2022年01月08日
なん・なんだ
監督:山嵜晋平
出演 下元史朗、烏丸せつこ、佐野和宏、和田光沙、吉岡睦雄、外波山文明、三島ゆり子
海が見える古い団地。三郎と美智子は、結婚してもうすぐ40年。三郎は大工を引退して、一日ぼぉ~っと過ごしている。ある朝、美智子が入念に化粧をして文学講座に行くと出かけていく。出がけに届け物を頼まれた三郎は、家を出たもののどこに届けるのか思い出せなくて戻ってきてしまう。ビールを飲みながら妻の帰りを待っていると、携帯が鳴り、京都府警から美智子がひき逃げに遭って意識不明だと言われる。なぜ、京都?と思いながら、娘の知美にも連絡し、大急ぎで京都の病院に向かう。美智子の意識はなかなか戻らない。荷物の中には古いアルバムとカメラがあった。若いころ写真家を目指していた美智子が愛用していたカメラ。三郎はフィルムの現像を頼む。写っていたのは知らない男。京都でこの男に会っていたのか? 三郎は娘を連れて、奈良にある美智子の実家に向かい、自分の知らない美智子の世界を探る旅に出る・・・
五木寛之原作の映画『四季・奈津子』(80/東陽一)での奈津子の挑発的な姿が忘れられない烏丸せつこさん。どんな風に年を重ねられたのかを楽しみに映画を拝見。『なん・なんだ』というタイトルも気になりました。ちょっと文学講座に出かけた妻が遠く離れた京都で交通事故に遭って、しかも自分の知らない男と会っていたとあっては、まさに、夫にとっては、「なん・なんだ!?」でしょう。40年連れ添った夫婦で、お互い、知らないことがあるのは当然のこと。それが、いかに愛し合っていた夫婦だとしても。
1980 年生まれの山嵜晋平監督は、10 年ほど前に自殺しようとしているおじいさんを止めたことがあって、年を重ねていったとき、どう人は生きていけばいいのだろうかということがずっと頭にあって、それが本作の原点になっているとのこと。
その自殺を止めたというのが、ロケハンで行った百草園辺りの団地の11 階建ての高層階。飛び降り自殺しようとしていた老人は、60歳で市役所を定年で辞め、離婚して一人暮らしの70代。住まいは同じ団地の低層階のアパート。私が今の百草園近くの一軒家に引っ越す前、百草団地の11階建ての2階で暮らしてました。もしや、そこ?
話は脱線しましたが、確かに、若い時には、元気もあって、先のことも心配せずに飛び歩いて、仕事も旅も楽しんだものです。年を重ねた今、残りの人生がどれくらいあるのかはわかりませんが、やっぱり今を楽しんでいることだけは変わりません。
映画は、奈良生まれの監督らしく、高台から美しい風景の見える場所で撮影しています。母と一緒に訪れたことのある百毫寺が出てきたのも嬉しかったです。美智子の浮気相手を演じた佐野和宏さんは、2011年に咽頭癌で声帯を失われていて、それでも懸命に会話している姿に、やはり咽頭癌で声を失った祖母を思い出しました。
横須賀の海の見える団地から、京都まであんなに早く行けるか?という映画ならではのマジックもあって、まさに「なん・なんだ!?」の楽しみもある映画です。 (咲)
2021年/日本/107分/アメリカンビスタ/DCP
配給:太秦
(C)なん・なんだ製作運動体
公式サイト:https://nan-nanda.jp/
★2022年1月15日(土)より、新宿K's cinemaほか全国順次公開
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