きな夢の中にいたのかもしれないけど、僕の精一杯は届かないと思ってました。でも2年経って、こうやってたくさんの人に観てもらえました。これからもっともっとたくさんの人に観てもらえるように、僕もならないといけない。いい映画に出会えて、こういう機会をいただけてお会いできたことがすごく嬉しいです。いい時間だなと思えて幸せです。ありがとうございます」

posted by shiraishi at 23:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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