2021年10月02日
ONODA 一万夜を越えて(原題:Onoda, 10 000 nuits dans la jungle)
監督:アルチュール・アラリ
脚本:アルチュール・アラリ
撮影監督:トム・アラリ
出演:遠藤雄弥(小野田寛郎・青年期)、津田寛治(小野田寛郎・成年期)、仲野太賀、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井之脇海、足立智充、吉岡睦雄、伊島空、森岡龍、諏訪敦彦、嶋田久作、イッセー尾形
太平洋戦争終結後も任務解除の命令を受けられず、フィリピン・ルバング島で孤独な日々を過ごし、約30年後の1974年に51歳で日本に帰還した小野田寛郎旧陸軍少尉の物語を、フランスの新鋭アルチュール・アラリ監督が映画化。終戦間近の1944年、陸軍中野学校二俣分校で秘密戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎は、劣勢のフィリピン・ルバング島で援軍部隊が戻るまでゲリラ戦を指揮するよう命じられる。出発前、教官からは「君たちには、死ぬ権利はない」と言い渡され、玉砕の許されない小野田たちは、何が起きても必ず生き延びなくてはならなかった。ルバング島の過酷なジャングルの中で食糧も不足し、仲間たちは飢えや病気で次々と倒れていく。それでも小野田は、いつか必ず救援がくると信じて仲間を鼓舞し続けた。
小野田寛郎さんは1945年の終戦後も命令に従い続け、当時の上官の作戦任務解除令を受けて初めて30年ぶりに日本に帰還しました。その2年前にはグアムで生き残っていた横井庄一さんが帰還していたので、本当にこれが最後の日本兵だろうかと思ったものです。当時のニュース映像は今も覚えていますが、津田寛治さんが小野田さんにとてもよく似ています。顔よりもストイックな雰囲気でしょうか。
戦争で多くの人が亡くなりましたが、しみこんだ軍人教育に何十年もの間縛られていた方々もまた気の毒です。教育は怖い。横井さんは現地の人に発見され、小野田さんは日本から小野田さん探しにやってきた日本人青年に発見されます。「この人は信じられる」と思って姿を現したのでしょう。小野田さんが信頼した青年を、仲野太賀さんが演じてぴったりです。第74回カンヌ国際映画祭2021「ある視点」部門 オープニング作品。(白)
横井庄一さんがグアム島から帰還したのが1972年。小野田寛郎さんがフィリピン・ルバング島から帰還したのは1974年。横井さんが日本に戻ってきた時、私は高校2年生。終戦が1945年ですから二人とも30年近くジャングルに潜伏していたわけです。戦後30年近くも終戦を知らずに、ジャングルで暮らしている人がいたというのに驚きました。特に小野田さんが日本に帰って来た時には、この映画でも描かれたように、すぐには終戦を納得せず、鈴木さんという青年が何度もルバング島を訪れ、やっと日本に帰ってきて、その経過が連日マスコミのニュースになり、大騒ぎになりました。こうして小野田さんは日本に帰ってきましたが、その後、小野田さんは次兄がいるブラジルに移住してしまいました。やはり日本の高度成長の中で暮らすのに堅苦しさを感じてしまったのだろうかとも思いました。マスコミに追い回される生活に嫌気がさしてしまったのかもしれません。日本に帰国したばかりの頃の小野田さんの険しい顔と、晩年の優しい顔になった顔の変化が忘れられません(暁)。
1972年にグアムから帰国した横井庄一さん。「恥ずかしながら生きて帰ってまいりました。」という言葉が流行語になるほど、帰ってきたことを恥じていたのが印象的でした。
その2年後、ルソン島から帰還した小野田寛郎さんは、いかにも軍人らしい険しい顔つきでした。
二人が帰還したのは、私が10代半ばの頃で、よく覚えていますが、二人から受ける印象は正反対でした。それは、腰の低い印象の横井庄一さんが招集されて戦地に行った方で、小野田寛郎さんは陸軍中野学校で特殊訓練を受けた「軍人」だという違いだったのでしょうか・・・ いすれにしても二人に共通するのは、生きて戦地から帰ることは恥という思いでした。
今年8月に公開された『カウラは忘れない』では、オーストラリアのカウラにあった捕虜収容所で、「捕虜は恥」と集団で死ぬことを選んだ日本兵の悲劇を知りました。
戦地から捕虜となって生きて帰ることを「恥」と教え込んだ国家の犠牲になった人は数多くいるはず。こんな時代に逆戻りしませんように。(咲)
2021年製作/174分/G/フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本合作
原題:Onoda, 10 000 nuits dans la jungle
配給:エレファントハウス
(C)bathysphere‐ To Be Continued ‐ Ascent film ‐ Chipangu ‐ Frakas Productions ‐ Pandora Film Produktion ‐ Arte France Cinéma
https://onoda-movie.com/
★2021年10月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
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