2021年11月14日
ユダヤ人の私 原題:Ein judisches Leben 英題:A Jewish Life
監督:クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー、クリスティアン・ケルマー、ローランド・シュロットホーファー
製作:ブラックボックスフィルム&メディアプロダクション
終戦から74年間 悪夢を語り続けたホロコースト生存者マルコ・ファインゴルト氏の最後の警鐘。
ゲッベルスの秘書ブルンヒルデ・ポムゼルの証言を記録した『ゲッベルスと私』(2018年 岩波ホール公開)の【ホロコースト証言シリーズ】第2弾。
ユダヤ人のマルコ・ファインゴルトは1939年に逮捕され、アウシュヴィッツを含む4つの強制収容所に収容される。終戦後は、10万人以上のユダヤ人難民をパレスチナへ逃がし、自らの体験とナチスの罪、そしてナチスに加担した自国オーストリアの責任を、70年以上訴え続けた。本作はマルコの数奇な人生を通じ、反ユダヤ主義がどのように広まりホロコーストに繋がったか世界初公開のアーカイヴ映像を交えながら映し出す貴重なドキュメンタリー。“国家と人は過去の過ちを忘れている”と語るマルコのインタビューは、過去と地続きにある現在に警鐘を鳴らす。
マルコ・ファインゴルト(1913-2019)
1913年にハンガリーで生まれウィーンで育つ。小学校の教師が反ユダヤ主義者だったため登校を拒否する。1938年、ビジネスで滞在していたイタリアから一時帰国すると、アンシュルス(ドイツ=オーストリア合併)によって反ユダヤ主義が急速に広まる。1939年、ゲシュタポに逮捕され、1945年まで4つの強制収容所に収容される。終戦後はユダヤ人難民の人道支援と公演活動に取り組む。オーストリアのユダヤ人協会代表を務め、その功績に多くの栄誉ある章が与えられる。2019年9月19日にその生涯を閉じる。享年106歳。
ファインゴルト氏の語る中で、一番気になったのが、「ブーヘンヴァルトに収容されていた28カ国の囚人のなかで、祖国から迎えが来なかったのはオーストリア人だけだった」という言葉でした。28カ国からユダヤ人を連行してきたことにも驚きましたが、なぜオーストリア人だけ?と疑問に思った次第です。
オーストリアといえば、ヒトラーの出身地。プレス資料などで確認してみたところ、「反ユダヤ主義はドイツ人が持ち込んだものではなく、オーストリアで何世紀にもわたって培われ、カトリック教会がそれを後押ししたのです」というフロリアン・ヴァイゲンザマー監督の言葉がありました。実に、オーストリア国民の90%が反ユダヤ主義! ヒトラーの反ユダヤ主義もそのような環境だったからこそ根付いたのでしょう。
ユダヤ人生存者128人のウィーン帰還を阻止したのは、臨時政府首相から戦後初代大統領となった社会民主主義者カール・レンナー。ファインゴルト氏は、ウィーンの家に戻ることができず、収容所に戻されるのを恐れ、ザルツブルクで列車を降り、そのままそこで生涯をおくっています。ユダヤ人というだけで、財産も故郷も家族も奪われたファインゴルト氏。一方で、戦後、ユダヤ人のためにできた国イスラエルが、パレスチナ人を今も蹂躙しているという状況があります。私たちはますます不寛容になる社会に何をできるかを考えないといけないと強く思いました。(咲)
★公開初日監督舞台挨拶
11月20日(土)岩波ホール13:00からの回上映後
11月27日(土)第七藝術劇場15:55からの回上映後
クレーネス監督、ヴァイゲンザマー監督の舞台挨拶(zoom)
2021年/オーストリア映画/114分/16:9、4:3/モノクロ
日本語字幕:吉川美奈子
配給:サニーフィルム
協力:オーストリア文化フォーラム東京
公式サイト:https://www.sunny-film.com/shogen-series
★2021年11月20日(土)岩波ホール他全国順次公開
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください