監督:福岡芳穂
脚本:港岳彦
撮影:栢野直樹
音楽:中城隆
出演:上川周作(山川桜七郎)、塩顕治(斎藤一)、池内祥人(松之助)、村井崇記(藤堂平助)、佐々木詩音(大石鍬次郎)、延岡圭悟(窪川藤次)、松本薫(惣吉)、和田光沙(お染)、辻凪子(お鈴)、土居志央梨(花香太夫)、駒野侃(永倉新八)、宮本伊織(原田左之助)、東山龍平(中岡慎太郎)、山本真莉(つる)、鈴川法子(ふね)、水上竜士(萱野長修)、福本清三(水野弥三郎)、大西信満(土方歳三)、山本浩司(近藤勇)、渋川清彦(武田観柳斎)、高岡蒼佑(伊東甲子太郎)
幕末・京都。会津を脱藩した浪人山川桜七郎は、賭場の用心棒として雇われていた。賭場の胴元、侠客・水野弥三郎に御陵衛士の篠原泰之進、藤堂平助が資金繰りの相談をしている時、九州の菓子屋の息子・松之助が賭け金の持ち逃げで引っ立てられてくる。同郷と知った篠原が松之助を救い藤堂らと出ていこうとした時、陰間乞食・惣吉が襲い掛かり、咄嗟に篠原は惣吉の脇腹を斬るが、同時に用心棒の桜七郎が藤堂の前に立ちはだかった。藤堂は刀を交える中で桜七郎に対し侍としての共感を抱き、御陵衛士への合流を誘う。しかし桜七郎は無言で去る。片や松之助は屯所の下男として御陵衛士盟主・伊東甲子太郎始め仲間たちから快く迎え入れられる。そんな様子を、斎藤一がじっと見つめていた。
「京都芸術大学映画学科」プロジェクト【北白川派】第8弾。1867年11月18日に起こった新撰組終焉の象徴“油小路の変“を、よく知られた人物でなく、新しく浪人山川桜七郎を作り出して中心において描いています。このときの時代背景や暗殺にいたるまでは、新撰組に詳しい方々ならよくご存知かと思います。私は池田谷事件は知っていても、伊東甲子太郎が謀殺されたこちらは知りませんでした。新撰組は脱退が禁じられていたので、分離したと見せて御陵衛士を立ち上げたけれども、結局粛清されたということのようです。
現在の油小路に突如侍姿のキャストが出現するというシーンが挟まれていて、今の時代と当時はそれこそ地続きなのだという実感がわきます。キャストは現役の学生からプロのベテラン俳優まで入り混じり、プロの俳優の圧倒的な存在感と、経験の浅い彼らの、演技とは別な生々しさを感じる作品でした。
どこの土地もそこで死んだ人間たちの血や汗がしみついていそうですが、京都は特にそれが積み重なっている気がします。「伊東甲子太郎外数名殉難跡」という石碑が本光寺の門前に建てられています(昭和46年)。京都駅から10分ほどだそうです。いつか行って安らかにと祈りたい気分になりました。監督は京都芸大の福岡芳穂教授、港岳彦氏の脚本は『あゝ、荒野』『宮本から君へ』などどれも毎回印象に残ります。互いに真剣を振り回した時代を映した作品の中で、何千回も斬られた福本清三さんが賭場の親方として出演しています。この作品が遺作となりました。(白)
2021年/日本/カラー/シネスコ/114分
配給:マジックアワー
(C)北白川派
http://www.chain-movie.com/
★2021年11月26日(金)ロードショー
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