2021年10月06日

そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映

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『友だちのうちはどこ?』にはじまるジグザグ道三部作や、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『桜桃の味』などで知られるイランを代表する巨匠アッバス・キアロスタミ監督(Abbas Kiarostami、1940年6月22日-2016年7月4日)。
詩や写真でも才能を発揮していた彼の映画は人生の真実にあふれ、観た者の心に忘れえぬ記憶として今なお残りつづけています。
そのキアロスタミ監督の珠玉の傑作7作品が、生誕81年を記念してデジタル・リマスター版でスクリーンに甦ります。

本来は生誕80年である2020年に、フランス・パリのポンピドゥーセンターでの回顧展「Abbas Kiarostami Ou est l’ami Kiarostami?」に合わせて日本でも劇場公開が企画されていましたが、コロナによって回顧展が延期。その後、没後5周年となる2021年5月に同展が開催されたのを受け、世界的にキアロスタミ監督の再評価が高まるなか、日本でも満を持してデジタル・リマスター版が劇場初公開されます。
今回の7作品はパリのmk2、ニューヨークのクライテリオンコレクション、ボローニャのラボ、リマジネ・リトロヴァータが2年をかけて修復した4Kまたは2Kリマスター版。上映は全作品2Kで行われます。

期間・劇場:2021年10月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次開催
 ユーロスペース 公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/

上映作品:
『トラベラー』(1974)
『友だちのうちはどこ?』(1987)
『ホームワーク』(1989)
『そして人生はつづく』(1992)
『オリーブの林をぬけて』(1994)
『桜桃の味』(1997)
『風が吹くまま』(1999)

☆各映画の詳細は、公式サイトでご覧ください。
https://kiarostamiforever.com/

*上映スケジュール*
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★リピーター・プレゼント:会期中、2作品ご鑑賞ごとにオリジナル・ポストカードを1種ずつ、全7作品ご鑑賞でオリジナル・トートバッグをプレゼント。
(チケット半券を劇場受付にご提示ください。)※数量限定
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提供:WOWOWプラス 配給:ユーロスペース 宣伝:大福  
料金:一般1500円/大学生1000円/会員・シニア1100円/高校生800円/中学生以下500円

★公開記念トークショー開催!
10月16日(土)12:40『友だちのうちはどこ?』
上映前 ゲスト:中村獅童(歌舞伎俳優)

10月17日(日) 12:40『トラベラー』
上映後 ゲスト:アミール・ナデリ(映画監督/『CUT』) 
※オンラインでの開催

10月23日(土)12:40『風が吹くまま』
上映後 ゲスト:ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー、翻訳家、通訳)

10月24日(日)12:40『そして人生はつづく』
上映後 ゲスト:佐藤元状(英文学・映画研究者)


◆アフマド・キアロスタミ氏(デジタル・リマスター版監修)
動画メッセージ https://youtu.be/tfjE5dLemHo
私の父の映画が日本で上映され続けていることをとても嬉しく思います。日本は父にとってとても特別な国でした。父が日本で撮った作品を見ればそれは明らかだと思います。父の映画が上映されるのに一番ふさわしい国でしょう。近い将来、父の短編作品も日本で見てもらえたらと思います。またグラフィックデザインや写真といった異なるタイプの作品、とりわけどこにも発表していない2つの写真のシリーズを日本で紹介できたらと願っています。私自身にも日本はとても特別なつながりのある国です。イラン国外への初めての旅行、しかも長い時間をへてようやく父と一緒に旅したのが日本でした。私は父アッバスと映画祭に参加し、素晴らしい時間を過ごしました。近いうちにまた日本へ行けることを願っています。ありがとうございました。

◆アミール・ナデリ監督 コメント
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アッバス・キアロスタミは、日本の文化や魂に限りなく近い映画を作った、世界でたったひとりの映画監督です。
また、小津安二郎や清水宏の作品にも似たエッセンスも持っています。
キアロスタミの作品を見ることは、誰にとっても忘れられない経験となるでしょう。
なぜなら、彼の作品には真摯さと生命への敬意があふれているからです。
アミール・ナデリ(映画監督/『CUT』)

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キアロスタミ監督とナデリ監督

■関連書籍発売情報
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「映画の旅びと イランから日本へ」 ショーレ・ゴルパリアン/みすず書房
憧れの日本に来てから40年、激動の時代のなかでイランと日本を往復。キアロスタミをはじめとする個性派ぞろいの監督たちとともに映画をつくり、訳し、拡め、二つの文化に橋をかけたイラン女性の涙と笑いの半生記。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/483265973.html

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先日、ショーレさんにお話を伺ったのですが、コロナ禍の今、ぜひキアロスタミ監督の作品を大きな画面で観て、心を癒していただければとの言葉をいただきました。
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ショーレ・ゴルパリアンさんにキアロスタミ監督の思い出を伺う

試写で『友だちのうちはどこ?』を拝見。何度も観ている映画ですが、大きな画面で観るのは格別でした。
また、『桜桃の味』も、久しぶりに観て、前とまた違った印象を持ちました。
最初、大通りを車で走っていると、アフガニスタン難民と思われる青年たちが仕事を求めて声をかけてきます。こんな場面で始まったっけ?と思っているうちに、郊外の丘へ。
自殺しようとしている主人公が、これはと思う人物に声をかけて車に乗せると、必ずどこの出身かを聞いています。エンドロールに、最後の場面に出てきた兵士たちの名前が出身地と共に掲載されていることにも気が付きました。ペルシア語がわかる方は、ぜひそれにも注目してみてください。
イランに多様な人たちがいることを自然な流れでキアロスタミが描いていることに、あらためて気が付いた次第です。

(景山咲子)


アッバス・キアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?』を初めてみたのは、日本公開された1993年。イランの映画を見たのも初めてでした。その後、日本で上映、公開されるキアロスタミ映画はほとんど見てきたかと思います。穏やかな時間の経過とユーモアさをもちながら、主人公が置かれた状況をしっかり映像の中に収めている映像。その後、日本で上映、公開されるイランの映画をたくさん観てきました。それらの映画で、ニュースや文章の中でしか知らなかったイランや周辺諸国の事情を知ることになりました。そして、今はまた混乱の中にある中東周辺国。私たちにできることは、せめて、それらの国の人達のことを知ることから始まるのかもしれません。それにしてもキアロスタミの映画を観ると、イランの人びとの思い、街や自然の姿が思い浮かびます。そしてユーモアと皮肉が含まれた映像を観て、クスっとするのも好きです(暁)。
posted by sakiko at 08:00| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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