監督・脚本:和島香太郎
撮影:沖村志宏
出演:加賀まりこ(山田珠子)、塚地武雅(山田忠男)、渡辺いっけい(里村茂)、森口瑤子(里村英子)、斎藤汰鷹(里村草太)、林家正蔵(大津進)、高島礼子(今井奈津子)
山田珠子は、自閉症の息子・忠男と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、腰を痛めた忠男と一緒に転んでしまった珠子は「このまま共倒れになちゃうのかね」と、気づく。グループホームの案内を受けて、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが・・・。
障がいや病気のある子どもと暮らす親の心配はたぶん世界中同じ。自分が年を取って先に逝った後、この子は暮らしていけるのだろうか? ほかに頼る人や場所がなければ、その心配が消えることはありません。この映画では77分という短い中で、それをぎゅっと縮めて見せてくれます。塚地武雅さんのオーバーすぎない「忠さん」、母性溢れる加賀まりこさんの「珠子」、障がいのある人を身近で見たからこその温かいシーンに切なくなります。辛口の占いのシーンに笑いました。私も見てもらいたい。
和島監督がこの映画を作るきっかけになったのは助監督をしたドキュメンタリー『だってしょうがないじゃない』(2019/坪田義史監督)だったそうです。公開当時に観て、先に逝く親と遺された子どもの辛さ、親を亡くした後の自立の難しさを知りました。そちらには桜の木を切るシーンがあり、フィクションの本作では梅の木を切るか切るまいかというシーンがあります。「桜切るバカ、梅切らぬバカ」というのは、対象に則して考えよということわざ。生き方や人間関係にも当てはまります。忠さんにもいろいろありましたが、ラストに希望を感じました。
我が家も道路にはみ出る枝には注意して、人に当たらないようやっぱり剪定しています。忠さんもそこだけは譲ったほうがいいんじゃないかな。(白)
こちらに「爪切り」メイキングシーンが公開されています。
2021年/日本/カラー/シネスコ/77分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト
https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/
★2021年11月12日(金)全国順次ロードショー
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