2021年12月10日

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(原題:Dark Waters)

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監督:トッド・ヘインズ
脚本:マリオ・コレア、マシュー・マイケル・カーナハン
撮影:エドワード・ラックマン
出演:マーク・ラファロ(ロブ・ピロット)、アン・ハサウェイ(サラ)、ティム・ロビンス(トム・タープ)、ビル・キャンプ(ウィルバー・テナント)、ヴィクター・ガーバー(フィル・ドネリー)、ビル・プルマン(ハリー・ディーツラー)

1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが、見知らぬ中年男から思いがけない調査依頼を受ける。ウェストバージニア州パーカーズバーグで農場を営むウィルバー・テナントは、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって土地を汚され、190頭もの牛を病死させられたというのだ。さしたる確信もなく、廃棄物に関する資料開示を裁判所に求めたロブは、“PFOA”という謎めいたワードを調べたことをきっかけに、事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。やがてロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏みきる。しかし強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていくのだった……。

2016年のNYタイムズの記事をマーク・ラファロが目にしました。1人の弁護士が巨大企業のデュポン社と十数年に渡って闘っていることに心を動かされた彼は、映画化に向けて動き始めました。ラファロ自身が演じたロブ弁護士の孤立無援の日々を映画の中に観るだけでも、その勇気と粘り強さに感動します。街や暮らしのために大企業を歓迎しても、身体を損ねては何にもなりません。最初に訴えにきたウィルバー・テナントも妻も病に倒れてしまいます。
工業排水や産業廃棄物には毒性の強い化学物質が含まれていて、これは自然に分解できず永久に蓄積されます。川に流れ込み地下にしみ込んだ化学物質は飲料水を汚染し、何年も飲み続けた近隣住民の健康被害が明らかになりました。ロブの訴訟をきっかけの一つに、2019年5月国連の会議で、汚染の原因となる物質、有機フッ素化合物の1つ「PFOA(ピーフォア)」の製造と使用の禁止が決議されました。その10年前には「PFOS(ピーフォス)」が禁止されています。が、昨年沖縄の米軍基地近くで「PFOSやPFOAによる水質汚染」が相次いで見つかっているというのはどういうことなんでしょう。(白)


大企業の壁に果敢に闘う弁護士の姿に感銘を受けました。水俣も然り。有害物質を垂れ流した張本人の企業はなかなか非を認めません。被害を受けた方たちの心労は計り知れませんが、長年の法廷闘争に弁護士の方たちも心身共に疲れ果てていることと思います。
それにしても、私たちは知らないうちに有害物質の危険にさらされていることをあらためて思いました。テフロン加工(フッ素加工)のフライパンは、焦げなくて便利で使っているけれど有害では?と気になります。蛇口をひねれば出てくる水も大丈夫かしらと心配は尽きません。(咲)


●トッド・ヘインズ監督コメンタリー映像はこちら

2019年/アメリカ/カラー/スコープ/126分
配給:キノフィルムズ
(C)2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
https://dw-movie.jp/
★2021年12月17日(金)TOHOシネマズシャンテ他ロードショー
posted by shiraishi at 21:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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