2021年12月05日

東洋の魔女(原題:Les Sorcieres de l'Orient)

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監督・脚本:ジュリアン・ファロ
製作:ウィリアム・ジェアナン
撮影:山崎裕
音楽:ジェイソン・ライトル K-Raw
ラインプロダクション:ドキュメンタリージャパン、橋本佳子、角田良子
出演:河西昌枝、松村好子、半田百合子、谷田絹子、宮本恵美子、磯部サタ、松村勝美、篠崎洋子、大松博文

1964年、東京で日本初のオリンピックが開催された。柔道、体操、レスリング、次々とメダルを獲得していく日本人選手に国中が熱狂した。中でも圧倒的な強さを見せたのが女子バレーボール。大松博文監督率いる大日本紡績(現ユニチカ)の選手を中心としたチームは、決勝戦でソ連チームと対戦し、固唾を飲んで見守る中3-0で勝利し、金メダルを獲得した。その後緒空前のバレーボールブームが起こり、「アタックNo.1」「サインはV」の漫画やアニメが大ヒットした。
ジュリアン・ファロ監督はかつてのメンバーたちにインタビューし、当時の思い出を語ってもらう。市川崑監督の『東京オリンピック』(65)、渋谷昶子監督『挑戦』(63)、当時の日本の風景なども織り交ぜ、「東洋の魔女」の姿を浮き彫りにする。

当時の熱狂ぶりをよく覚えています。バレーボールの決勝戦も観ていました。「アタックNo.1」「サインはV」も観ていて、主題歌も当然記憶にあります。作品中に出てきて懐かしかったです。「鬼の大松」と呼ばれた大松監督の練習の様子はテレビで何度も取り上げられました。「スパルタ」という言葉はここで覚えたはず。「回転レシーブ」にも目を見張りました。
下の渋谷昶子監督『挑戦』を後に観て、10代、20代の女の子たちが、定時の勤めを終えてからこんなに厳しい練習をよく続けていたこととあらためて感心しました。それが連勝記録を打ち立てていったのでしょう。戦後復興を悲願としていた日本人に少なからず影響を与えたんじゃないでしょうか。
作品に登場する元「東洋の魔女」たちは素敵なおばあちゃまになられていました。厳しい練習に耐えて偉業を成し遂げたことが、身体の芯として残っている気がしました。(白)


「東洋の魔女」と聞いて、私は1964年の東京オリンピックをすぐに思い出す世代ですが、この映画を作ったジュリアン・ファロ監督は、1978 年生まれ。しかもパリ在住。なぜ、ファロ監督が、半世紀以上前の「東洋の魔女」に焦点をあてた映画を作ったのか興味津々でした。監督は、フランス国立スポーツ体育研究所(INSEP)の映像管理部門に所属している方。これまでにも、超人的なパワーを持つアスリートたちに焦点を当てた作品を制作されています。2020年に再び東京でオリンピックが開催されることにも関係して「東洋の魔女」を取り上げたのかと思ったら、監督が本作のアイディアを思いついたのは、10年程前のこと。日本オリンピック委員会が1964年に製作したバレーボール関連の16 ミリフィルムの映像を観たのがきっかけでした。
冒頭、アニメで日本の魔女のイメージとして、お岩さん(かな?)やどくろ首が出てきます。今は素敵なおばあちゃまになった「東洋の魔女」たちが会食しながら当時を振り返るのですが、魔女というと鼻が大きくて悪いことをするのが魔女だと思っていたら、欧州に遠征したときに、人ができないことをできるのが魔女と聞いて、イメージが変わったと語っていました。
本作を観て、1964年の東京オリンピックが戦後復興の象徴として開催されたことを再認識しました。2020年の東京オリンピックはいったい何だったのでしょう・・・ (咲)


この欄に感想を足そうと思ったのですが、書いた文章が長くなってしまい、スタッフ日記のほうに書きました。こちらも良かったら読んでみてくださいね(暁)。

シネマジャーナルHP スタッフ日記
『東洋の魔女』を観に行く(暁)

2021年/フランス/カラー/100分/DCP
配給:太秦 
宣伝協力:スリーピン 
©UFO Production ©浦野千賀子・TMS
https://toyonomajo.com/
★2021年12月11日(土)より、渋谷ユーロスペースにて公開!

◎シネジャでも何度か記事に取り上げた故・渋谷昶子監督。youtubeチャンネルに「挑戦ー1964年カンヌ映画祭短編部門グランプリ作品」と題して”日紡貝塚女子バレーチーム”のドキュメンタリー『挑戦』が公開されています。渋谷監督のコメント「25歳から監督業をやり始めたが、30歳までに社会的に監督として認知されなければ、監督を辞めて、転進を計ろうと考えていた矢先の受賞で、今日まで50年の永きに亘って、監督業をつづけることになった」という記念碑的作品です。ぜひこちらもご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=krbJ1MBYXTo
(1963年/35ミリ/コダックカラーフイルム/30分)
posted by shiraishi at 13:18| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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