2022年02月12日
マヤの秘密(原題:The Secrets We Keep)
監督・脚本:ユヴァル・アドラー
撮影:コーリャ・ブラント
音楽:ジョン・パエサーノ
出演:ノオミ・ラパス(マヤ)、ジョエル・キナマン(トーマス)、クリス・メッシーナ(ルイス)、エイミー・サイメッツ(レイチェル)
1950年代後半のアメリカ。公園で遊ぶ息子を見守っていたマヤは指笛を聞いた。そのとたん戦争中の悪夢がよみがえってくる。ロマ民族のマヤは戦争中ナチスの迫害を受け、マヤは暴行され妹は殺されてしまったのだ。指笛の主は近所に引っ越してきた男で、忘れようとしても忘れられないその兵隊だった。今も夢でうなされているマヤは、男を誘拐して自宅に監禁する。トーマスと名乗る男は人違いだと言い続けるが、マヤは真実を知るまでは解放しないと告げる。夫のルイスはマヤの過去を初めて知って同情するものの、男への暴力に加担したくない。
戦争の傷跡がどれほど深いのか、当事者の心情は想像するのみ。マヤは幸せな家庭を築いて子どもにも恵まれましたが、かつての悪夢のようなできごとは心の奥深くに巣食ったままです。穏やかな暮らしの中で、相手に気づいたばかりに、復讐に駆り立てられてしまいます。いつも強い女のノオミ・ラパス、今作でも夫が引いてしまうほどの過激さです。マヤがナチス兵と思った男も、家庭があり妻も子もいて平和に暮らしています。そこがまた考えどころなのですが。復讐や怒りは連鎖してしまいます。
戦時中に狂気にかられた兵隊たちが犯した女たちは、生き残って何年経とうと決して忘れずにいます。彼らを罰してほしい、赦しを乞い願ってもらいたい。女は戦利品でも慰安物資でもありません。ノオミ・ラパスも女性の身になって、この主演と製作総指揮を務めたのでしょう。ラストは苦いです。(白)
過去にナチスから辱めを受けた主人公のマヤが加害者と思しき男トーマスを拉致して、自白させようとする。邦題はマヤが過去に受けた辱めを夫ルイスに言えなかったことかと思いましたが、抱えた秘密は幾重にも重なっていました。原題は「The Secrets We Keep」。なぜ「We」なのかが疑問でしたが、作品を見ると大いに納得。ただ、この「We」はダブル・ミーニング。マヤとトーマスが経験した事実、マヤとルイスが抱えていく事実の2つあります。どちらも辛い。(堀)
2020年/アメリカ/シネスコ/カラー/93分
配給:STAR CHANNEL MOVIES
(C)2020 TSWK Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://maja-secret.com/#modal
★2022年2月18日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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