2022年02月06日
オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険 原題:Austria2Australia
監督・脚本・撮影・編集:アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒス
監修 :マルティナ・アイヒホルン
最終編集:イネス・ヴェーバー
プロデューサー:ヨーゼフ・アイヒホルツァー
オーストリアでIT企業に勤める青年アンドレアス・ブチウマンとドミニク・ボヒスは、大学時代からの友人。二人はオーストリアからオーストラリアまで自転車で走破する旅に出る。海路を除いてその距離 18,000km、訪問国 19 か国、期間にして 11 か月!
ふたりを突き動かしたのは「限界に挑戦したい」というシンプルな情熱と好奇心。
本作は、自転車に積み込んだ小型カメラ2台と、GoPro(ゴープロ)のカメラにドローンで撮った旅の記録。
自転車で冒険旅行に出ると決めた二人。地図を手に取り、いちばん下の右端にあるオーストラリアを目的地に決め、ビザ発行があまり面倒でなさそうな国を通る計画を立てたとのこと。
オーストリアのリンツを出て、東欧などを経由してロシアに入るまでは、毎日、寝場所を探し、食料や水の調達をするのに精一杯であまり映像がありません。ようやく余裕が出来たのかモスクワの赤の広場が映し出されますが、ロシアではビザの有効期間 30 日の間に2500 キロを走破しなくてはならず、地元の人と交流する時間もなかった模様。
ロシアからカザフスタンに入ったとたん、知り合った運転手さんの家に招かれ、ご馳走を振舞われ、さらに結婚式にも参加と、イスラーム世界あるあるのおもてなしがさっそく展開。キルギスや中国のカシュガルでも中央アジア風のムスリムのおもてなし。
カシュガルには、1990年代に行ったことがあるのですが、すでに漢民族がじわじわと入ってきていました。ここ数年、ウィグルの人たちの文化が蹂躙されている報道が続いていますが、この映画にはウィグルの人たちの活気ある姿が映し出されていて、もしかしたら貴重な記録になるのではと思ってしまいました。
次に入ったパキスタンでは、パトカーがすぐ後ろに密着してついてきて、ウザイし怖いと、なんとかまくのですが、また警官たちが現れて、実は心配して見守ってくれていたのだとわかります。その夜は、警官たちはじめ大勢の男の人たちと太鼓と手拍子で踊るというお酒抜きの宴が続きました。私もパキスタンでは町を散策していた時に、好奇心いっぱいの人たちに取り囲まれた経験があるので、これまたあるあるの世界だなぁ~と。
(C)Aichholzer Film / Dominik Bochis / Andreas Buciuman
インドに入り、アムリトサルにあるシク教の黄金寺院で、振舞い料理をいただく場面が出てきました。『聖者たちの食卓』(2011年/ベルギー 監督:フィリップ・ウィチュス、ヴァレリー・ベルト)を思い出しました。
ネパールにも行き、その後、ミャンマーのビザが取れず仕方なく飛行機でタイへ。マレーシア経由シンガポールまで走り、飛行機でオーストラリアのパースへ。そこで旅は終わらず、さらに東のブリスベーンまで。 後半は(暁)さんに詳細は譲りますが、途中でやめたくなる苦労もあった自転車の旅。やり遂げた時の爽快感(と脱力感も?)が観ている私たちにも伝わってきました。そも、自転車に乗れないので、とても真似はできませんが、見知らぬ土地の人たちと交流しながらの旅に、いつかまた出たくなりました。コロナがうらめしいです・・・ (咲)
恐らくアンドレアスとドミニクは自転車での旅がここまでハードなものになるとは思っていなかったのではないだろうか。作品の前半は軽口をたたく余裕もあったけれど、次第に自分の決断に迷いが生じてくる。そんな姿もしっかり映し出しているので、2人に感情移入し、他人事には思えなくなってしまう。旅行中にすでにFacebookを通じて発信していたことから、旅先で声を掛けられる場面があり、リアルタイムで知らなかった自分が残念に思えてきた。この旅をやり遂げたアンドレアスとドミニクは今、どんな生活をしているのだろう。もし、また自転車でどこかに行くようなことがあったら、Facebookで追いかけてみたい。(堀)
本当はスタッフ日記のほうに書く予定だったのだけど、もう公開が始まってしまうので、こちらの作品紹介に映画を観ての感想や思ったことを記します。
まずタイトルに惹かれました(笑)。「オーストリア」と「オーストラリア」、昔から紛らわしいと思っていました。オーストリアとオーストラリア、どっちなの?ということ、何度もありました。このオーストリア在住の若者たちがオーストラリアに向けて自転車で旅をする、これは面白そうと思いました。
ヨーロッパからロシアに向けての最初は雨が多かったようですが、ロシアを通り抜けカザフスタンに入ってからのからっとした草原の景色を見てほっとしました。11か月にも渡る旅の間、いろいろな人と出会い、二人の関係もぎくしゃくした時もあったようだし、アクシデントも何回も。自転車が壊れたこともありました。でも目標のオーストラリアに向かって走り続けました。その姿がすがすがしかった。パキスタンの部分の詳細は(咲)さんのところに詳しく書かれているけど、最後警官の人たちとの宴会では、思わず大笑いしてしまいました。喧噪のインド、ヒマラヤやカラコルムの山々を眺めながら走り、そしてネパール、マレーシア、シンガポールへ。このアジアの景色は、けっこう映画などで観て来た景色ではあるものの、思わず懐かしくてほっこりしてしまいました。
シンガポールからオーストラリアには飛行機で入国し、オーストラリアの西から東へ横断したものの、入り口の「パース」という地名は語られず。HPの地図にも載っていません。とても残念。なぜこだわるかというと、私が初めて海外旅行に行ったのは1990年でパースでした。そこに移住した友人を訪ねて、友人3人で訪ねました。なのでパースからのこの二人の自転車の旅は、その時のことを思い出させてくれました。舗装された道路の横は大地の赤い土の色がずっと続いていたのですが、同じようにそれが映されていました。まっかな大地の色にびっくりしたことを覚えています。そして二人が通った砂漠の砂の色が真っ白でびっくりしました。映画を観終わってから、ふと数日前にTVで見た「NHK ブラタモリ」の「南紀白浜」の回で、「白浜の白い砂はオーストラリアから輸入したものがある」と言っていたのを思いだしました。もしかしたら、この砂漠の砂かもと思って調べてみたら、たぶんそのようでした。それほど印象的な真っ白な砂漠が続いていました。そしてたどりついた最終目的地ビリズベン。ちなみにそのパースに移住した友人はオーストラリアに帰るオーストラリア人と一緒に行ったのですが、この二人とは逆に、東のシドニーからパースへ(つまり東から西へ)車で約6000㎞移動したそうです。途中たくさんの野生のカンガルーにも会ったと言っていました。
それにしても自転車でこの旅を続けるという、難しいけど素晴らしい冒険旅行。そしてそれを記録し映画にしたということは、撮影機材が小型化したこの時代だからできたことだし、この新型コロナが広がる前だからできたこと。絶妙なタイミングだったということですね。映画公開という意味ではこのくらいの長さがいいのかもしれませんが、通った土地の映像がもう少しある長いバージョンも観てみたいな(暁)。
写真クレジット © Aichholzer Film 2020
2020 年/オーストリア/ドイツ語/カラー/デジタル/16:9/88 分
日本版字幕:吉川美奈子
© Aichholzer Film 2020
日本公開後援:オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
公益財団法人日本サイクリング協会
提供・配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/austria2australia/
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