2021年10月05日
PITY ある不幸な男 原題:Pity
監督:バビス・マクリディス
脚本:バビス・マクリディス、エフティミス・フィリップ(『ロブスター』)
出演:ヤニス・ドラコプロス、エヴィ・サウリドウ、マキス・パパディミトリウ
海を見晴らせる瀟洒なアパートメント。
ベルが鳴り、隣人の女性が焼き立てのオレンジケーキを届けてくれる。
「奥様は?」
「危篤状態」と男。
妻は事故に遭い、加害者は裁判で懲役刑を受けたらしい。
10代の息子と向かい合って、黙々と朝食にオレンジケーキを食べる。
クリーニング屋へ。
ここでも「奥様は?」と聞かれる。
「事故以来、犬も元気がない。妻と添い寝してた」と悲しげな面持ちで答える男。
息子がピアノを弾いている。
「明るい曲を弾くべきじゃない。母親が死にそうで喜んでいると思われる」と男。
妻がすっかり回復して自宅に帰ってくる。
息子のピアノも軽やかだ。
隣人からオレンジケーキが届かなくなり、催促にいくが、つれない態度を取られる・・・
なんとも凄まじい物語でした。
同情してもらうことに快感を覚える男。
妻が退院してからの男の行動にあっけにとられます。
それは、観てのお楽しみ。いえ、楽しいとはいえない。もう、ぞくっとします。
人間の心理って、案外そんなものかもと思うと、さらに怖くなります。
息子がピアノで弾いていて明るいと叱られた曲は、モーツァルトのPiano Sonata No 16 C major K 545。懐かしい曲と思ったら、大昔にピアノ発表会で弾いた曲でした。
ちなみに、前半の妻の意識がなくて絶望的なはずの場面では、歓喜に溢れたベートーベンの交響曲第9番。妻が元気になって幸せなはずの場面では、悲しげなモーツアルトのレクイエムが流れます。思えば、それが男の心情だったと思うと、またぞくっとします。
最後の最後は、ちょっとほっとさせられる場面です。後味悪く映画館を出ないで済む、せめてもの監督の配慮でしょうか・・・(咲)
2018年/ギリシャ、ポーランド/ギリシャ語/99分/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP
後援:駐日ギリシャ大使館
提供:シノニム
配給:TOCANA
公式サイト:https://pity.jp/
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House
★2021年10月8日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテ他 全国ロードショー
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