2021年11月14日
茲山魚譜 チャサンオボ 原題:자산어보 英題:The Book of Fish
監督:イ・ジュニク(『王の男』『王の運命–歴史を変えた八日間–』『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』『金子文子と朴烈』)
出演:ソル・ギョング、ピョン・ヨハン、イ・ジョンウン
「茲山魚譜(チャサンオボ)」―― 庶民のために書かれた海洋生物学書。
本作は、「茲山魚譜」を執筆した学者・丁若銓(チョン・ヤクチョン)と、その手助けをした若き漁夫・昌大(チャンデ)の物語。
1801年、朝鮮時代。第22代国王・正祖(チョンジョ)亡き後、幼き王・純祖(スンジョ)に変わり曾祖母の貞純(チョンスン)王后が権力を握り、天主教(カトリック)信者を迫害する。それまで王から信頼を得ていた天才学者・丁若銓も天主教を信仰していたため黒山島(フクサンド)に流刑になる。貧しいが暖かくもてなそうとする島民たち。何より美しい海。ガンギエイ、タコ、ムツゴロウなど、これまで知らなかった海の生物の魅力にとりつかれる。そんな折、島の誰よりも海の生き物に詳しい青年漁師の昌大と出会う。彼は島の外に出ることを夢見て書を読みあさっていたが独学に限界を感じていた。丁若銓は、身分も歳も違う彼に学問を教える代わりに、海の生物の知識を教えてくれと持ちかける・・・
日本でも渋沢栄一の孫、敬三が翻訳版の出版を志した、韓国で有名な海洋生物学書「茲山魚譜」。その序文に、魚や海藻などに詳しい昌大(チョンデ)という青年の助言によって完成されたと記されていることに基づいて描いた物語。
墨絵のような美しいモノクロームの映像。時代に翻弄され島流しになった天才学者が、生きる意味を見つけ、島の青年もまた都会から来た学者から学ぶことで目が輝いていきます。学者・丁若銓を演じたソル・ギョングは、意外にも本作が初めての時代劇。もちろん、間違いのない重厚な演技で丁若銓を体現しています。両班の父に認められないながら、勉学に励む漁師の青年・昌大を演じたピョン・ヨハンは、ドラマ「ミセン–未生–」(2014)で一躍人気となり、日本映画『太陽は動かない』(2021)にも出演しています。『あなた、そこにいてくれますか』(2016)のピョン・ヨハンがなんといっても好きでしたが、本作でさらに好感度が増しました。
また、『パラサイト 半地下の家族』で一躍、国際的にも知られるようになったイ・ジョンウンが、島流しになった丁若銓を甲斐甲斐しく世話をし、やがては彼との子を宿すという役どころなのも、心を和ませてくれます。
『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』や『金子文子と朴烈』で、日本ではあまり知られていない近代史の人物のことを知らしめてくれたイ・ジュニク監督。またしても、知られざる人物のことを心に染みる作品で届けてくださいました。(咲)
2021年/韓国/韓国語/モノクロ/シネスコ/5.1ch/126分
字幕翻訳:本田恵子
配給:ツイン
公式サイト:https://chasan-obo.com/
★2021年11月19日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
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