2022年01月16日
声もなく(原題:소리도없이 英題:Voice of Silence)
監督・脚本:ホン・ウィジョン
製作:キム・テワン
撮影:パク・ジョンフン
音楽:チャン・ヒョクジン&チャン・ヨンジン
出演:ユ・アイン(テイン)、ユ・ジェミョン(チャンボク)、ムン・スンア(チョヒ)、イ・ガウン(ムンジュ)
貧しさゆえ、犯罪組織からの下請け仕事である死体処理で生計を立てる2人。口のきけない青年テインと片足を引きずる相棒のチャンボクは、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒを、1日だけ預かることになった。トラブルが重なり、テインとチョヒの疑似家族のような奇妙な生活が始まるが、チョヒの親から身代金が支払われる気配はない。出会うはずのなかった者たちの巡り合わせが、韓国社会で生きる声なき人間たちの孤独を浮き彫りにする。
ホン・ウィジョン監督は82年生まれの女性監督。ロンドンの映画学校卒業後、CMや短編を制作してきました。本作が初の長編作品にもかかわらず、青龍賞新人監督賞、百想芸術大賞監督賞を受賞しました。
主人公のテインを『バーニング 劇場版』(2018)、『国家が破産する日』(2018)で主演男優賞を受賞したユ・アイン。15㎏も増量して口のきけないテインを身体から作りあげ、台詞のない演技を見せました。相棒のチャンボクはテインの父親代わり、生活のために闇の仕事をせざるを得ません。ユ・ジェミョンは鬼気迫るような『ビースト』(2021)と違い、根は善人でありながら底辺で生きる辛苦を体現しています。2人は犯罪の後始末という一番の汚れ仕事に手を染めて生きていますが、子どもを巻き込む誘拐をするつもりはありません。テインがしかたなく連れ帰ったチョヒに妹のムンジュが懐いて、一時家族のように暮らすシーンにほっこりしました。陰惨な場面があってもどこか明るく、気を許しているととてつもなく切ないところに持っていかれます。ホン・ウィジョン監督に今後も注目です。(白)
チョヒがそばにいても、淡々と死体を運び処理するテインとチャンボクの姿からは、可笑しささえ漂ってきます。彼らにとって死体は、処理しなければならない単なるモノ。社会の底辺には、人が嫌がることを生業にするしかない人々がいることに思いが至ります。テインは声が出ませんが、テインならずとも、嫌なことも嫌と声をあげられない人たち・・・ そういう人たちの働きがあって、社会が成り立っていることを忘れてはならないと思いました。それにしても、額に汗して呻くユ・アインは見事でした。低予算の映画に出演を決めた気概を感じました。(咲)
2020年/韓国/カラー/ビスタ/99分
配給:アットエンタテイメント
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★2022年1月21日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
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